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本と本屋に救われているかもしれない

母の買いものについていくと、買いもののついでに寄りたいところに寄ってもらえるおまけがついてくる。
この2週間足らずで2度も寄ってもらっている場所が、本屋だ。

帰省の際、本は何冊か持ってきているのだ。
持ってきているといっても電子書籍だから、荷物は端末ひとつだけど。
それもまだ消化中だというのに、なんなら自宅にも積読タワーがそびえ立っているというのに、本屋に行きたい。

とくに欲しい本があるわけでもない。
でも、本をみたい。
むしろ本屋という「空間」そのものが好きだ。

車で10分15分の距離に特別お気に入りの本屋があるとはいえ、本屋はわたしを吸い寄せる魔力を放っているに違いない。完全にホイホイされている。

鼻腔をやさしく刺激するインクの香り。
併設されたカフェからただようほのかなコーヒーの香り。

本屋の香りをお香にして販売してくれたらいいのに。
白檀やムスクをもしのぐリラックス効果が得られるだろうし、わたしの執筆スピードも2倍になるとわたしは信じている。

∽∽∽

今日は、シソンヌじろうさんの『シソンヌじろうの自分探し』という本がもし置いてあれば買って帰ろうと思っていた。

「このへんに置いてありそうな棚」をていねいに2周ぐらいまわってみる。
途中目に留まった高田純次さんの『最後の適当日記(仮)』をつい立ち読みしてしまい、めちゃくちゃニヤニヤしてしまう。いろいろとあぶない。

最後の手段として店員さんに聞いてみるも、当店では取り扱いがないとのことだった。
…あら残念。

ついぞ目的がなにもなくなったわたしは、母のほうをチラリと見やる。
母もなにか立ち読みしているようだ。
ではわたしも本の庭を散歩するとしよう。

文庫本の棚を縫うようにそぞろ歩きしてみる。
平積みされた本をどこに焦点を合わせるでもなく左から右へ、右から左へ視点もそぞろ歩き。

わたしは本の表紙も好きなのだ。
映像化された小説の表紙が、俳優さんの写真が入った映像化仕様に変わってしまうとすこしかなしい。
プロモーション戦略上仕方がないのはわかるが、表紙も含めて小説だから。

さっと1周してから、今度は逆まわりで2周目に入る。
またチラリと母を見やる。
大河ドラマに触発されている母は「図解!源氏物語」みたいな本を背後の棚で熱心に立ち読みしている。

まだ時間は大丈夫そうだ。

あーもう寝室が本屋だったらいいのに。
辻村深月さんの作品に『図書館で暮らしたい』があるが、わたし風にいわせてもらうなら『本屋で眠りたい』である。

今にも寝っ転がりたい衝動を抑えながら、今度はよりじっくりと文庫本コーナーを散策する。

ああ、おもしろそうな本だなあ。
この本、今のわたしにぴったりな気がする…。
うわー、あの本がついに文庫化されている…!

傍からみたらおそらく、真顔になったり鼻の穴を膨らませたり顔をほころばせたりと顔面の忙しい変な女性だっただろう。
鼻が膨らんだことに自分で気づいた瞬間、母からの視線にも気づく。

タイムアップ。
そそくさとレジに向かう。
気づけばわたしの脇には4冊の文庫本が抱えられていた。

不祥事を働いた偉い人が「記憶があいまいで」とよく言い訳をしているが、わたしはいつの間に4冊もの本を手に取っていたのか記憶があいまいである。
歯切れの悪い偉い人たちの気持ちが、ちょっとわかった気がした。

∽∽∽

目当ての本もなかったし、
積読タワーがまた高さを更新するとわかっているのに、また本を買ってしまった…。

なおわたしは前回本屋に寄ったときも、まったく同じ行程を踏んで本を4冊買っている。

みなさんご存知のとおり、4+4=8である。
帰省してからたった2週間足らずで8冊もの本を購入してしまった。ぜんぶ本屋の魔力のせいだ。本屋が楽しすぎるから。

もうスーツケースにしまって自宅まで持って帰るつもりはまったくない。段ボールに詰めて宅配便で送ろうと思っている。AmazonならぬAmyzon。

もっともっと、本を読みたい。
今ほとんどの気力を失っているわたしが唯一わくわくできることかもしれない。
だから、本の衝動買いも、積読タワーも、今は目をつぶろう。

そんな気持ちにさせてくれたきっかけの本を、ここにそっと置いておきます。くれぐれも電車内で読まないよう、気をつけて。

今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近はまった本は、なんですか?

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