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教育・福祉職の私にとってお守りのような漫画

ここ数日、「疲れているときに読む漫画といえばなんだろうか」と考えていた。

疲れているときに読むなら、やっぱり繰り返し読んできたものがいい。何巻にどのエピソードが収録されているか、何なら台詞も覚えているくらい熟読している漫画。初めて読む漫画は刺激が多くて読むのにエネルギーが必要だと思うのだ。疲れているときは、展開がわかりきっている状態で読むのがいい。

漫画がたくさんある家で育ったので、繰り返し読んできた大好きな漫画はいくつも思い浮かぶ。その中で疲れているときにぴったりなのはどの漫画だろう。

私は何か1つのことに集中して他のことを考えずにいられる状態が好きだ。リフレッシュできる。ということは、展開がわかっているのに没頭できる面白い物語がいい。
さらに、疲れているときは泣きにいきたい。最近、涙活という言葉を耳にするけれど、泣くことはストレス解消にいいらしい。

これらの条件をクリアする漫画を思いついた。私にとって、展開を覚えきっているのに没頭できて、そして絶対に泣ける鉄板の漫画。それは一色まことさんの『ピアノの森』だ。


ピアノの森は1998年から不定期連載されていて2015年に完結した作品。2007年にアニメ映画化、原作完結後2018年にアニメ化された。さらに、今調べながら知ったのだが2024年12月に新連載「もうひとつのピアノの森 整う音」がスタートしたらしい。嬉しい!

ピアノの森のあらすじはこちら。

森の端と呼ばれる歓楽街で、娼婦の子供として生まれた一ノ瀬海は、3歳の時から森に捨てられていたピアノを弾いて育った。陽の光や月明かりに照らされ、森に住む動物たちを観客に見立てては演奏会を開く日々。森が育んだカイの才能は、聴いた人を驚愕させるまでになっていた。かつて天才ピアニストといわれた阿字野壮介や、無限大の可能性を秘めた若きピアニストたちとの出会いを通して、カイは人間としてもピアニストとしても大きく成長していくことになる。

マンガぺディアより

初めてピアノの森に出会ったのは小学校3年生くらいのときだったと思う。すぐにのめり込んだのだが当時は完結していなくて続きが読めずヤキモキした。新刊が発売されるたびに前の巻から読み返して、大学生の頃に完結した。完結してからもたびたび読み直し、その度にお決まりの場所で泣いた。実家を出るときは親に頼んで全巻連れて家を出た。

というように、さまざまな年齢でこの漫画を楽しんできたけれど、いつ読んでも没頭できてしまう。noteでちょこっと検索してみたら、ピアノの森にハマっている方々がたくさんいた。やはり人は皆、ピアノの森に魅了されるのだと思う。


ところで、「え?この方もピアノの森、好きなんだ!!!」と驚いた経験がある。

大学院生の頃、とある先生の研究室でゼミに参加していた。その研究室でチラッと本棚を見たら、ピアノの森の文庫版が全巻並んでいたのだ。職場に置くくらい先生もファンなのかな!?と気になりすぎて聞いてみたら、こんなことを話してくれた。

「もちろん作品としても大好きだけど、“ストレングスに注目した支援ってこういうことだし、うまくハマるとこんな風に人は変わるんだ”っていうのがこれでもかというほどわかる物語だから、学生にも読んでもらえるように置いている」とのこと。

さすがに趣味だけで置いているわけではなかった。

この先生の専門はソーシャルワーク。上記の台詞の中にある「ストレングスに注目した支援」というのは、「悪いところを良くするという発想ではなく、人がもともと持っている強みや長所を引き出し、伸ばしていこうとする」ような支援の考え方である。

ピアノの森の主人公、一ノ瀬海(イチノセ・カイ)はあらすじの通りの境遇で育ってきた。身の上のせいで同級生にいじめられることもあれば、仕事の手伝いを強制されることも…。そんなカイに対して、音楽教師の阿字野壮介(アジノ・ソウスケ)は、ピアノという強みをさらに引き出す方向でカイと関わっていく(物語の中盤では環境にも働きかけていくけれど)。カイ自身もピアノで生きていくことを目指すようになり、ピアノはもちろん人としても成長していく。

もし、学校の先生という立場でカイに出会ったとしたら私はどう関わるのだろう。(私の職場は学習塾のようなところ。おそらくカイは通わないけれど、もしそこで出会ったらどう関わるだろう、とも。)

森の端という“よくない場所”から引き離すことだけを考えてしまわないだろうか。家庭のことだから第三者にできることはないと距離をとってしまわないだろうか。阿字野先生のようにカイの強みに気付けるのだろうか…。

ピアノの森はフィクションだ。見たくないようなきつい環境が描かれつつも、主人公はピアノという圧倒的な強みを持っている。

けれども、研究室でピアノの森を見かけたあの日以来、ピアノの森の存在を思い出すたび、本棚で見かけるたびに、仕事で出会った生徒たちと関わるときに強みを見ているだろうか、苦手なところをできるようにとばかり思っていないだろうかと、自分の関わり方を省みるようになった。ただ、読み始めると物語が面白すぎるので仕事のことは忘れて没頭できて泣けるのはありがたいところだ。

ピアノの森は私にとってお守りのような漫画だと思う。疲れた日のリフレッシュを手伝ってくれる漫画であり、かつ、教育・福祉職の自分について省みることができる漫画。ピアノの森に出会うことができてよかった。



参加しているメンバーシップ、「手帳好きによる手帳Meeting」でいただいたお題をきっかけに「疲れている日に読む漫画」を考えていました。
素敵なお題をありがとうございました!

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あんみつ
最後まで読んでくださってありがとうございます!