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とある夏の育児記 〜ひとりで向き合う女性にひとりじゃないよと伝えたい〜

 50代 女性 教員在職20年強
 4人の子の産休・育休・育児時短勤務経験あり
 身近な人との人間関係
 職場で感じるジェンダー
 理想の教育ってなんだろう…
 考えることあまた☕️

第1子の産休中に、最長1年だった育休が
3年まで延長されることになった。
初めての育児、
実家も遠方だったため、
ワンオペでいっぱいいっぱいのワタシには
まさしく “渡りに船” だった。


夫は教員で、週末も部活動の指導や自分の遊びに忙しかった。
子どもが生まれて最初のボーナスは、
「これで最後だから」と
10万円も自分の取り分とした。
そして
アパートの玄関で泣きながら足にしがみつく
長男を振り払い、軍資金を手に
パチンコへと出かけていった。

ワタシは泣き叫ぶ長男を抱きしめて
一緒に泣いた。


週末、
狭いアパートに赤ん坊と2人では
1日があまりに長すぎた。
赤ちゃん用品一式をバッグに詰め込んで、
ショッピングモールに出かけた。
長男を幼児コーナーで遊ばせたり
食料品を買ったりしていると、
周りの雑音で寂しさが紛れる気がした。
しかし、実際は
家族連れの笑顔を見ると気持ちが落ち込んだ。
彼らを羨み、
いっそう孤独を感じるのだった。


とある夏の土曜の夜。
その日も長男と2人で過ごし、
特に予定もない週末に悶々としていたところ、
大きな音が鳴り始めた。
花火だ。
その日は市の花火大会だった。
初めての土地で、
そんな行事があるなんて知らなかった。
長男を抱っこして、近くの公園に出てみた。
公園の小さな丘のてっぺんに登った。

どおーん。どおーん。
頭の上に大きな菊の花がいくつも開いては消えていく。
 「おっきいねえ」
 「きれいだねえ」

フィナーレの連続花火を見届けて帰宅すると、
長男の紙おむつはおしっこでパンパンだった。

部屋では、部活動から帰宅した夫がひとり寝ていた。
 「この人は今週末、楽しかったのだろうか」

週末も一緒に過ごせないことが多くつらかったが、
それよりも、
父親になり切れない夫との
心の距離が苦しかった。


長男のおむつを替えながら、話しかけた。
 「生まれて初めての花火だったね。
  一緒に見ることができて
  ママはとーっても楽しかった。
  一生忘れないよ。」

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