夜明け前の神様 第3のリベロ Vol.49
せっかくの週末、アラームもセットしていないというのに、4時前に起きてしまった。まだ薄暗い空には、細い月が昇っていた。
「休まなくて、大丈夫ですか。ご自分で思うより、深刻な状況に見えます」再び通い始めた心療内科で担当医から伝えられたのは、そんな見立てだった。
昨年来、帰宅できずオフィスで寝泊まりした経験を伝えると、「怖くなかった?」と反応されることもある。私には、オバケなんかより、仕事のほうがずっと怖い。
再び寝付けそうにもなく、YouTubeの再生リストを流す。kaeru10000さんが作成した動画を中心に集めた楽曲のリストは、全11曲。永く、神のように崇拝してきたアーティストの「ベスト11」と名付けた。
3曲目から5曲目は前半のヤマ場で、「THE END OF THE WORLD」に次いで「花水木」、さらに「PENGUIN」へと続く。3曲を通して別れの兆しと訪れ、その後の回想まで描かれ、勝手ながら"三部作"だと理解してきた。それぞれ、最初に聴いたのは中学の頃だが、愛着は変わらない。
"折り返し地点"の6曲目には明るい「HOME WORK」を配し、ムードをリセット。静かでも温もりに溢れた「君に会いに行く」のあと、「北風」「彗星」と真骨頂の冬の唄が続き、締めは「Such a Lovely Place」。さらに、"アウトロ"を託した「世界に一つだけの花」まで聴き終えた。
医師から心配されるような状況でも、休職には踏み切れない。もし自分が抜けたところで、担当業務が回らないなどということはあり得ないだろう。ただ、同僚各位にいま以上の迷惑をかけるのは確実で、その申し訳なさを思うととても決断できない。
眠れない夜明け前、槇原敬之の音楽に帰りたくなった。読書やテレビを受け付けなくなったいまでも、その声と詞は胸に染み入ってくる。浸るうちに小一時間が過ぎ、月は動き、空はほのかに青くなっていた。