それでも私は、キスをする
「私なんて」の瞳が見つめている。
私が私を見つめている。
この世界の言葉が、心の奥の私と向き合うきっかけを作ってくれた。
私じゃない誰かのために書かれた文章に、心打たれ、自分に照らし合わせ、涙する。
誰か一人のために書いた言葉が、清らかな水面に広がる波紋のように伝わり、
自身のために書いた言葉が、空に浮かぶ雲のように、誰かの心の奥へと溶けていく。
文章を読むって、そういうことなんだと思う。
文章を書いて投稿することって、こういうことなんだと思う。
嫁いだときに、祖母が「この子は、本当に優しい子だからお願いします」と夫の両親に頭を下げていたと聞いたのは、ずいぶん後になってから。
でも、優しいってなんだろう。
私は、優しくなんかない。
自分のことを優しいと思ったことは、あまりない。
きっと、私に感じる優しさは、
弱さ……
口を開けば、声が震える。
頭んなかは、ごちゃごちゃしている。
結構、悪いことも思い浮かぶ。
まあまあ、えっちぃことも考えたりする。
怒りで、どうにかなりそうなときもある。
心の奥が濁っているから、自分で自分をおさえているのだろうか。
だから、言葉がでてこないのだろうか。
せめて、他人を傷つけたくなくて……
「私なんて」の瞳が訴えてくる。
もっと、かわいい顔に生まれたら、何か変わったのかな。
もっと、賢かったら、何かが違ったのかな。
もっと、強い心を持てていたら……
発想の幼稚さに、泣けてくる。
目を閉じ、「私なんて」の私と対峙する。
涙を流しながら立っている私は、幼くて、いつも雨に打たれている。
どこか儚げで、どこか寂しげで、怯えていて。
でもね。
不思議とね。
じっと見つめ合っていると、こんな弱い私でも、とても愛おしく感じるんだよ。
「ありがとう」って言いたくなる。
だって、これまでずっと共に歩んできたんだから。
静かに近づき、手をのばす。
うつむき、突っ立ったまま震える私を抱きしめ、そっと、おでこにキスをする。
大丈夫、ずっと一緒だよ💕