見出し画像

第135回:面白い作品に「古さ」は関係ない(笹沢左保:招かざる客)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、笹沢左保ささざわさほ『招かざる客』(徳間文庫:トクマの特選!)という作品です。とても好きなイラストがカバーに起用されていたので、思わず購入してしまいました。

タイトルの「招かざる客」という言葉に隠された意味とは。作中で散らばった数々の罠をくぐり抜けた先で見えてくる事件の真相を知ると、タイトルに対する感じ方もかなり変わってくる作品ではないかと思います。

あらすじ

裏切り者を消せ!——組合を崩壊に追い込んだスパイとさらにその恋人に誤認された女性が相次いで殺され、事件は容疑者の事故死で幕を閉じる。納得の行かない結末に、倉田警部補は単独捜査に乗り出すが‥‥‥。アリバイ崩し、密室、暗号とミステリの醍醐味をぎっしり詰め込んだ、著者渾身のデビュー作。虚無と生きる悲しさに満ちたラストに魂が震える。

カバーより

感想

1960年に発表された著者のデビュー作。私が生まれるずっと前の作品ではありましたが、作品に込められた「面白い」という感情はいつの時代も変わらないことを教えてくれた1冊でした。

この作品は、事件の情報を載せた「第一部」と事件を第一部で書かれた情報から倉田警部補の視点で紐解いていく「第二部」で構成されています。

正直前半パートにあたる第一部がこの本の半分程度あり、似たような情報が何度か出てくるので、途中で挫折しそうになりました。でも前半の情報が謎解きで必要となってくるので、時間をかけてじっくり読みました。第一部を読み切っただけで達成感のある作品だと思います笑。

でも今作が本当に面白くなるのは第二部から。事件の情報がある程度集まったところで始まる第二部では、第一部で集まった情報をひっくり返す事実が明らかとされます。

倉田警部補によって暴かれる「ある人物」の素顔を知った途端、まったく別の物語のように見えてきました。長い長い第一部も、この壮大なトリックを成立させて読者を驚かせるためには欠かせないものだったんだなと思いました。

ここまで本格的なミステリー小説は久しぶりに読みましたが、昭和に書かれた作品でありながらどこか新鮮さもあり、何よりも学生時代にいろんなミステリー小説を読み漁っていた頃の興奮が蘇った1冊でした。

「トクマの特選!」シリーズでは他の笹沢左保作品や、有名作家の過去の傑作小説をおしゃれでかっこいいカバーイラストと共に楽しめるそうなので、これからも気になった作品があれば読んでいきたいと思います。本格ミステリーの面白さを再発見するレーベルにもなりそうですね。

いいなと思ったら応援しよう!

あみの
いつも記事など読んで頂きありがとうございます。日々励みとなっています。もっと面白いネタを収穫したいので、良かったらサポートもお願いします(^^)

この記事が参加している募集