今日ときめいた言葉10ー「怒りを高潔さに変える。物を書く基本はそこにある」
(2022年12月21日付 朝日新聞 評論家 川本三郎氏 寄稿「思い出して生きること」より、心に響いた3つの言葉)
❶「かつて人間は怒りではなく、高潔さで苦難に立ち向かっていた」
(コルム・トビーンの小説「ノーラ・ウェブスター」からの言葉だそうだ)
「むろん『怒り』は人一倍ある。しかし、『怒り』を生のままで表現するのではなく『高潔さ』に変える。ものを書く基本はそこにあるのではないか」
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❷「今Ukraine(敢えて英語にしてあります)の戦争を日々目の当たりにすると、自分の世代の幸運を思わざるを得ない。平和でいることのありがたさ、そして、なんというか申し訳なさも感じてしまう」
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❸「君たち日本人はいい。反戦運動をして安全に家に帰れるのだから。僕たちは明日ベトナムに行かなければならない」
「今でも私と年齢の変わらないこの米兵の言葉が重く残っている。戦争反対と言うとき、彼の言葉を忘れないようにしている」
(かつて青森県三沢の米軍基地を取材した時の米兵の言葉だそうだ)
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これらの三つの言葉が示唆していることは、対極にいるその言葉を聞く他者のことを心に留めよと言うことだと理解した。
一方的に自分の感情をむき出しにするのではなく理性と品位を持って表現すること。己を慎めということだろう。日ごろ漫然と生きている我が身が引き締まる思いだ。これらの言葉は少しも強い口調ではないのに、じんわりと私の心に入り込んで留まっている。