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第165回:人との「縁」を大切にしたくなる物語(汐月詩:『妖しいご縁がありまして お狐さまと記憶の欠片』)
こんにちは、あみのです!
今回の本は、汐月詩さんのライト文芸作品『妖しいご縁がありまして』の第1巻(ことのは文庫)です。
この作品は、ことのは文庫の3周年フェアのラインナップからの1冊です。
最近気になっていた地域が舞台になっていたのもあったのですが、「和」を感じるカバーイラストや「失われた記憶を探す」というストーリーにも魅力を感じて選んでみました!
今作は不思議要素・コメディ要素も強いですが、「大切な人にまつわる後悔」が物語のカギを握っているところもあり、幅広い人が共感できそうな内容かと思います。
妖たちと一緒に、大切なものを見つける冒険をしてみませんか?
あらすじ
「決して手を離してはいけないよ」そう、言われていたのに――。
ある夏祭りの夜、祖母の言いつけを守らなかった八重子は、田舎町で過ごした数年間の記憶をなくしてしまう‥‥‥。
時は過ぎ、祖母の死をきっかけに再び田舎町で暮らすこととなった八重子はそこに突然現れた男に失礼な言葉をかけられる。
「おまえ、面白いものをなくしているな」二紫名と名乗るこの男、どうやら八重子のなくした記憶について何か知っているようで――!?
女子高生と白狐が織りなす記憶と宝探しの物語。
感想
祖母がどんな人だったのかも、あの頃仲良かった友達のことも、幼少期の夏祭りの日に記憶を失ってしまった八重子。
高校生になった八重子は数年ぶりに訪れた能登の町で、二紫名という白狐と出会います。
二紫名と一緒に記憶を取り戻すために必要な「道具」を探すことになった八重子ですが、道具探しをしながら彼女は次第に身近にある「出会い」への尊さを感じるようになります。
二紫名をはじめとする妖たち、幼なじみの小町と昴、能登の町で暮らす大人たち、そして家族。
中でも亡き祖母の本当の姿を知った八重子は、祖母に自分の素直な気持ちをしっかり伝えられなかったことを後悔します。
『後悔は尊い』
『ここから始めればいいんだ』
上記の二紫名の言葉は、今作を象徴する言葉ではないかと思います。
祖母のことでは後悔が多かった八重子ですが、一方で再会した幼なじみたちとの絆など今からでも充分に取り戻せることも多いのではないでしょうか。
家族や友達、職場の仲間。身近にいるからこそ、感謝の気持ちを日頃から忘れないでいたい。今作を読み終えて、私はそのようなことを強く感じました。
豊かな自然と懐かしさが混ざり合う能登の町の雰囲気も良く、ユニークなキャラクターたちも見ていて楽しい気持ちになれる作品でした。(特に烏天狗のクロウと「かふぇ・いいんだぁ」のてっちゃん、キャラ強すぎ)
今回の話は八重子の記憶にまつわるエピソードが中心でしたが、二紫名との恋愛要素もちらほらと見え、2巻はまた違った雰囲気が楽しめたりするのかな?と思いました。八重子と二紫名が過去に一度出会っていた…という展開はエモかったですね。
キャラクター同士の掛け合いが賑やかな物語であり、生きていくのに大切なことを教えてくれる物語でもあり、表紙に惹かれて読んで良かった1冊でした!
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