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【感想】印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像

この本は、グラフィック社発行の雑誌『デザインのひきだし』で連載されているインタビュー記事をまとめたもの、とのこと。印刷やデザインに携わる人はずーっと読んでいられるような本かもしれません。それだけに、一気に消化するにはヘビーな読みごたえ。そのため、何回かに分割して感想を書いていこうと思います。
”印刷営業の人間として読まなきゃいけないはず”と手にしましたが、読み始めるともう、全章が面白い。古いテレビ番組の「プロジェクトX」を思い出します。職人のストーリーってやっぱり血が通っていてカッコいいんです。

本書の説明

印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像
著:雪朱里 グラフィック社 351 ページ
印刷物をつくりあげてきた過程は、名工たちの技なくしては語れない。印刷や紙、加工に携わってきた名工たちへのインタビューをまとめる。『デザインのひきだし』連載を単行本化。
https://honto.jp/netstore/pd-book_29999698.html

感想・第1弾

noteに書くなら、ノートの話から。今日は、ノート企画開発者の渡邉精二さんの章について書きます。『デザインのひきだし』では2015年2月発行号に掲載されたものとのこと。老舗のノートメーカー・ツバメノートの創業者二男であり、専務取締役を務めている方の談話です。

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表紙デザインの作成秘話

ツバメノートの表紙デザインって、ヨーロッパ風でややエリート感があって好きなんです。実はこのモチーフ、なんと「通りすがりの人が描いたもの」なのだそうです。インタビューによれば、ある男が「水を1杯ください」と突然会社へ訪ねてきた。雑談をしたのち、さらさらとデッサンを描いて、名も告げずに去っていった。ひと目でそのデザインを気に入った創業者がそのまま採用して、以来70年が経っているそうです。
ほんとうに月並みな言い方だけど、奇跡みたいですよね。にやけちゃう類のエピソードです。

「目に優しいノート」へのこだわり

1947年に完成したツバメノートは、”良質で末長く記録できるようなノート”(229頁より引用)を目指して開発されました。それを支えているのが、オリジナルの用紙と、大量生産では作れない罫線なのだそう。
まずは本文用紙への蛍光塗料の量を抑えていることで、目への負担が軽減されています。また、罫線を紙の上にインキを乗せるオフセット印刷ではなく、水性インキを紙に染み込ませる「罫引き」でつくっているため、罫線部も厚みが全く変わらない。書き心地を妨げない工夫がされているんですね。

大量生産品、ではないんだなぁ

どこでも買えるもの=大量生産品というわけではないんですよね。それは当たり前のことだけど、こうして本を読むたびに立ち返るような気持ちになります。
たとえば、キーを叩きながら合間にポリポリ食べるハッピーターン。なんとなく流しているサニーデイ・サービスもそうかも。
ロングセラー商品の秘訣って、デザインやコンセプトのシンプルさと、利用者目線の徹底の2つなのかも。その答えはもう数多のビジネス書にあるだろうけど、こういう見つけかたができて良かったなと思っています。

今日はここまで。次はどの章にしようか、選ぶのが楽しみになります。
しかしインタビューものだと「〇〇だそう」が続いて、文が単調になってしまうものだ。どうしよう。やってみると色々なことが分かってきます。

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