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November

11月。

大人にだって青春はある。

この人と私の関係がまさにそう、
正確には「だった」なのかもしれない

色づく木々に秋を感じる今日、
私たちは「他人」になる準備をしていた。


「うん。やっぱりお別れかな。」
「そう…だよね。」
「色々考えてみたけど、無理。私は幸治とは一緒にいけない。」
「かといって、遠距離は難しい。もんな。」
「帰ってくるか分からないまま遠距離なんて、しんどいだけだよ?お互い」


出会って2年と少し、幸治の事は全て分かったつもりだった。

現実的で、大人の余裕があって…たまに少年のような夢を見る
その少年の部分に振り回される事もあるけど、最後は私を選んでくれる。

学生のような恋愛と、大人の恋愛、良いバランスで成立していた。


だけど、選ばれたのは「私」ではなく「夢」。


「ずっと考えてたの?海外に行くこと」
「…うん」
「話してくれてもよかったじゃん」
「ごめん。」
「結婚してくれるんじゃなかったの?」
「莉緒なら、一緒に来てくれると思ってた」

少し罵倒する言葉が頭をよぎったけど、飲み込んだ。
相手の気持ちを良い方向で勘定するのは、幸治の悪い所。


「私はここが好き。ここで生きたい。だからごめんね」
その言葉から始まった沈黙の時間は、どのくらい経っただろう。


初めて会った時のことを思い出した。
二人の出会いに!ってコーヒーとココアで乾杯したよね

あなたがくれたそれは、少しキザで恥ずかしい言葉
けど、私には今でもキラキラした思い出の言葉

無邪気な笑顔の幸治に、私は恋したんだ。


応援してる。頑張ってほしい。でも言わない。
それを言ったら、本当のお別れになってしまうから。

あの時と同じ場所、飲み物、気持ち。
最後は私から、幸治がくれた言葉を返すよ


「ねえ、乾杯しよう?二人の別れに!」



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