Мizuki Аоmoto
不定期更新の俳句作品です
不定期更新の詩をまとめています
0.はじめにー歌われることによる祝福 例えば電車の「ゼクシィ」の広告から発せられる、結婚というものはすばらしいからこそ、工夫してもっと良くしていきましょう、というメッセージ。労働の場にある、組織に貢献できるよう"成長"すべき、という暗黙の了解。恋愛や性愛を経験し、パートナーを獲得してこそ成熟した大人であるという風潮。生活の中は社会的な規範による、「規範の中でより良くあれ」という要請に息が詰まるほど満ちている。そして、こうした規範の要請に従わない、従えない状態は、容易に
ぼくら幽霊的、息つぎが動画になる 歌忘れてもつつじの風が感光する つつじに僕らはじめから幽霊の器だ ひかる耳鳴り薔薇の雨ならふえるだらう 銀光音楽からだで濾過されたことば 呪文、こはして ねむりすぎる茉莉花の夜も
恋愛、と口にする。絵画のように青く燃えてはいない。 春の気圧がそぷらのして、空洞がもっとも光っている。 (いないのに?)(いないから) うつろのはるかあなたへわたしを代入することができる。 やがて遺影になるまでの日々を生活と呼ぶように、これまでのすべてが愛の名に束ねられてしまうなら、いっしんに走ってゆくこのにくしみは何なのだろう。ことばが追いつけない速度でわたしたちのからだは、感情は組みかえられてゆくのに、つかいふるされたことばで安心しているの? 名づけられれば、もうふるび
えずく喉をひっくりかえせばみごとな春の野になって、性差もなくこんだくしていたころのこと、思いだせるでしょう。ここは誰かの領土、統一された法で区切られてとても清潔。だからきみたちは愛、すらもその仕切りのなかにあるってこと忘れさせられてかんたんに愛しあったりする。温室にコンニャクの花を見にいったこと、覚えている? 人工的な春を保たれてようやく咲く花。人間の性も似たようなものだって、思ったけれど言わなかった。 (婚姻も、生殖も ずっとだれかのおはなしだった むかし・ぽーとぴあ
【掲載情報】 https://www.4gamer.net/games/596/G059632/20240321051/ 4Gamerの企画「ゲームをうたう」にゲーム『Ikenfell』の詩「ひかりのこども」を寄稿しています。プレイしていなくても読める内容です。
すべての光をここで絶やすことはできない まなざしにめくれてゆくからだを 止めることはできない 燃えやすい光線が触れて うちうみがひび割れてゆく (halation) 傷口からもれだす 幼年が 無垢と名づけられて むきだしの歌がひずむ すべての光をここで絶やすことはできない あなたのまなざしを 座礁させることはできない 間違った名前が刻まれて 鏡の奥でむすぶ繭が ほつれてゆく (happy birth) 永久歯が生えそろってからの 時間が苦しくて わたしをもれる 息が音叉する
――窓の向こうにゆらめく塩田の沸騰が見えて。恩寵のように晴れているから、まるでいま、空からほろりと生まれ落ちたかのようなわたしだった。 (あんぜんなへやだから……) シャッターを切りそこねられたまま焼きついていく景色だから、 (のこらない……) ここはこんなにもまばゆい。光にまみれすぎていて、あなたたちにこの部屋は見えない。 (白い嵐しか見えない。すべてをうすい膜が覆っていて、わたしからはあまりにも遠かった。ここは世界の灰、幽霊の部屋。からだの奥をうだる闇が、部屋中をみなぎ
瞼を漏電して夜がせりあがる。蒼ざめた肉をぬけだして脈うつわたしたちの発光。ひび割れた性愛の墓場から、高架線は幾千の窓を通った。 現実を殺すために降りてゆく睡りの奥で鏡像を砕いて、そのつど透明な塩を血のかわりに流す。装丁されたほほえみを浮かべながら、殺意は耐えがたく清潔に光った。まなざしから燃えうつる銀色の火事を領土として、光年の氷河を書き換える。彼我の境界の焦土でわたしたちはようやく繭の輪郭を陶冶しなおせるのだから、すべてを視て。まなざしは多重露光で完全な霊体を遺す。さざな
