トーキョーライフワークトーク第2回アーカイブ:文章
2020年9月配信分
【ゲスト】朝倉 脩登 (「natural café こひきや」店長)
【ナビゲーター】田中結子
荒川区熊野前でカフェを開いている朝倉さん。カフェのメニューや内装デザインには朝倉さんのこだわりがたくさんつまっています。
そんな朝倉さんはカフェを始める前、飲食とはまったく異なる業界のゲーム会社や広告代理店でお仕事をされていたんだそうです。
まったくの異業種から飲食店をはじめた経緯やメニューやデザインを細部までこだわる理由、また飲食店としてこのコロナ禍をどう乗り越えるか、
そしてカフェを通じて朝倉さんがお客さんに届けたい思いとは何なのか、たっぷりお話してもらっています。
音声でお聞きになりたい方はひとつ前の投稿からお聞きください。
番組提供:城北信用金庫
natural café こひきやって?
田中:
今月のゲストをご紹介します。
「natural café こひきや」店長の朝倉 脩登(あさくら なおと)さんです。
朝倉さん、よろしくお願いします。
朝倉:
よろしくお願いします。
田中:
それでは早速ですが朝倉さん、「こひきや」さんがどんなお店か教えてください。
朝倉:
「こひきや」はですね、荒川区熊野前商店街にあるカフェです。
2015年の11月にオープンしましたので、今年の11月で5年になります。
お店のコンセプトというのは「毎日のおいしい時間を」という言葉にしていて、これは毎日飽きの来ない料理を提供するっていうのはもちろんなんですけど、
カフェなのでお客さんが居心地の良い空間を提供して、そこでくつろいでいただく時間を過ごしてください。という意味があります。
「こひきや」っていう店名がめずらしいんですけど粉を引くっていう意味の「こひき」、もう一つは陶芸の用語で「粉引(こびき)」という用語がありまして、ここから取らせていただいて「こひきや」という名前にさせていただいています。
なので粉を引くということでメニューはうどんがメインで。
ラーメンもあるんですけれど、ふつうのカフェではあまりないような珍しいメニューを提供させていただいています。
田中:
わたしも何回か「こひきや」さんにお邪魔させていただいていまして、ここは代官山かな?中目黒かな?と思ってしまうようなおしゃれなお店で大すきです。
朝倉:
ありがとうございます。
田中:
いつも朝倉さんご夫婦が暖かく迎えてくださって、おしゃれな雰囲気の非日常感と居心地のいい我が家のような日常感が混ざり合った感じのお店でいつも素敵だな~と思っています。
朝倉:
褒めちぎられてますね。(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
さっき言い忘れたんですけど「日常」「懐かしい」ていうのがキーワードになっていて、
昭和の喫茶店を現代版でアレンジしたときにお店ってどうなるんだろう思ったのがテーマのひとつとしてありました。
昭和の喫茶店ってすごい気持ちよくて、ソファがふかふかしてて座ったまま寝れるくらい。
あと照明がオレンジで全体的に木が多いとかっていうことを自分が記憶していたので、それを今に蘇らせたときにどうなるかなっていうのはデザインするときにすごい気にしていました。
お店の場所を熊野前に選んだ理由
田中:
なぜ熊野前でお店を始められたんですか?
朝倉:
そうですね。
私も荒川区に引っ越したのが2015年なので正直詳しくはないんですよね。
田中:
もともとずっと住まれていたわけではなかったんですね。
朝倉:
ではないです。
じゃあお店を出したいってなった時に調べないといけないので、データ的なことを調べるのと自分で自転車に乗ったり歩いて、街は見ました。南千住のほうから西尾久のほうまで。
人口的には30~40代が10パーセント近く増えていたのが東尾久4丁目、5丁目、あとは南千住のほうの汐入ですね。
田中:
新しいマンションが増えてるからですかね?
