メタモルフォーゼするオフィスレディ
毎朝同じように、
駅を降りると地下街を通ってオフィスビルへと向かう。
更衣室にて、
シャツと紺ベストと紺スカートを着用し、
THEオフィスレディへと化する。
更衣室に入ってきた同僚に「おはようございます」と挨拶をし、互いに会話も程々にして、着替える。
この職場に来て、もう1年以上になるけど、
結構ドライな人が多くて、助かっている。
飲み会も多くない。
前の営業職をしていた頃のウェイ系の職場は、
必ず月1で事業部ごとに、
“決起会”という名の飲み会に半ば強制参加させられていたので、大違いである。
またそれとは別に、営業成績が良かった時は、
“達成会”という名の社長同席の接待もあった。
今の環境はプライベートと完全に線引きできることが有り難い。
昼休憩時も基本的に各々仕切られたデスクで食事できるので、好きなことができる。
前の会社は、机に仕切りがなく、
特定の座席が決まっておらずフリーアドレスだった。
昼休みになるとある程度何人かで近くに集まって、一緒に食事する流れになっていたので、
どうしても同僚と会話しながら過ごさなければならなかった。
もちろん同僚と話すのが楽しいし、学べることもあったし、仕事の相談に乗ってもらったりもしたのだが、友達ではなくあくまで仕事の同僚なので、
どうしても気が休まらなかった。
仕事モードを解除できなかった。
1人で食事していると上司に無駄に心配されるので、
誰かと食事するしかなかったのだが、
仕事中の昼休みくらい自分だけの1人時間を楽しみたかった私にとっては結構苦痛だった。
好きな音楽をイヤホンで聞けない休憩時間というのが、自分にとってなかなかのストレスだと感じる。
業務時間はクライアントからのお叱りのメールや、
お申し出に対する電話などを一息つく暇もない状態で対応する。
無理難題なマルチタスクを押し付けられ、
正確かつ、スピードも求められ、
挙句の果てにミスをして、上司からの静かな怒り。
BtoBのサービス業なので、クライアントのクライアントから怒りのクレームがあったりと、
クライアントの損害といつも隣合わせの状態は、
本当に健康に悪い!
疲れきった自分をリセットするには、
休憩時間に聴覚を仕事の為に働かせたくない。
イヤホンでは椎名林檎が「明け暮れたいよ、いますぐ 天職はなに?」と歌い続けている。
そう言う意味でも仕事中と、休憩中と、勤務時間外において、それぞれの「自分」が上手く切り替わってくれることで、
精神衛生を保てているような気がする。
私の部署では特にだけど、
定時になると、早く帰る人が多いのも、
周りを見ながら退勤のタイミングを伺っていた前職とは違い、本当に助かる。
紺の制服に着替えた時だけ、
社会人としての自分にメタモルフォーゼして、
退勤後制服を脱いだ後は、また違う「私」になっているような感覚である。
大きな成果は求めない。
どうもこうも平穏に過ごしたいだけの自分である。