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15位だからみえる景色を書いておく

巷の学校ではぼちぼち入学式が執りおこなわれているのだろうか。

わたしは高校の入学式でみたマッチのことを鮮明に覚えている。
マッチといっても、近藤真彦さんのことではない。
同級生のマッチだ。
入学式で受けた強烈な印象を忘れかけたころ、先生の采配により奇跡的に2年生でクラスメイトとして過ごすことになる、マッチ。

うちの高校の入学式なんてだいたいみんな黒髪か暗めの茶髪が相場だったというのに、マッチはまっきんきんの髪をツンツンに立てて、まるでサイヤ人のような頭をしていた。
ギンギラギンならぬキンキラキン。

高校デビューを飾ろうと茶髪に染めてきた人、胸元からチラリと派手な色のTシャツをのぞかせている男子も、残念ながらマッチの輝きでそのがんばりが霞んでしまっていた。

なおマッチは髪型は置いておいても市原隼人さんのようなイケメンで、性格もいい男であった。
恋心を抱くというよりは、もはやわたしのアイドルだった。マッチだけに。
(しかも修学旅行は同じグループであった!心躍ったね!)

∽∽∽

メンタルの調子がよくないときというのは、なにも書き残す気になれない。
なんにも浮かんでこないので、今日は入学式シーズンにかこつけて高校時代のことなどを思い出してみている。

わたしはマッチとは対照的に、高校デビューも大学デビューも通過してこなかったクチである。
髪も染めたしピアスも開けたが、植木鉢の土が乾いていくような地味な変化だったし、そもそも時期だって2年3年になってからの話。デビューというには遅すぎる。

いつもわたしはスロースタートなのだ。
下校の支度も体操服に着替えるのも給食を食べるのも、人よりワンテンポ、ツーテンポ遅い。
100に1、スタートダッシュ決めたときには、だいたい重大なミスをやらかしている。

だから鮮やかなスタートを切ることはない。
劇的なゴールを飾ることもない。
残念ながら華麗なごぼう抜きもない。
栄えあるデビューとは縁遠い人間である。

競馬でいったら序盤後方スタートで、最終コーナーまわってもまだ後方。
周囲の順位がどんなに目まぐるしく変わっても。

18頭だてのレースなら、だいたい15位。
安定の15位。

∽∽∽

だからさあ、みんなが4月だ新年度だって息巻いてスタートダッシュして輝かしいデビューを果たしていく姿を、後ろからじっと眺めているわけ。

「自分の気持ち、からだ、動け!」とやや焦りを感じ、時にムチも入れてみるけど、最近は諦めをおぼえつつある。
「またこの時期か」と舌打ちしながら、レースが落ち着くのをじっと待つ。

落ち着いたところで15位に変わりはないのだが。

そんなネクラ陰キャひがみ諦めモード全開のときには、なにも書きたくないよ。書くことも浮かばないし。


でもそういうときこそ「書きどき」なのよな、本当は。

ほとんど誰も注目しない、カメラも追っていない、そんな15位にしかみえない景色を描写しておくんだよ。
後々「デビュー前の貴重な記録」として多方面から重宝されるぜ。

ほかにも万年15位の人、いるはずだもの。
それにわたしもいつ「15位の星」としてデビューするか、わからないしね。

だから、なんだかぱっとしなくて、書きたくないときほど、書いたほうがいいんだと思う。

そいつが俺のやり方。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近デビューしたことは、なんですか?

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