朝倉:
そうです。やっぱり区外からの流入が多いんですよ。舎人ライナーも通って便もいい。
なのでお店をやるんだったら南千住側か東尾久だなぁと思って見に行きました。
東尾久のほうを実際に見に行ったときに熊野前の商店街の道路幅が結構広いのと空に対しての抜けがすごいんですよ。
田中:
それは思います。
朝倉:
あの通りって当時は万国旗もあったんですよ。いまは取ってしまってるんですけど、やっぱり国の国旗があって空が抜けているっていう風景はおそらく都内ではここにしかないな、と。
これだけの場所はなかなか見つけられないなと思っていたらたまたま物件が空いていて、決めましたね。
元八百屋さんだった物件なんですけど一目ぼれしてるようなかんじはあります。
田中:
朝倉さんがおっしゃっているように私が熊野前にはじめて降りて商店街を歩かせていただいたときに、閉塞感がなくて時間がゆっくりなかんじがしました。
屋根がないのでお天気がちゃんと見えていて。
朝倉:
「ALWAYS三丁目の夕日」の感覚に近いというか。昔だなーというイメージはありますね。
子どもたちが走り回ってたりとか、朝おじいちゃんおばあちゃんが店の前にイス出して座って体操してるんですよ。かわいいです。
なぜゲーム会社から飲食店に?
田中:
朝倉さんはもともと飲食店をやられていたわけではなかったんですよね。
朝倉:
そうですね。はい。
田中:
ゲーム会社に勤めてらっしゃったと聞きましたが、そこではどんなお仕事されてたんですか?
朝倉:
もともと社会人になったときには広告の世界にいたので、マーケティングがわたしの専門です。
ゲーム会社ではいろんなタイトルを担当していく中で、ゲーム自体をプロデュースしたいなという思いも出てきて、プロデューサになったんですね。
パソコンでやるゲームをプロデュースしたんですけれども、何本かプロデュースしているうちに経営側のほうに入って管理者になっていきました。
基本的にはゲームをみんなで作って世に出す、それを良いサービスにしていくということをやっていました。
田中:
そこから新たに飲食店をはじめようと思われるのって一大決心だと思うんですけど、飲食店をはじめようと思った理由ってなんですか?
朝倉:
もともと趣味が料理っていうのがひとつあったと思います。
自分はいろんな趣味があるんですけどこれだけ生きてきてただの一度もやめなかった趣味が料理なんですよ。
田中:
そうだったんですね。
ゲーム会社とかって忙しいイメージがあるのでお料理に時間を作るのが結構大変だったんじゃないですか?
朝倉:
そうですね。なので休みの土日をひたすら料理を作るというか、家の料理は基本的にぼくが作るのでやってましたね。
あと友達やゲーム会社の仲間を呼んで家でパーティーをやってました。
田中:
いいですね!
朝倉:
料理は全部ぼくが作るんですけど、そういうのをよくやってたんですよ。
だから多分モノを作るのがすごい好きで。
ゲーム会社のときもプロデューサーはやってましたけどプログラマーでもないし、作れないんですよ。ゲームを直すっていうのもなかなかできないんですよね。
でも料理っていうのは自分でできるのでああしよう、こうしようができるんですよ。
それができるシゴトしたい。それをお客さんに提供して反応を見てみたい。っていう思いがだんだん強くなっていったんだと思いますね。
ぼくはやっぱり作る側の人間だったんだなぁと思います。
ゲーム会社で管理側に入ったときに現場から離れちゃうので自分の中ではちょっとさみしいというか、違和感があったのかなという気がしますね。
田中:
仕事を辞めよう、新しいことを始めようと思ってもなかなか決心がつかなかったりするかと思うんですね。朝倉さんのお考えや感じたことなどで踏ん切りになるようなきっかけがあったんですか?
