レトロな喫茶店好きにはたまらない小説を読みました。
喫茶店が舞台の小説が好きです。喫茶店が印象的に描かれている小説って、実際にそのお店にいるようなゆったり感を味わえる物語が多く、ハズレも少ないジャンルでもあるなと個人的には思っています。そんな喫茶店が出てくる小説で、また新たなお気に入りに出会えたので1冊紹介します。
今回紹介するのは、椰月美智子さんの『純喫茶パオーン』という作品です。タイトルの「純喫茶」の文字で既に美しいです(笑)。主人公の成長に軸を置いたヤングアダルト小説的要素が強い内容ではありますが、「居場所」としての喫茶店の描き方も印象的で、喫茶店で過ごす時間が好きな人には共感する箇所も多い作品かと思います。
『純喫茶パオーン』感想
物語の舞台は、主人公・来人の祖父母が経営する昔懐かしい喫茶店。物語は来人の小学生時代から始まり、エピソードを重ねていくごとに中学生、大学生と成長していく様子が描かれ、読者も主人公を見守れるホームドラマのような安心感のあるストーリーでした。
来人の成長の過程は、かつての自分とも重なって見えたところもあり、共感した部分もとても多かったです。中でも小学校を卒業して以来疎遠となってしまった親友との関係を巡るエピソードがあったのですが、私にも学校を卒業してからどのような距離感で接すればいいか、今でもわからない友達がたくさんいるなぁ…と読んでいて切ない気持ちになりました。
もちろん喫茶店が舞台の小説ならではの魅力もいっぱい詰まっていました。来人とその友人たちにとってパオーンは、いつもの居場所。マックとかスタバではなく、10代の居場所としてはちょっぴり渋い気もする昭和レトロな喫茶店に集まっては雑談をする来人たち、なかなかイケています。
クリームソーダやミルクセーキといった魅惑の喫茶店メニューも作中には出てきますが、それよりも今作は「居場所」としての喫茶店の描かれ方が強い作品かなと思いました。
来人は家族のお店というのもあってか、パオーンに対する思いが人一倍強く、祖父母が作り上げたメニューもだけど、身近な居場所としてパオーンを守っていきたいという彼の熱意を、様々な出来事を通してひしひしと感じられました。
私はおしゃれな今風のカフェやチェーン店で過ごす時間も好きですが、昔からその街で愛されているレトロな喫茶店に勝るものはないと思っています。(来人の祖父が、パオーンをカフェと呼んでほしくないと言っていたのもわかる気がします)現実を忘れて自分だけの時間を過ごせる喫茶店が、いつの時代もあり続けてほしいとより思えた素敵な小説でした!
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