春野 治

チラ裏とショートショート

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ショートショート「業腹」

 お前の身体を開いたら、空っぽなんだろう。なぜならお前が考える脳みそを持ちえていないからだ。  三十年近く生きてきて、自分の人生において哲学を持っていないやつなんてつまらない。いや、つまらないとかいう話では無い、人として生きていないに値する。お前は人ではない。人の振りがやけに上手いだけだ。生物学的にはヒト科ヒト目だが、人を人としてたらしめるものがお前の中にはない。お前の中に、お前の血肉という名の哲学を感じない。そんなもの、私からしてみれば人間なんて到底言えないし、私と同じ生き

    • MVに欲情する人達

         YouTubeで好きな音楽を聴いていた時のことだ。  気だるげでシニカルなアニメーションmvと落ち着きのある曲調の中、過激な言葉選びがたまらないアーティストがいた。  新曲の余韻に浸りながら、考察や感想を聞こうとコメント欄を覗こうと思い、1番上のコメントを見る。    『MVの男の人がえっち』  思わず目を閉じた。  不愉快だった。ひとえに気持ち悪かった。  1番上に来るべきコメントではない。  返信欄も地獄みたいだった。怖いもの見たさにどんな話をしているかが気になっ

      • ショートショート「物語の国」

         そこは、物語の国だった。    物語の国という名前がゆえに、余所者が出歩ける範囲はやはり限られている。  彼らはまるで常に舞台演劇に臨んでいるかのようにエネルギッシュに動く。慌ただしくも見えるが、皆キラキラとした顔で言葉を紡ぎ、スポットライトのような太陽に照らされている。  このあたりの様子を伺いたくてカフェに入る。  いらっしゃいませ、と店員に言われるだけでなんだか始まりそうな予感ばかりがする。  カウンター席に座り、コーヒーを注文した。  ふと、隣に座る金髪の青年が気に

        • ショートショート「猫が死んだ」

           飼い猫が死んだ。  今年で8歳になる白ベースにぶち柄の猫。妻の花臣が死んだ年から飼い始めた、名前は『奏』。  なんとなく名付けたつもりだったが、よくよく思い出せばこの世に生まれてくるはずだった娘の名前と同じであることに後から気付いた。  いつから自分はそんなにも愛情深い人間になったのだろうか。あんなにも従兄弟達の悪行に加担しているというのに、これじゃあまるで娘が産まれてくることを大層楽しみにしていたみたいだ。実際、生まれてきて欲しいとは強く思っていた。でもそれは親や親戚達に

        ショートショート「業腹」

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          5本

        記事

          八方美人マシーン

           ”話していると自己肯定感が上がった気持ちになる”、と言われたことがある。  最初は嬉しかった。悩み事に対して、本当に素直な気持ちばかりを返していたからだ。自分なぞと話してポジティブな気持ちに向き直ってくれたなら、凄く嬉しいことだ。  一方で、自分のことは八方美人であると感じた。それも深刻だ。  何かを話していても、相手が今欲しい言葉を考えてしまう。  それの何がいけないのか?  対等に会話をできていないことがいけない。  それってつまり、相手と自分の中に上下関係が出来てい

          八方美人マシーン

          俳句習作 「水難事故」

          写真は18時くらいの沖縄の海。 何かが起きそうな逢魔が時を想いました。

          俳句習作 「水難事故」

          ショートショート「死語保管庫 東店」

           『死語保管庫 東店』という看板に、足を止める。    店名の堂々とした明朝体と、その下にある3行程度の説明文から誤字とは思えなかった。  外から店内を覗いてみる。open、の掛札がドアノブにかかっているため恐らく入っても大丈夫なのだろうが、人気が感じらず、戸惑いを覚えた。  私は、この街のことをあまりにも知らない。いや、知ろうとしていない、が正しい。  この街に引っ越してきた時は興味深さに目移りしては気の向くままに散策した。言葉が見える景色たち。私は、言葉遣いに住人たちの人