朝倉:
そうですね。
やっぱりゲーム会社をやめようって思ったのは何のために誰に向けてシゴトをしているかっていうのが明確に出なくなったっていうのがあるかもしれないですね。
みんな何かしら目標を持ってシゴトをしていると思うんですけれど、そこが納得ができなくなる瞬間があって、納得はできないんだけども視点を変えれば納得できたとかいろんなきっかけでもう一回できた、とかがあればいいんですけれども、それも無理矢理になってくるんだったらそもそもそういう生き方が自分に合ってないのかな?自分らしくないのかな?というのは感じました。
もしそういう風に悩んだときに大事にしているのは違和感ですね。
そのシゴトをやっている自分に違和感があるかどうか。もししっくりきているなら絶対続けた方がいいんですけどちょっとでも違和感があるのならすぐにやめた方がいい。
この違和感っていうのは本人にしかわからないんですよ。
誰に何を言われても絶対に誰もわからないんです。
本人が違和感を感じてしまったらそれはいずれものすごく大きくなって「あの時感じた通りだ」ってなるんです。
これ人間の直観ってすごくて、違和感っていうのは当時すごい感じてました。
地に足ついてるかな?っていう。よしやるぞ!ってなってるなら本当にいいんです。
なってないんだったらもしかしたらそれは違うのかもしれない、って思った方がいいかなと思います。
こひきやのこだわりの理由
田中:
「こひきや」はコンセプトを「毎日のおいしい時間を」とされているそうですがどういった思いが込め
られてるんですか?
朝倉:
店名にnaturalってつけたのもそうなんですけれども、自然体でいてほしいなっていうのがあって自然体でうちのお店のサービスやお料理を召し上がっていただきたい。それが毎日でも過ごせるようにしてほしいなと。
やっぱり気合いを入れてこのお店に行くぞ「今日は焼肉行くぞー!」っていう使われ方ではないということですね「こひきや」は。
「今日行っとく?」みたいな、次の日も「今日も行っとく?」「まぁいっか」みたいな、ゆるい感じですね。
敷居の低い感じでいてほしい。逆にそこをしっかりコンセプトとして持ちたいですね。
田中:
「よし、焼肉行くぞ!」みたいな特別感のあるところって今のコロナ禍の状況とかですと、なかなか外食に行きづらい空気があると思うんですね。
でも日常の中に溶け込んでるお店は生活の中の当たり前になってると思うので、「こひきや」さんはこういう状況下の中でも皆さんの中で忘れられないお店になってるんじゃないかなと思いますね。
朝倉:
そういう風に思っていただけてたらとっても嬉しいですよね。
「あそこの何かが食べたいよね」って思ってもらえるのはすごくうれしいことですからね。ほんとに。
田中:
みなさんそう思われてるんじゃないかと思いますよ。
朝倉:
ベタ褒めしてるね今日!
田中:
(笑)
そのコンセプトに込められた思いが店内やお料理にも表れてるなぁと感じます。
メニューはすべて手づくりで無添加、無化調にこだわられてるとのことでしたが、なかなかそこまでこだわれる飲食店は少ないんじゃないかと思います。
手をかけてでもこだわられる理由はなんですか?
朝倉:
化学調味料を使わないっていうのは100パーセントなんですけど、無添加っていうのはどうしても入ってしまうものもあるので100パーセントではなくできる限り。
調味料に関しても作れるものは作ってるんですね。これなんでやってるんですか?って聞かれるんですが「おいしいからです」っていう。
おいしくしたいからそうしてるんですよって言う答えになりますね。
うちで使っている調味料に甜麺醤があるんですけれども、市販の甜麺醤もすごくおいしいんですが注目して見てしまうとちょっと甘すぎたりするんですよ。
どうしても僕の中で味が決まらなくて。そうなった時には自分で作って自分好みの配合にしていく。
そうすることで自分に納得のいく、IT的な言い方をするとアウトプット(笑)。
納得のいくものが世に出せるというかお客さまにお届けできる。
既製品というものも僕は否定しないです。
ただ食べたときに「なにこれ、うま!!!」ってなってほしいんです。
だからできる限り納得して料理を組み上げていくかんじですね。
田中:
おいしいを突き詰めたらそこだったっていうことですね。
朝倉:
そうです。突き詰めたらそうなっていったんですよね。
こだわりをターゲットに届けるときに大切にしていること
田中:
朝倉さんのようにこだわりや思いを持っていて、要素のひとつひとつに取り入れたとしても実際に企画としてアウトプットにしたときにもともとのこだわりがターゲットになかなか伝わらないことがあって私は仕事をしていて難しいなぁと思うことがあるんですが
個々のこだわりをひとつの形としてターゲットに届けるときに朝倉さんが大切にしていることはなにかありますか?
