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不機嫌になるなら語れる言葉を持て

シンクに積まれたお皿を目にして舌打ち。
洗濯機をまわしたがいいが干し忘れに気づいて舌打ち。
スーパーから帰ってきてから買い忘れに気づいて舌打ち。
全部、わたしの日常である。

わたしの日常はとにかく舌打ちが多い。
嫌なことは後回しにするし、抜け漏れも多いからだ。
そんな自分に腹を立てつつ、自宅でどれだけ舌打ちしようが昼間は自分以外誰もいないので問題ないと思っているし、人前で舌打ちはしない。

一方でうちの夫は溜め息が多いのだ。
洗濯をさぼったがゆえに明日はくパンツがなくて溜め息。
テレビを観ている途中でわたしに話しかけられて溜め息。
シンクに積まれたお皿を目にして溜め息。

これをされると、まるでわたしへの当てつけに感じる。
心のなかではきっとこう思っているのだろう。
(在宅勤務だったら洗濯ぐらいやっといてくれよ)
(今ドラマがおもしろいところなんだから、話は後にしてくれ)
(洗い物から始めていたら夕飯何時にできあがるんだよ)

でもねえ、もはや溜め息はわたしの舌打ちと同じく、心の声そのものなのよ。
わたしがいないところならどれだけ溜め息をついてもらっても問題ないが、わたしがそこにいるのなら、直接いってくれたほうがまだ楽なんです。
なぜなら、こちらとしては察して気遣う必要がないから。

イライラするなとも怒るなともいわない。
しかし、「察してほしい」、「気遣ってほしい」は、いつでも通用すると思うなよ、と思う。
イラ立ちを言葉にせず態度に出す行為は、それだけ人に思考と判断の負担を強いるものだと思う。

夫だけではない。だいたいの職場にこういうタイプの人って1人や2人はいたし、居酒屋の常連にもこういう女子またはおっちゃんっている。
めちゃくちゃ人のことを棚に上げて書いているが、自分だって時々やってしまうことがある。

できれば、不機嫌を表に出さない大人でありたいし、そもそも不機嫌になりにくい余裕のある大人でありたい。
そうはいってもまだまだ修行の身。不機嫌になってしまったときには、せめて言葉を持とう。

スラスラと話せなくてもいい、語彙が少なくてもいい、つたない言葉でもいいから、なぜ嫌なのか、どうしてほしいのか、説明できる言葉を。

∽∽∽

このあいだ大型の雑貨店に行ったら、小さな男の子が大泣きしていた。
買ってほしいものを親にだめだといわれて駄々をこねているようだ。
「ほしい!このお菓子ほしい!」とわめいていた。
しかしその男の子が握りしめていたのは、大きなラムネにもみえるバスボムである。
「それは食べられないからだめ」とお父さんに正論を返されても、びくともしない。

結局「これは食べられないから買わないけど、あとでお菓子売り場をみにいこう」と、お父さんになかば引きずられるようにして少年は雑貨店をあとにしていった。泣きじゃくりながら。
しかし少年はあのあときっと、お菓子売り場でなにかお菓子を買ってもらったのだろう。

あんな小さな少年でさえお菓子がほしいと言葉にできるのに、これ見よがしな舌打ちや溜め息などで人の気を引こうとする大人とは。

しかも言葉にしたほうが希望が叶う確率が高いというのに、わざわざ言葉にしないで、人のことも不愉快な気持ちにさせて、いったい誰得なのだろう。

そういうわけで、夫には前々から「あからさまな溜め息をつくぐらいなら直接言ってくれ」と口酸っぱく言葉にしているし、自分もいっそう気をつけたい。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたがイラッとしたときについとってしまう行動は、なんですか?

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