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泡日記 0521 文学フリマ東京36

文学フリマ東京、当日の朝を迎えた。
朝食の食器を片付けながら、会場までの乗り換えを独りごとみたいに呟いていたら、夫から「モノレールですよ。モ・ノ・レーール。」と指摘された。いきなり何よという気持ちでいたら、どうやら私は天王洲アイルで「ゆりかもめ」に乗り換える…と口走ったようである。天王洲アイルでモノレールに乗り換えるが正解だ。

モノレールもゆりかもめも私の頭の中では一緒のグループで認識している。大事なのは「天王洲アイルで乗り換える」なので、それ以外はふわっと口をついて出ただけであった。正しくはゆりかもめはモノレールではなく、東京モノレールは無人自動運転ではない。東京が地元の夫には聞き捨てならなかったのだろう。私だって、ポートライナーと六甲ライナーを一緒にされたら即指摘するだろうから。

車内は同じ出店者と思われる人達でいっぱいであった。
着ている服から世界観が伝わって来る人もいる。うつむいて携帯をいじっている姿はまだ閉じているけど、会場で店主となると堂々と世界を開いて立つのだろう。上手く周りに埋もれながら、誰かが見つけてくれればいいという体の甘さで今日を迎えた私であるが、そういう人もいる。
スーツケースを引いている人が沢山いて、私は自分の両腕に紐が食い込んで出来た赤い痣を見ながら、次はガラガラを引いてこようと心に決める。

友人は既に会場で先に設営を始めてくれていた。そして素早く良い感じにディスプレイを整えてくれた。準備のほとんどを担ってくれた彼女。見せ方もしっかり考えていて、そこには彼女が以前出店した別のイベントの反省点が活かされている。私は初回なのでこの経験をベースにするべく、切ったり貼ったりを手伝うだけで頼りない。

彼女の作品はインテリアのイラストが目を惹くだけでなく、キャッチーなキーワードでSNS上でも既にファンの人もいるぐらい。実際に開場すると彼女のおかげで多くの方がブースの前で足を止めて下さった。1600もの出店者ブースに来場者は1万人を超えたとアナウンスが入る。こんな中で立ち止まって見てくれるだけでなんと有り難い事かと思う。
来てくれてありがとうございます、見てくれてありがとうございます、買わなくてもいいですから、なんていう気持ちでおろおろして、せっかく「げんざいち」を見て下さる方にも進んで声がかけられない。できたのはお礼を言って笑顔でお見送りするだけである。それではいけないのだろうけど。
友人のZINEはよく売れたし、フリーペーパーは沢山の方に持って帰ってもらえた。有難うございます。ああそれと、急に思い立って作った犀のアイコン判子を、ご希望の方に押してお渡しした。

友人が来てくれたのは心強く嬉しいことだった。何かのついでに来る様な場所ではないのに、わざわざ目当てにして来てくれた優しさに胸があつくなる。あの顔、この顔が人並みから現れて来てくれて、緊張していたのもふっとほぐれていく。新幹線に乗って来てくれた友も何人かいて、あまりにも驚いて込みあげてしまった。
友人たちもこの会場でオンリーな作品と出会えただろうか、そうだといいな。分かりやすく応援される場に立つことって実はあまり経験のないことで、こんなに嬉しい事だったんだといい年をして思い知った。応援をもっと丁寧にやっていこうと思う。

友人と交代して場内を巡り、お目当ての方のZINEも購入できた。歩いていると静かにブースに座っている方や、大学のサークルのように元気に呼びかけるブースもあったり。noteで書いた文章のいくつかに泡日記というタイトルをつけるようになってから、日記本が目に付くので何冊か感性に来るものを購入した。「書いて忘れる」のあたそさんは早速読み終わり、数年前のある夜を境にして疎遠になった友達のことをぼんやり思い出した。その夜のことを思うと痛かったから連絡先もSNSも全部外して、そうしたら軽くなって今は大丈夫でいる。あたそさんの別の作品も読んでみたくなり、また自分も書きたくなる。そう、読んで書きたくなる。
次へ進んでいこう。

さっと会場を巡って求めた戦利品。
お目当ての方にサインを頂けました。最近は人の日記を読むのが好きです。
美しくてため息。
勿体なくて使えないかも、でもポストに入っていたら嬉しいかもと身をよじっています。


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