          ショートショート「死語保管庫 東店」

          ショートショート「言葉が見える街」

           そこは、話した言葉が見える町だった。    見えるというのは、物体として質量を持ち、そこに存在するようになるということである。  おはようの挨拶から、世間話をする人の会話まで、そこら中に散らばる様はおもしろかった。  それでも、人の口から出てきた言葉たちはその場でずっととどまるわけではなく、ある程度時間がたつと消えている。本当に不思議だ。  言葉が飛び交う物珍しさにキョロキョロしながら歩いていると、『ちょっと』という言葉が目の前を水平に横切った。  声を掛けられた。いや、投

          ショートショート「言葉が見える街」

          プリンセスって気持ち悪い

           プリンセスって気持ち悪い。  プリンセスって言葉が気持ち悪い。    PrincessってPrinceではないっていう意味なのが特に気持ち悪い。  それが今もなお死後にはらならず、現在に残ってるのを思うと更に気持ち悪い。    大学の、しかも結構歴のある先生が言ったから信ぴょう性しかない。盲目的に人の話信じたくないけど、信ぴょう性を感じて無理だった。    ジーニアスの英語辞典でprinceとひくと原義に第1を占める人と出てくるの気持ち悪い。派生語としてprincessが出

          プリンセスって気持ち悪い

          前提が見えない人ほど常識を説きたがる

           常識という言葉を聞く度に、聞こえの良い言葉だな、と思うようになった。    別に斜に構えている思春期こじらせという訳ではなく、聞こえのいい言葉で考え方を押し付けているような感覚になるからだ。(これが斜に構えているような気もしてはいる)    そもそも常識という言葉は、人によって異なるものだと私は思う。    常識という言葉には沢山の見えない前提があり、その前提やらお互いの共通認識が噛み合って初めて「常識」になる。  極端な例だが、日本と中国のご飯における礼儀は真反対だ。  

          前提が見えない人ほど常識を説きたがる

          めちゃくちゃ久しぶりにハマった漫画で推しが死んでしまった話

          めちゃくちゃ久しぶりに利用するnoteが限界オタクむき出しの投稿になること許してください。※情緒乱れたまんま、勢いで書いてます気をつけてください (特に誰に宛てたものでもない数個のネガティブ発散投稿と小説供養しかしていなかったけど!!!) タイトル通りに、これでもかと好きになってしまった推しが死んでしまいました。 ここ最近専らアニメも漫画も自分からはあまり手をつけなかったのですが、何となくNetflixにて配信されてたとある大人気ジャンプ作品を視聴した際に話が面白いだけ

          めちゃくちゃ久しぶりにハマった漫画で推しが死んでしまった話

          適応力、難しいなぁという話

          一日中家にこもり、授業を受けて課題をこなし、疲弊をする事をを繰り返して気がつけば大学1年生の約半分を過ごしてきた今日ですが、とことん自分の無計画さと三日坊主の性分には嫌気が刺し始めました。 先日後期オンライン授業も決定し、いよいよやり場のない怒りで狂いそうです。 毎日確実に広がるコロナのせいで仕方ないことではあるが、自分が送るはずだった生活に思いを馳せると泣きたくなります。 オンライン授業もいい事はあるし、前向きに捉えることが今を生きることだとは思うのですがやはりどうも

          適応力、難しいなぁという話

          漠然と文字を書きたくなった話

          「文字をつづりたい!創作、エッセイでも何でもいい!!厚かましくもそれを誰かに見てもらいたい!」 …と、思い今までに立ち入ったことのない領域であるブログ感覚を楽しめるnoteを始めてみました。勢いで! 私にとって、未踏の地であるnoteではジャンル問わずにとにもかくにも興味をそそられる文章であふれていて文字を綴る意欲が掻き立てられまくりました。 自己表現や文を書く練習、時には自己と見つめあうための文章などなどを綴りたいと思っています。 自分の目標をはっきりさせるために書

          漠然と文字を書きたくなった話