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本屋さん悲喜こもごも

月初の月曜日というのはなにかとすることが多い。
事務処理、打ち合わせ、事務処理…
コア業務は手もつけられないし、手をつけることをもはや諦めている。

ほかにも用事がある。
郵便物を投函するついでに切手を購入し、水道代を支払い、スーツをクリーニングに出し、スーパーに買いものに行って、欲しい本を本屋で買ってくる。

いつもなら歩いていくところだが、今日は自転車であっちからこっちへ向かう。
歩いてでもまわれる距離だから自転車なら1時間あれば帰ってこられるだろう。
そうじゃないと、今にも夕立がざっと来そうな空模様だ。

∽∽∽

郵便局とクリーニングを思ったより手こずりながらも無事にクリアし、スーパーの前に本屋に寄ることにした。
この様子では目標の1時間を過ぎてしまいそうだが、仕方がない。

目当ての本はあらかじめ検索して「在庫あり」だとわかっている。
最新作や話題作でもないから、よほど運が悪くなければ棚に並んでいるだろう。

本屋の自動ドアを通過し、該当の棚に向かう。
左から右へ、上から下へ視線を動かしていく。
作者名のプレートがみつかる。
この辺にあるはずだ。

視線を動かすスピードを落として1冊ずつタイトルを確認していくが見当たらない。
気づけば違う作者のエリアに切り替わっていた。

おかしいな。
夏休みだし特設コーナーにあるのかしら。
そう思って平積みエリアもくまなく探してみるが、その作者のほかの作品は並んでいても、目当ての作品は見当たらない。

店員さんに尋ねてみるしかない。
レジカウンターのほうをちらっと見やると、店員さんは2人ともお客さま対応中だ。
いつもめちゃくちゃ暇そう(失礼)なのになぜ今日に限って…!

店員さんに尋ねる前にもう一度確認しよう。
もとの棚に戻る。じっくり舐めるように探してみてもやっぱりない。
こうなってくると「なんかおもしろそうな本ないかな」と優雅に棚を眺めながら待つ心の余裕はなく、ちらちらカウンターをうかがう。

「すみません。この本を探しているんですが棚に見当たらなくて。在庫ってまだありますか?」とスマホの検索画面を差し出す。

すると、在庫はたしかに「ある」という。
しかも案内された棚は、さっき何度もみたあの棚。

一緒に探してくれるが、やっぱりない。
わたしがすでに一度探した別の棚もあれこれ探してくれているが、みつからないようだ。

「すみません。まだ新人なもので。もう少々お待ちください」と、本当に申し訳なさそうな表情でペコペコと頭を下げてくれる店員さん。
…こちらが申し訳ない気持ちになってくる。

∽∽∽

ひとつの嫌な予感がよぎる。
もしかして、その本は一度誰かの手にとられた後、あるべき場所に戻されなかったのではないか。

スーパーでよくあるだろう。
なぜこの商品がこんなところに…?という光景が。
一度買いものカゴに入れてみたものの、やっぱりいいやと適当な場所にほかっていくのだろうか。
あるいはそこら辺を走り回っている小さな子どもの仕業だろうか。

しかしここはスーパーではない。本屋さんだ。
まさか本屋さんでもそんなことをする人がいるとは、夢にも思っていなかった。
電子書籍でも本を読めるこの時代に紙の本を求めて書店にやってくる人たちというのは、それなりに本をていねいに扱うだろうとの先入観に気づくとともに、がっかりした。

大会に出るような真のマッチョはジムでのマナーもとてもよいという。
紙の本を求めるような真の本好きは、本屋さんでのマナーもよいものだと思いこんでいたし、そうであってほしかった。

もちろん、もとの棚に戻したつもりが悪意なく間違ってしまった可能性も否定できないし、そうであったと信じたい。

検索結果が示す棚と近隣の棚も探してみるものの、ここはうちの本棚とはわけが違う。小さいとはいえ本屋だ。一体どれだけの本が並んでいるというのだ。
このまま見つからなかったら、日が暮れてしまうどころか夜が明けてしまうだろう。

…気づけば本の捜索にあたってくれる店員さんは2人に増えていた。

∽∽∽

これはもう今日は切り上げよう。
店員さんに声をかけようとしたそのとき、向こうから声がかかった。

「すみません。在庫管理のミスかもしれません」
…つまり店員さんも本件に関して白旗を挙げたことを意味する。

帰宅してAmazonで購入すれば明日にでも手に入るだろう。
しかしわたしは可能なら別の選択肢をとりたいと決めていた。

「取り寄せはできますか?」

本の取り寄せなど何年ぶりにするだろう。
でもわたしは本屋さんでお金を使いたい。あんなに親切に対応してくれた店員さんのためにも。

無事に取り寄せの手続きをすませ、いつごろ入荷するか聞くと1週間以内だという。
Amazonなら明日だけど、1週間か。

すぐに必要な本ではないし、うちには積ん読がたくさんあるのだ。
1週間なんてすぐだろう。

∽∽∽

本屋を後にしてスーパーに寄り、結局帰宅したのは出発から2時間後。
今にも降り出しそうな空模様は、2時間経っても今にも降り出しそうなままだった。

予定よりも1時間ロスしてしまったが、なんだかやりきった感で満ちている。
手帳を開けばそこには未消化のTODOが並んでいてげんなりもするけれど。
今日はまだ月曜だ。これから軌道修正しよう。本の入荷を心待ちに。



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