朝倉:
ぼくはターゲットとする方をけっこう深く書き出したりしています。
田中:
分析ですね。
朝倉:
そうですね。はい。
たとえば田中さんがいらっしゃったとしたら、何歳くらいの方で、社会人何年目で、平日は何時ぐらいに仕事が終わって、そのあとスポーツをやられてジムにも通っていて、比較的アクティブで、友達がたくさんいて・・・・みたいなのをずーっと書いています。
という風にターゲットの人をイメージ化していくっていうのは結構大切で、かつじゃあその人に自分たちがコンテンツを提供しますってなった時にどう思ってもらいたいかっていうのも想像したほうがいいわけですよね。
ぼくは実際に書いたんですけど「こひきやってお店が近所にできたらしいよー」「うどんとかあってけっこうおいしいんだよね~」「無化調・天然らしいよ」「今度友達の○○と一緒に行く?」「おじいちゃんおばあちゃんと一緒にいってもいいよね」「ありだね」っていうところまで言えるかどうか、書き出してほしいんですよね。
これマーケティング的な話ですけど、言ったときに返ってくるその反応が近しければ近しいほど商品にはブランド力があるという風にぼくは考えています。
ぼくっていう人間に対するイメージが「面白い人」っていうひとが100人中80人いれば正解なんですけど、これが100人中30人です、怖い人30人です、怒りっぽい人・・・っていう風に反応が分かれちゃったとき、ぼくという人間はブランド力ないんです。バラバラなんです。
同じように反応が取れてない、やってることがバラバラなんです。
これすごい難しくて、やっていることを統一して、ターゲットに届けて似たような反応を取る。
それをイメージして繰り返す。
その反応が取れないならなぜ取れないのか、取るためには何を加えればいいのか、何にこだわればいいのか。
これぼくよくゲーム会社にいたころに社会人経験浅い若い子たちにマーケティングの話をしたんですよ。
たとえばこだわりっていうことばありますよね。
田中:
はい。
朝倉:
たとえば田中さんが歩いていてごはん食べたい、今日はハンバーグの気分だなーと思いながら歩いていたとします。
そしたら店の看板に「こだわりの店ハンバーグステーキ田中」っていうのがあったとするじゃないですか。
なんかこだわってるって思うでしょ?お店に入りました、いかにもハンバーグ好きそうな体格のいいおじさんがハンバーグをジュウジュウ焼いているわけですよ。これは期待感増しますね。
鉄板の上でジュウジュウ焼かれたハンバーグがテーブルに来ました。
あまりにもおいしそうだから田中さん聞きます「ご主人これなににこだわってるんですか?」
それに対してご主人が「クレソン!」
田中:
(笑)
朝倉:
「これ、めちゃめちゃうまいから食べてみて!」って言われたら引くでしょ?
田中:
あ、ハンバーグじゃないんだって思いますよね。
朝倉:
これなんですよ。
作り手はそこに行っちゃってるんですよ。反応の取り方を間違えてる。
ハンバーグに行けばいいものをなんで付け合せのクレソンにしちゃったかな?って。
その人はもしかしたら「肉ばっかりじゃだめでクレソンで栄養価を取ってもらったほうがいいかもれない」って思ったんでしょうね。
でもお客さんの反応はそうじゃない。これが作り手とターゲットのズレなんです。
そうするとブランディングなんてできない。
この話はすごい深くて面白くて大好きなんです。
ポカリスエットあるじゃないですか、あれが赤いラベルで出たらどうしますか?
