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アンドリー・シェフチェンコと祖国

【翻訳記事】
Text by Oleg Zadernovsky

 新たな挑戦は決定的な解決策を必要とするものだ。特に祖国が21世紀における未曽有の大規模な戦争に直面している中では。
 ウクライナでは今、フットボール改革がアンドリー・シェフチェンコによって行われようとしている(will now be carried out)。

 非常事態下での第26回ウクライナフットボール協会、UAF会議において、この国では伝説的な名声を手にしたこの元プロ選手にして元監督の彼は、匿名投票の末、会長に選出された。
 シェフチェンコにとって、このような困難な時期にウクライナフットボール協会オフィスへの鍵を受け取るなど想像しにくかったかもしれない(It would hardly have been possible to imagine)。キーウにある投票が実施されたその協会のオフィス自体は、さながら強固に守られた要塞のようだ(resembles a well-protected fortress)。最初の空襲警報で幾多ものアラームが、94名の代表者に迅速に防空シェルターに降りるよう鳴り響いた。

 そしてこれが、ほとんど丸2年の間、ウクライナの人々が生き延びてきた現実なのだ。会長選の2日前、ロコモティヴ・スポーツ・コンプレックスがキーウへのミサイル攻撃によって破壊された。かつて500人の子供たちがサッカーを習っていたその複合施設はもはや使い物にならない(can no longer be used)。シェフチェンコ自身ついこの間、若き世代の才能たちに語りかけるためにそこに立っていた。現在までに(To date)、ウクライナ国内の353のスポーツ施設が空爆によるダメージを被り、24のクラブが活動休止を余儀なくされている。

 シェフチェンコは戦争の恐怖を身に染みてわかっている(knows first-hand about the horror of war)。戦争初期、彼の母と妹はウクライナ首都への爆撃に見舞われた。
「その時の感情は言葉には言い表せない。心にあったのは虚しさと絶望だった。でも同時に、私たちの独立と自由を守り抜けるとも信じていたんだ。」


 ロシアが全面的に侵攻してきた当初、シェフチェンコは募金活動プラットフォーム、United24のアンバサダーに就いた。ヴォルディミル・ゼレンスキー大統領が設立した慈善団体だ。すぐにシェフチェンコは人道、医療、そして食糧支援を差し迫って必要としている(in dire need)避難民への募金集めに取り組んだ(got involved in raising funds)。

「私たちは一つの民族であり、一つの国なんだ。」
 シェフチェンコは語った。
「ウクライナ史上最も困難な瞬間の一つであるこの時に、私は、私の国の人々を助けるためにあらゆることをしなければならない。」
 ゼレンスキーは彼の尽力を称えた。
「アンドリーは惜しみない努力とスポーツ界での功績によって、絶大な影響力を持っている。彼が我が国への国際的な支援を増やしてくれるよう指揮してくれたんだ。」

 アーセナル所属のオレクサンドル・ジンチェンコの助けにより、シェフチェンコは昨年8月ロンドンでチャリティーマッチも開いた。収益の全てはミハイロ・コツィウビンスケ村にある学校施設の再建に充てられる予定だ。
「空襲の間、約100人の人々が学校に隠れていたが、その3分の1は子供たちだった。ある日、砲撃を受けて天井が崩れた。先生が亡くなり、多くの人が負傷した。シェフチェンコはそのことを聞きつけると、すぐに助けに来てくれたんだ。」
と、ミハイロ・コツィウビンスケ学院校長のミコラ・シュパクは話す。

 シェフチェンコは自信を失っていない。いつでも勝利をあきらめなかった男だ。
「この戦争はサッカー界にもダイレクトに影響を及ぼした。物事は停滞している(we have stagnation)。リーグ戦のレベルは低く、強力な外国人プレーヤーを呼んでくる力もない。国際的に見通しは混沌としており、才能ある子らは国外に流れ出ていく(the outflow of talented children)。」
「だがしかし、クロアチアのように困難を克服した国の例もある。あの国は戦争が始まった90年代、多くの子供たちの流出問題に直面していた(faced a mass exodus of children)。友人のズヴォニミール・ボバンとも話したんだ。彼はこういう問題の解決に取り組んでいたから。彼は、私たちを手伝う準備はできていると言ってくれた。」

 シェフチェンコは、生まれながらの勝者だ。そして、彼が現役だったころと同じように、しかるべき場所、しかるべき時に、彼はそこにいる(he finds himself in the right place at the right time)。
 「戦時中でさえ、私たちがいる場所で留まってばかりいるだけではなく、前に進まないといけないんだ(we need not only to hold on to what we have, but also to move forward)。高く、野心的な目標を掲げてね。私は全てのウクライナの人々に対して、長年サポートしてくれたことに感謝している。その恩返しとして、何でもするつもりだよ。ウクライナのフットボールを強くして、誇りに思ってもらえるようにね(and give a reason to be proud)。」

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