うつくしい骨格に燃えうつる音読。なめらかに炎は流れて、ハイウェイ、あなたはそこにはいない。はばたきで肉はかき消えて、水晶質のからだが現れる。冷たい炎に潮が満ちるから、誰の体温もいらなかった。 夕暮れに天国はない。うたごえであなたが渚だったことを思い出す。暗幕に装置が映像を流しはじめるけれど、からだのないあなたも、わたしも、水子みたいに揺れている。どこにも行けないね? わたしたちはここにいる。遺構なのはわたしたちではなくて世界のほうだから、わたしたちをくべれば世界が燃え落ちて
骨を鳴らして四月は淡い火をもらふ 眩み聞こえる暦の遺児へ沸く花が 恍雨ほら、踵は芽ばえなくて熱い 遠く木を燃やして映絵が歌ふ 血はあばら満たして花樹に憑くこゑの 春は鳥らに銀の水域、胸をひらく
人といる夢だった。現実にわたしはその人をその人とわかるが、その人はわたしのことを記名性のある存在として認知したことはない。目覚めるまでその人がいることに何の違和感もなく、夢とも気がつかないくらい自然にやり取りをしていた。 その人には事前に許可を取った上でDMで作品を送っていた。これは現実でのこと。その感想を話してくれていた。 「いいとは思う。ただ申し訳ないけど、詩という形式の持つさみしさには勝てない」と言われる。 詩のことをさみしいと考えてはいなかったはずなのに、新しい解を
野に肺は白磁の波を吹きさらす 息だつた虹を着流す千々の花樹 のすたるじあ出会ふといかづちは燃えて 薄墨に吹かれて玻璃のみやこへ帆 light like ghost うたごゑかよふ玻璃と玻璃 身は莢で蚊帳のむかしはうつろして 夢の雹からだを深くぷらずまし 蹄して雨の鏡へ連れもどす * 2句目と4句目の初出は好書好日のこの記事になります(https://book.asahi.com/article/14679664)
白いあらしが明けて 青本瑞季 花の世を水面うつしに撮り古す 虻の野へ臓器を淡くともだちも かがやきの歯の輪をすれて訃はめぐる 潮の部屋白いあらしに手が満ちて 踵から鳥の季は明く水喩抄 #俳句 #作品
光る花期――Inspired from 長谷川白紙 青本瑞季 長谷川白紙「ユニ」 鬼籍せず月日ぷらちなして冬は 長谷川白紙『エアにに』「ニュートラル」 繭しては裡へむかしの燃えつもる 花譜「蕾に雷」 銀光の花期を感電する皮膚は 長谷川白紙『夢の骨が襲いかかる‼︎』「シー・チェンジ」 somewhere nice,sometime,痛む潮が聞こえたら 長谷川白紙『エアにに』「あなただけ」 光暈するそよぐ竜種のあなただけ ※一句目の〈鬼籍せず
藻のいつか 梅咲いて関節を私語するちから 花は首のうしろで睡る雛祭 灯の渦に君らがゐない花曇 花篝風の世水の世袖を振る むなしくて布は瞼になりかはる 百千鳥光量があなたのうろで こゑの層辛夷の空のみなみより 花はぬけがら楽器の方へ人は寄る 絶景は皮膚にあかるい水位まで 麦粒腫わたしが晴れる藻のいつか 麦粒腫…ばくりゅうしゅ。読みは「ものもらい」ではないです。 #俳句 #作品
「俳句」9月号掲載の「窃盗辞たち」の句は全ての句に引用と引用元の変形が入っているのですが、前書き等で註を付けられなかったのでそれぞれの引用元(元ネタ)を示しておきます。わかりにくい形になってしまい申し訳ないです… 〈竹の鏡〉…吉増剛造「頭脳の塔」 〈肉心〉…山村暮鳥「銘に」 〈純銀もざいく〉…山村暮鳥「風景」の副題 花瓦斯≒〈花ガス〉…稲垣足穂「一千一秒物語」 玻璃韻律≒〈玻璃状韻律〉…室生犀星「聖ぷりずみすとに与ふ」 〈瞳孔祭〉…瀧口修造「星は人の指ほどの…」