田中:
ちょっとイメージと違うなってなりますよね。
朝倉:
赤のイメージってないんですよ。
今度逆にコカコーラが赤じゃなかったら「全然シュワッ」としてないやってなっちゃうんです。
でもその青にこだわって社運をかけてたとしてもターゲットの人はポカーンですよね。
こだわり方っていうのは間違えるととんでもない方向に行っちゃうんですよ。伝えていくっていうのはものすごく難しいです。
だからどれだけターゲットを深く見て、ターゲットから取れる反応を想像してるかに尽きる。
いい話したわ。(笑)
田中:
(笑)
さっき朝倉さんがターゲットのことを書き出して・・・って言ってたじゃないですか。
それがちょっと前にお話されてたアウトプットのところに繋がってるかんじがしますよね。
朝倉:
そうなんです。
ぼくは結局広告の世界にいたので軸足がそっち側なんだと思います。
そこでそのブランドとはなんだろう?広告とはなんだろう?って考えましたね。
みんな言うじゃないですか、ブランド戦略、ブランディング広告とか。
何言ってるかわからないです。(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
だってそうじゃない?
「ブランド力があるんですよ」って言うけどブランド力がなにかを答えられるひとはなかなかいない。
でもロレックスはブランド力あるじゃないですか。カルティエってあるじゃないですか。
なんであるんだろう?これがとても面白いんですよ。
分かる人が分かればいいっていうのもひとつの考え方なんですけど、そうやってしまうと受け入れられるパイが狭くなるんですよ。
あなたが人生をかけたときにそうするとリソースをうまく使えないかもしれない。リソースは限られてる。
そうなった時に人生の意義ってなんですか?って考えて戻ってくるんですよ。
それが「多くのひとを元気にしたい」だとしたら、それにリンクしてますか?って考えて、してなければじゃあやめましょうと。
田中:
ご自身がどうしたいかっていうところに繋がってるんですね。
朝倉:
そう。そこから取捨選択をすればいいんです。
だから話脱線しますけどやれるけどやらないっていう選択も大事。
うちの店だとかけうどんは作れるけどやらない。だってトッピングないんですもん。(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
それお客さんに出したら「なんだ、かけかよ」ってなっちゃうでしょ。
普通はあれに乗せるからおいしいんですよ。うちワカメくらいしかないから、それじゃ申し訳ないでしょ(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
そもそもターゲットはそんなもの求めてないからやらない。
そうすることによってリソースを資源集中していくっていうのはすごい重要なことだと思っています。
地域一体でのにぎわい作りの大切さと効果
田中:
こひきやさんを開店されてから商店街になにか変化はありましたか?
朝倉:
そうですね。
開店していろんなお客さんに来ていただいたんですけど、先ほど申し上げた通り、ママさんが多くて、みなさん電動自転車なことが多いんですよ。
するとうちの前に電動自転車がたくさん留まるんですけど、それを見た商店街のほかのお店の方はびっくりしてましたね。
「こんなに自転車留まるの?なにこれ?」みたいな。
今まではそういう人たちが商店街にいなかったんだと思うんですよ。でも人の流れっていうのがちょっと変わったんだなって。
そういう中で3年目くらいのときに2軒隣に天然酵母のパン屋さんができたんですよ。
それがやっぱりすごく大きくて、今度はうちに来て自転車止めてパンかってうちでご飯食べてみたいな行き来がすごい増えて、これが地域のいいカタチのひとつなんだな。と思っていて、もう一つお店が増えたらいいなと思っていますね。
田中:
周回ができるようになってきてるんですね。
朝倉:
そうですそうです。お客さんも滞留するようになりますよね時間的に。
そうすると賑わってる感が出るようになりますよね。これが商店街にとっては大事なことなんです。
田中:
それは商店街のひとたちにとっても力になっていきますよね。
朝倉:
そうだと思います。
田中:
ヨガフェスっていうイベントも実施されてますよね?
もともと熊野前はサンバカーニバルがあるって聞いてたんですけど、ヨガフェスはどういった目的で始められたんですか?
