役者がはじめてホストクラブに行ってみた。

今回体験するきっかけは、次回の舞台公演の役どころが、ホストにハマっている女の子の役だったからだ。人生でホストクラブに足を踏み入れる事があるなんて思ってもみなかったが、経験からしか演技はできない。と言う事で満を持して？実際に行ってみることにした。

どんな世界か少しビクビクしながら、それでも胸の高鳴りを抑えきれないくらいに期待して扉を開くと、めくるめく夜の世界が広がっていた。

大音量でかかる懐メロ。仄かに薄暗い店内が広がっていて、入ってすぐにボーイさんに声をかけられる。
「いらっしゃいませ。ご指名は？」
「初めてです」
「身分証をご準備して少しお待ちください」
入ってみるとなんて事はなくて、ワクワクした。身分証の確認が終わって、席に案内される。カラフルなブルー系のライトと、席は黒。オープンしてすぐだったので、他のお客さんはおらず、貸切状態だった。

料金システムの説明をされて、ドリンクを頼み、ホスト君が席に着く。
「初めまして」と言いながら名刺をもらった。
行く前は仕事とか聞かれるのかな？と思いながら妄想していたが、そんな事は全くなくて、意外と聞かれない。なんなら名前すら聞かれないのが殆どだった。初めてと言うと、何故この店を選んだのか、どんな人がタイプ？と言う質問にわかれた。そこからだいたい5分交代くらいで、今日出勤しているホスト君達が席に着いてくれる。初対面でのトーク力は本当に見習いたいものがあった。たった少しのきっかけから話をどれだけ広げられるか。短い中でどれだけアピールできるか、その力は歴然としていたように思う。結局は慣れなのだ。初々しい、2週間前に入店した子達がいたり、話に呑まれてあまり話せない子がいたり、盛り上げるのが上手い人、ヤンチャそうな子、色んな人がいた。かわるがわる、少しずつ話したが、圧倒的に時間が短い。そして最初の方の子はどうしても印象が薄くなりがちだ。席に着いてくれる順番も良く考えられていた。最初はそこそこ慣れている子が場をあっためて、次に新人の子、そこから恐らくは入店順であろうと思う。役職が付いている子、主任、店長代理、支配人。いろんな子達がいた。

今日出勤している子は、以上になります。と、5〜6周くらいしたら、この中から席につける子を選んでください。と言われた。所謂場内指名というやつだ。好みの子を選んで、席に着いてもらう。私たちは予め、ホームページやSNSをしっかりチェックしていたので、気になる名前の子などしっかり覚えていた。それぞれ1人ずつ指名して、席に着いてもらう。今回わたしが指名したのは、支配人だ。やっぱり支配人をしているだけであって、圧倒的トーク力が強かった。面白いし、印象に残る。基準は面白かったかどうか。即答だった。そして今日たまたまお誕生日だったので、おめでとうを伝えた。初回からおめでとうを言いにくる客もなかなか珍しいと思う。そんなこんなで、残りの20分くらいを他愛もない話をして楽しんだ。

「残り10分ですが、延長はどうされますか？」と、ボーイさんがやってきて、システムの説明をしてくれる。初回は飲み呑ませ放題(私たちも、ホスト達も飲み放題)で1時間1,000円だったが、通常料金は1時間3,000円でドリンクも種類によっては一杯1,000円〜、ホストに飲ませるならそのドリンク代も別にかかるとの事だった。1時間はあっという間で、延長しても良いかなとも思わせる楽しさではあったが、そもそもわたしは楽しみにきたわけではなく、役作りの為だったので延長はせずに退店する事にした。帰りも荷物を持って、ビルの下までお見送りしてくれた。多分、お客さんがいなかったからだと思う。忙しい時であればきっと、エレベーター前までだったであろう。

たった1時間ではあったが、夢のような時間であった。とても楽しく話せたし、これは確かにハマる女の子達の気持ちがよくわかる。わたしと友人はノリが良いので、寧ろこっちも接客してるかの如く、トークを楽しんだが。次は大人しい設定？で行くのもアリだなと思った。余談だが、名前を聞かれた時は役名を名乗って、臨場感を体験した。この楽しさの引き出しを、本番に役立てたいと思う。

タイトル未設定

今回体験したのはClub GRAN。初めてだったので、どこが良いかとかは余りわからず、HPを見て料金システムなどを見比べた結果、4店舗を抽出し、その中からあみだくじで決定した。最終的に席についてもらったのは寿司(ことぶきつかさ)さんと寿命(ことぶきみこと)さんの2人。このお店は特徴的な名前のホストが多くいて、そこも楽しめたポイントである。

Anne