好きでいる限り、「推し」はいつも心の中にいてくれる(朝依しると:『VTuberのエンディング、買い取ります。』)
朝依しるとさんのライトノベル作品『VTuberのエンディング、買い取ります。』(ファンタジア文庫)を読みました。
今作はVTuberのトラブルや、推し活の光と闇を描いた物語となっていました。VTuber界隈にはそれほど詳しくない私ですが、誰かを応援する熱い気持ちには共感する箇所も多く、思わず一気読みしてしまいました。
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主人公の業は、夢叶乃亜というVTuberに熱中していたものの、彼女が引退した後は乃亜の復活を願いつつ、他のVTuberの騒動を扱うブロガーとして活躍していました。
今作では、イラストレーターからのセクハラに苦しむ鏡モア(ミーナ)、配信での不謹慎な発言が問題視される彩小路ねいこ(彩音)、乃亜が「転生」した姿ではないかと噂される六翼なこる(菜子)の3人のエピソードが描かれました。
それぞれの選択でファンを裏切ってしまうのは確かだけど、3人のヒロインが業と共に現実で起きていることと向き合い、配信者としてだけでなく、人間としても成長していく物語に感動しました。業のVTuberを救うダークヒーローっぽさも爽快感があって良き。もっと彼の活躍が読みたくなります。
私は3つのエピソードの中でも、ねいこの物語が特に心に刺さりました。
不謹慎な発言によって引退に追い込まれたねいこでしたが、それでも彼女を応援してくれる「猫公務員」はたくさんいる。ファンレター越しに伝わるファンたちの熱い言葉の数々には、私も涙しそうになりました。こんなにもねいこがみんなから愛されていたという現実に。
ねいこを応援する温かな言葉たち、そしてラストの今までの感謝が込められた笑顔のねいこの挿絵に優しい気持ちになった最高のエピソードでした。
また、なこるの騒動で炙り出された推し活における光と闇の描き方も印象深かったです。なこるのエピソードでは、公式では終わった存在だとしても、ファンの心の中にはいつまでも推しはいてくれることを証明してくれました。
なこfamを悩ませている「死神」とのぶつかり合いで乃亜を推す理由を見失ってしまった業に、ミーナが送った全力のメッセージには私も凄く熱い気持ちになりました。
VTuberとしての「夢叶乃亜」はもういないけど、今でも彼女を大切にしている業たちの思いはきっとどこかにいるであろう乃亜にも届いていると思います。今作はVTuberを推す人々の温かさにも満ちていた物語でした。
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はじめはTivさんの描く作中に登場するVTuberたちのキャラデザに惹かれて読みましたが、想像以上に共感や感動で溢れていた作品でした。
今作では「目に見える言葉」というものが、どれほど人々の心を動かしているのかがよく感じられました。私も好きなクリエイターさんたちを言葉で応援することをこれからも大切にしていきたいです。
これから業たちは、VTuberのどのような「人生の選択」と出会っていくのでしょうか。また、乃亜の引退から今回のエピソードに至るまでに業はどんなVTuberの話題をブログで書いてきたのかも掘り下げたら、もっと物語が盛り上がりそうですね。
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