朝倉:
ヨガフェスはうちの逆隣にヨガスタジオがあって、そこの先生が「ストリートヨガ」をやりたいっていう話をされてて、その話を聞くと道端でヨガマットを広げてやるとのことで。
これをやるのであればイベントにしたいよねっていうのが最初だったんですよ。
実際にやろうってなった時に何を目的にしようって考えたらヨガを通じて健康になってほしい、みんな笑顔でお買い物をしてほしいっていうことを考えて飲食のブースをたくさん出してもらったりとかフリーマーケットを作ったりしました。
親子で参加してもらったりっていうのを目的にしたのでママ友のネットワークっていうのは大きかったと思いますね。
田中:
WEBサイトのほうでヨガフェスの写真を拝見しまして、青空の下でたくさんの人がずらーっとヨガされてる写真が出ててすごいなと思いました。
熊野前商店街は人通りありますけど、あれだけ人が集まるってことはないじゃないですか。
出店も荒川区のお店がたくさん出していて、こんな店があるんだっていう新しい発見なんかもたくさんあるような感じがしてすごいみなさん楽しそうだなって思いました。
朝倉:
やった運営側が思った以上にたくさんの人が来てくれて、4000人くらい。
田中:
そんなにいらっしゃったんですね!すごい!
朝倉:
回を重ねるごとにいろんなコンテンツを増やしていって、ダンスコンテストをやってみようとかヨガをやる場所を2か所にしようとかそういうことでコンテンツがちょっとずつ増えていきますから、
そうするとお客さんの滞留する時間はどんどん増えていきますよね。
そうすると賑わってる感がどんどん出るんですよ。
だからお祭り感みたいなものは作れてるというか、いいイベントだと思いますよ僕は。
田中:
さっきお話されてた熊野前商店街の閉塞感のない感じがすごくヨガと合ってますよね。
朝倉:
写真とか映像見るとそうなんですよね。気持ちいいみたいですよ。みんなでやるのが。
東京商店街コンテストグランプリ受賞の理由
田中:
そのヨガフェスが東京商店街コンテストのグランプリに選ばれたと聞いたんですけど、
そのエピソードも聞かせていただけますか?
朝倉:
毎年各区でがんばっているイベントを集約して賞を決めるっていうものでヨガフェスがグランプリをとれたんですけど、僕たちそんなに予算を取ってなくて、メインがママ友のボランティアで。
ネットワークで一生懸命ビラ配って、警備以外はほぼ自前でやってますし、運営マニュアルも作ってやってるんですよ。
そういうイベントが賞を取れたっていうのがひとつの自信になったと思います。
うちの商店街の理事長は港区に勝ったっていって喜んでました。(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
荒川区的にはよかったなって。
田中:
栄えある地域を抑えてグランプリになった理由としてはやっぱりさっきおっしゃっていた下町ならではのコミュニティというか・・・
朝倉:
そうですね。やっぱり自前で作ってそういうコミュニティで成し得たっていうのがやっぱり伝わったんじゃないかなっていう気がしますね。
田中:
そんな熊野前商店街をこれからどんな商店街にしていきたいですか?
朝倉:
そうですね。やっぱりいいところですから、いい地域にしていくというか、熊野前にみんなが来てくれるような人が遊びにこれるような場所。
子どもが走り回ってるような場所であってほしいなと思います。
なのでもっとお店だったり、今はできないですけどイベントっていうのは必要かなって思います。
難局を乗り越えるための考え方
田中:
朝倉さんからは常に勢いを感じていて、いつも前を向かれているイメージがあるんですが
今まで立ち止まったり悩んだりしたことってどんなことがありましたか?
