あの夏、東本願寺で。
真夏のうだるような暑さの中、私は御影堂の中に座っていた。
結婚を直前に控えた夏だというのに、その心は悲しみでいっぱいだった。それは遠く離れた土地に嫁ぐからではなく、娘の結婚を喜んでくれない両親への気持ちだった。結婚といえば色節のはずなのになぜこんな気持ちにならなければいけないのかという怒りも感じていた。
そのときなぜ京都に行こうと思ったのかは今でもわからない。そこが両親の生まれ育った土地だからなのだろうか。わからないまま私の足は京都に向かっていた。
京都は盆地にあるため、地形的に風が通らず夏はとても蒸し暑くなる。座っているだけで汗が噴き出す。暑すぎて何も考えることなどできなかったけれど、私は堂内の畳の上に座り午後のひと時を過ごした。
あれから月日は流れ、今では両親も結婚を認めてくれたし新しい土地にも慣れた。けれど私はあの夏、東本願寺で過ごした時間を忘れることはないだろう。
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