「透きとおる」小説を読んでみたよ
新潮文庫nexから斬新で面白そうなミステリー小説が出たらしい。その作品とは、杉井光さんの『世界でいちばん透きとおった物語』。あらすじからすると一見よくあるミステリー小説っぽいが…?
実はこの小説には「紙の本」でしか楽しめないある仕掛けがあるそう。なぜ電子版の販売をなしにするほど今作は紙の本にこだわるのか。そして「透きとおる」とは一体何を意味しているのか。それらをぜひ自分の目で確かめたくて読んでみました。
感想
小説家・宮内彰吾が遺した『世界でいちばん透きとおった物語』という未発表作。宮内彰吾の息子で今作の主人公の燈真は、生前の父とつながりがあった人たちを辿りながら未発表作の正体を探っていきます。ミステリーとしてもシンプルに読み応えのある内容でした。
「紙の本は基本的に読めないけど、電子書籍でなら読める」、「昔読んだミステリー小説の「読者への挑戦」が楽しめなかった」など、燈真と本にまつわるエピソードには違和感のあるものが多かったです。
だけどこの違和感が、今作最大の特徴である「紙の本」ならではのギミックへとつながっていきます。中でも終盤のあるページに隠された仕掛けに気付いた時は思わず声が出てしまいました。文章から今まで見えていなかったものが見えてくる瞬間はまさに快感でした。
宮内彰吾が『世界でいちばん透きとおった物語』を書いた理由を知った時、そして今作が「透きとおる」瞬間を目撃した時。今作では2つの感動を味わうことができました。電子書籍にもメリットはたくさんありますが、今作を読むとまだまだ紙の本にも可能性があることを感じさせられます。
杉井光さんといえば、以前読んだ『楽園ノイズ』という作品でもQRコードを使った個性的な仕掛けがあったことを思い出し、きっと読者へのサプライズが好きな作家さんなんだろうな~と改めて思いました。
紙の本派はもちろん、普段は電子書籍派っていう人にもぜひ試してみてほしい1冊です。読み終えたらきっと誰かに今作でしか味わえない驚きと感動を伝えたくなること間違いなしです。
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