朝倉:
そうですね・・・社会人になりたてのころは信じられないくらい働いていた気がしますね。今でいうブラック企業みたいな昼夜関係なく。
で、なんでそんなに働いてたのかなって思うと、とにかく認めてもらいたいわけですよね。頑張ってる自分を。やっぱりそういう近いところに対して頑張ってるんですよ。
でも働きすぎて体力的にもちょっときつくなって、やっぱりこれじゃだめなんだなって。
働き方を変えざるを得ない風になりましたね。30代入ってからは残業やめます、定時で帰りますみたいになりましたね。
それはそれで楽しかったんですけど、これまでの話でもあったようにゲーム会社でどこに向いてるか分かんなくなる時期っていうのがあって・・・
田中:
目的としてってことですよね
朝倉:
やっぱりそこに引っかかっちゃうんですよね。
極論なんのために生きてるんだみたいな感覚になったと思いますよ。
人間どうしても悩むことや立ち止まることはありますよね。
でもそれが、なんで起きたのかを思うと向いてないって言われたのかなって思うようになってます。
じゃあいいですかねっていう風にラクにとらえるっていうのも一つ方法かなっていう気がします。
もっとできなきゃだめなんだ、もっとやらなきゃだめなんだって言ってもやれないですから。
そこはラクにしたほうがいいんじゃないかなと思いますよね。
田中:
そういう風に思えるのも壁にぶち当たったからですよね。きっと
朝倉:
そうです。どうにもならない瞬間ってあって、もうがんばれないって思うこともあって。
がんばれないことって悪なのか?みたいなスパイラルに入っちゃうんですよ。
それをポジティブに持っていくために気にしないって割り切っちゃうっていうのも一つの方法だとぼくは思いますね。引きずらないというか。
田中:
切り替えていくんですね。それは絶対に大事ですよね。
朝倉:
引きずると思い出しちゃうじゃないですか。
そうは言って過去は変えられないので、これから先どうするんだっていうことしか人生ないですからね。
だからそうするとこの先をどう幸せにいきてくかっていうことのほうが建設的でしょうね。
田中:
きっと切り替えたその先で違うことを考えたとき、そこに答えがありそうですよね。
朝倉:
導いてくれる何かが起こるんですよ。
人間っていうのは面白くて、そういう風にできてるんですね。
田中:
最近ですと、お店の営業やこれからのことを考える中でコロナの感染拡大防止ってもう避けては考えられなくなってしまったと思うんですが、今後も飲食店をやっていく中で考えていることはなにかありますか?
朝倉:
コロナ禍があって取捨選択をしなければいけなくなった、逆に取捨選択の機会がもらえたと考えてるんですね。
田中:
プラスに考えられてるんですね。
朝倉:
ディナーやめましょう、とか店内の飲食1回やめてみましょう、いろんなものを作ってみましょう、そうやってるとスキルたまりますよね。
で、店内飲食再開しました、テイクアウトやめます、でもカフェはやりません、で「natural café こひきや」やなのに、いまカフェやってないんで「natural lunchこひきや」みたいな。
田中:
(笑)
朝倉:
でもそれでキツイっていう話ではなく、これも一つの方法っていうふうに捉えてて、けっこう楽しいですね。
これから先の飲食店っていうのもいろんな形態があるんでしょうけど、お店で食べないっていう選択肢も増えてきてるじゃないですか。
だからその選択の中でお客さんに選んでもらおうと思ったときにうちの名前があって欲しいなって。だからそのためには準備をしないといけないなと。
田中:
どうしようもない状況の時にそれを自分が楽しんでやっていこうっていう気持ちがあれば乗り越えていけるんじゃないかなって思えますね。
朝倉:
人は一人で生きてないんでね。だれかが助けてくれるんですよ。
応援したいなって思えるひとになれば応援してもらえますよ。
状況を楽しむっていうのはすごく大事かなって思いますね。
悲観したら自分も周りもつらいんでね。しょうがないなー!みたいな(笑)
田中:
(笑)
みなさん同じ状況ですもんね。
朝倉:
そうです。
田中:
今、世界がこのような状況でリスナーの方の中にも悩みを抱えている方がいるんじゃないかなと思います。
朝倉さんがなにか難局に直面した際に乗り越えるための考え方や難局をいつ迎えてもいいように日頃意識的にされていることがあれば教えてください。
朝倉:
状況が悪いというか、こういう時は、人がやらない方向に行くというか、逆張りなんですけど
