平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(1)
Ⅰ
フルーチアイスは俺が生きる神たる東京【第二圏】の大ヒット氷菓子だ。
地獄の底のように廃れた無人の公園。木々は枯れている。腐りかけのベンチに座り、顔を上げる。
高層ビルの壁面に映し出されている参次元電飾広告。フルーチアイス超越的オレンジ味、夏限定。黒色のフォントから、容器に入った毒色氷菓子が飛び出す。ついでに、値段や販売店などの拡張現実補足が全情報集受容疑似瞳に表示される。
今の俺には口に運ぶ気力もない。夜中の衝動徘徊しかできない。
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9,470字
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