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[note始めます]ガンになった宮本亜門さんが伝えたかったこと。演出家から盗む、演出の道具

演出はあくまで道具なんだよ

宮本亜門さんのところでインターンとして入った数日後。

亜門さんはポロッと言った。

「道具とかって言われても、意味わからないです……」

俺は、亜門さんの個人事務所にインターンとして入った大学生であり、実は遠い親戚。行くところもなかったので、親が勝手に話をとりつけてきて、ここで入り浸っている。

「演出家っていうのはよくわからないけど、亜門さんって芸能人って感じですよね」

かもね、でも文化人かな? まあ、なんでもいいよ

「なんでもいい? ふーん」

テレビのクイズ番組とかでは、文化人として出ている。そんな世界でも活躍している演出家なのに、演出のことを話さないのは、どうしてだろう。

「で、なんで演出に興味持ったんですか?」

と振ってみた。

もと引きこもりが演出家に

好きなことだけやっているんだよ。高校生で引きこもりのころに聞いた10枚のレコード。何千回も聞いたら、イメージが脳みその中に出てくるようになって、聞けば聞くほど、花火が上がったり、噴水が吹いたりして。そのイメージを誰かに伝えたい。その体験が演出家になりたいきっかけだった。だから演出家という肩書きが欲しかったわけじゃない

「じゃ、どうやってここまで来れたんですか?」

ほんとうに、不思議だよね。大学の演劇専攻も中退してるし、ダンサーや振付師ではあったけど、劇団を持っているわけでもなく、演出論を誰かから教えてもらったわけでもない

「つまり、才能があったと言いたいわけですね」

それは違うな。興味が尽きないだけだと思うよ、だから演出家になれるか、20代の頃、ずっと悩み続けていたし

「何歳の頃、演出家になったんですか?」

29歳。思い切って借金して、演出した舞台で念願の演出家デビュー。ただただ必死に作ったけどね。今あの頃を思えば、がむしゃらだったけど楽しかったね」

前立腺ガンの宣告

実はこの春、前立腺ガンの宣告を受けた時、一瞬『死ぬかもしれない』と思ってね。それから、テレビで流れる自分の報道を客観的に観たとき、『あ、僕がやってきたことを少しでも伝えたい』と思うようになったんだ。またいつ再発するか、誰もわからないでしょ

「そんな縁起悪いこと言わないでくださいよ、前立腺ガンは、ガンの中でも治りやすいって聞きますよ。ちょっとオーバーかな。なんか変なスタートだ」

はは、そうだね、君より長生きするかもね。僕は強欲だから。ただ残された人生もあるし、もし少しでも興味あったら僕の『演出の道具』を誰かに使って欲しいし、面白がってくれると嬉しい。演出って裏の仕事だから、わかりづらいけど、いろいろなことに広がりを持って使えると思うんだ。

次の新たな表現、クリエイティブ、もしくはビジネスに役立てられると嬉しいんだけど。僕は一生、弟子をとるつもりはないから、誰かに伝えておきたいなって思ってて

「え? 弟子とるつもりないんですか。いやあ、誰もが聞いたからってできることじゃないけど……」

俺は、演劇はよく知らないし、演出家志望ではない。

特に落ちこぼれでもなく、真ん中よりちょっと上か下か、そんなやつ。ただ大学を卒業しても何をやっていいのかまだわからない。

「氷艶〜月光かりの如く」という事件

母のおせっかいでここにインターンとして来て、先月、たまたま亜門さんが手がけた「氷艶〜月光かりの如く」を見た。

とにかく驚いた。

こんないろんな人たちがしのぎを削ってパフォーマンスをしている姿に感動すら覚えた。演出というのが全く関心もなかったのに、どうやってこういう仕事を仕上げるのか、興味が湧いてきた。

こんな自分だが、可能なら特化した何かできる人になりたい、という漠然とした考えがある。俺でも「演出という道具」「世界的」になるそのモチベーションやクリエーションは手に入れられるのだろうか。

才能があったわけじゃない。なかったからこそ、その道具を作り上げてきたんだ

亜門さんは語るが、ますますわからないので、時間あるごとに聞いてみることにした。

たぶん、この話は、俺と同世代で、演出家志望の人だけではなく、クリエイター、イノベーター、演劇ファン、さらには既存のビジネスを改革したい若手のビジネスマンにとっても、とっておきの「道具」になるかもしれない。そう感じるようになった。

そうそう、政治とかのニュースで「演出された」という悪意のある言い方はするけど、亜門さんが言っているのはそれとは真逆のこと。だから政治家の方は読まないでくださいね。

師匠から「芸は見て盗め」と言われるが、「聞いて盗もう」と思う。ズルイけど、それが早いよね。

今まで亜門さんがあまり語らなかった、裏の出来事(キャスト、スタッフ、テクニカル面、イノベーション、マネジメント、マーケティングなどに関すること)を、斜めから見た俺なりに聞いていこうと思う。

今日から、亜門さんから聞いたことをnoteに書いていくので、ぜひフォローをお願いします。質問とかもできる限り答えつつ、少しずつ進めていきますが、まずは不定期です。

次回は、この7月末に終えた「氷艶〜月光かりの如く」から聞き出して、盗もうと思います。

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