そういう考え方というかスタンスもいいかなと思ってるんですよね。
今営業時間も大幅に短縮しているので、3時間しか営業時間ないんですよ。
一日3時間しかない営業してない店ってなんなんだって思いますけど、選択と集中をして生産性をチェックできるんですよ。
これだけやったときに、アルバイトさんいます、人件費かかってます、でどうやってるんですかっていうことを考えたときにこのノウハウがたまってて生かせるんですよ、きっとね。
じゃあコロナ禍で人件費厳しい、アルバイトさん全カットしましょうってやっちゃうとそれができない。だからうち逆張りなんですよ。うちは今アルバイトさん増えてますから。
土曜日とかは一人多いです。それで回してサービスを一定のレベルに持って行って、なにかできる余裕があるならそこに手を出してみましょうか、とか今のうちにスタッフさんを教育させていただいて・・・っていう時期なんですよ。これたぶん逆だと思います発想。
そうしてるといざ必要なときが来たときにやれると思うんですよ。これをまた0からってなると大変ですから。
田中:
そこからまた新たにってなると難しいですもんね。
朝倉:
難しいです。
だからこの状況を楽しみながら逆に逆にっていう風に思うかな。
そうなるとどういうスタンスになるかなっていうと、周りのひとがああしたらいいんじゃない、こうしたらいいんじゃないって言ってくれるんですよ。
基本的にはそれも大事なんですけど、本人含め何をしたいのか、どうなっていきたいのかっていうことを突き詰められるかが難局では大切。
人に言われて失敗したらなんなんだよってなるけど責任とってくれないじゃないですか。
田中:
そうですね。
朝倉:
「いくら足りないの?500万?500万あげる」っていう風にはならないじゃないですか。(笑)
田中:
(笑)
朝倉:
えー!ってなるけど、でも選択したのは自分だし、あなた自身はどうしたらいいんだろうっていうのを考えて自分を信じてあげる。
自分を信じて歩まないとやっぱり後悔しちゃう気がする。
後悔といえばひとつエピソードがあって、難局がさもなかったように聞こえるけど実はあって、会社が倒産しそうになったことあったんですよ。
でも倒産寸前の会議のときにぼく税理士さんに「これつぶれません!?」って数字を見ながら笑ってた。
田中:
えー!
朝倉:
税理士さんも「確かにやばいですね!このまま行くと資金が!」って。どうしよう、ちょっと電話しようとメインの信用金庫さんにすぐ電話して「もしもし、これ大変でございます」って(笑)
でもこれもすごい真に受けるというか、モノを売ってお金を作ろうとか考えちゃうとそこじゃなくてたぶん方法っていうのはいろいろある。
自分をマイナスに絶対させないっていうことですね。ぼく、笑ってましたから(笑)
田中:
なかなかできないですよね!どうしようとおもっちゃって。
朝倉:
たぶん吹っ切れちゃったんですよ、
3年目くらいで。そういうのがなくなっちゃって。
売上がない、給料だせないとかもういっぱいあったんですね。
でもある時それをやりたくてぼく飲食店やってないなって。
お客さんに喜んでもらいたいのに気持ちが内に向いてたんですよ。数字に向いてた。
それを全部やめて、赤字が出ようがどうでもいい、お客さんに喜んでもらおう、とにかくスタッフに喜んでもらおう、スタッフにうちの店を好きでいてもらおうという風に振り切ってからはラクになりました。
田中:
目先のことではなく視座を高めて、目的を考えるっていうことですね。
朝倉:
そうです、そうです。
朝倉さんのライフワークとは
田中:
続きまして、これが最後の質問です。
この質問はインタビューに答えてくださる方みなさんにお伺いするものです。
あなたのライフワークはなんですか?
個々の取り組みに限定されたお話しではなく、人生をかけて取り組んでいることや果たしたい目的を教えてください。
朝倉:
僕自身のライフワークは縁あって出会う方を私自身の言葉で笑顔に、元気にするっていうことです。
もしそれができない状況であれば、私自身が作った料理でそれを実現したい。
最終的にどこにいきたいかっていうと、昔から思ってることなんですけど、私が作った料理で世界中のひとを笑顔で元気にしたいです。
もうそれだけなんです。考えたものでもいいです。
田中:
朝倉さんからすごいパワーを感じるのでそれがどんどん拡散されていくんじゃないかなと思っています。
朝倉:
光ってます?
田中:
光ってます、光ってます(笑)
朝倉:
おもろいね~(笑)
田中:
朝倉さんありがとうございました!
朝倉:
ありがとうございました!