営みの街が暮れても、なお営み続ける
実家を出てから、自分で料理をし始めて7年目になる。
「営み」といえば生活や暮らしのこと全般を指すのだろうとは思うけど、
その中でもやっぱり世間一般「食」は営みの中においても、大きなウェイトを占めている。
基本的に毎日夜ご飯と職場に持って行くお弁当は作るようにしている。
週末の土日のどちらかの午前中に、
ある程度のまとめ買いをしておいて、
足りないものは平日に仕事終わりスーパーに寄って買い足す、というような流れが確立している。
土日の買い出しは、3軒か4軒ほど恋人と一緒にまわる。
私はいつもこれを“スーパーデート”と呼んでいる。
ちゃんと「スーパーデートに行こう」と呼びかける。
まず向かうべくは徒歩10分弱の場所にある近所のお肉屋さん。
常にお肉が安く新鮮で、卵が安い。
あとショーケースに入った手作りソーセージが、
安くて、良いバルに出てくるくらいのクオリティのもので、最近はこれ以外買えなくなってしまった。
国産鶏胸肉は100グラム48円か58円で、国産ささみ肉も大体いつも100グラム68円のことが多い。
ショーケースに並んだ真っ赤な牛肉は、
「赤色の中の赤」という具合にビビッドな面持ちで、堂々としている。
値段の札を見て、ただただ「高いな」とは言わず、次のお祝い事がいつだったかと考えながら、
「また良いご飯の時に買おうね」と彼氏と目を見合わせる。
その後はもう少し先にあるドラッグストアで、
日用品と一緒に納豆や牛乳などの安い物を買う。
ドラッグストアは意外と、
スーパーよりも要冷蔵食品やパンが安かったりすることが多いので、日用品だけでなく食料品も侮れない。
3軒目はドラッグストアの向かいにある、
特に魚介類が新鮮で種類豊富なスーパーへ。
ここまで来ると家から徒歩15分弱にはなるのだが、ちょうど良い散歩になる距離で、
魚介類の品揃えも強いので良しとする。
「ポイント〇倍デー」の日に行くと、ちゃんと人が多くて、
当たり前だけどみんなそれぞれ工夫してちゃんと買い物してるんだなぁと思う。
またスーパーはカルチャーの宝庫であり、
季節の移り変わりを感じられる施設であることもすごく良い。
食材の相場価格と照らし合わせながら吟味する時間や、
キュウリの真っ直ぐ伸びていてイボイボが鋭く新鮮な緑色のものを選んでいる時や
春キャベツ、という名前を見た時の高揚感や、
新しい商品のパッケージデザインが良くて、ジャケ買いしてしまう時や、
PB商品で、OEMの製造元会社を確認し、「へー」となる瞬間など、
頭をフル回転し、感情が動いている。
ひとつの施設だけで、こんなにも体験ができるのはとてもコスパが良い。
買い物が終わると、その後家路に向かうのだが、
道中に立ち並ぶお店を見ていると、
日々色んな発見があるとともに、
出会う人達のそれぞれの営みを少し垣間見ることができ、想像するのが楽しい。
最近は道中にチョコザップができた。
新しくて綺麗なインドカレー屋さんができて、
お店の前でチラシを配っている笑顔のネパールかインド人のお兄さん。
洋食屋さんから香ばしいオリーブオイルでニンニクを炒めたような香り。
お母さんの自転車の後を、縦1列となって、
しっかり付いていく小さなコマなし自転車に乗った男の子。
美容院から出てきた、気合いが入ったキメキメファッションの高校生くらいの男の子は、
これから電車に乗ってどこかへ出かけるのだろうか。
今私が住む町は、いわゆる生活しやすい町である。
生活しやすい、というのは、
単に「節約できる」や、「近所で完結できて便利」というだけではない。
町にいるだけで身近で色々な生活に触れて、
色んなジャンルの事柄について思いを巡らせられることができる心理的な充実に関わることでもあると思う。
仕事が終わって自宅に帰ると、
平野紗季子さんのpodcasts「味な副音声〜voice of food」を聞きながら、料理する。
味なフレンズ達の幸福に満ちた声を聞きながら作るご飯は、
1人で静かに作るご飯よりも美味しくなる気がしている。
週末に音楽フェスの森道市場に行くために愛知県へ行った。
その際に立ち寄った名古屋のスーパーで名古屋味噌と味噌煮込みうどんの素を買った。
旅行に行けば、お土産で自炊の楽しみが増えるのも、旅のエピローグをずっと辿っているようで心地よい。
おかげでお味噌以外にも我が家には、みかん塩やすだち塩など10種類弱の使い切れないご当地塩がある。
そうこうしているうちに恋人が帰ってきて、一緒にご飯を食べる。
一人暮らしをしていたときよりも自炊のクオリティが格段と向上した。
それも「美味しい」のリアクションが大きめな恋人のおかげである。
ネトフリで配信されている
「美味しんぼ」を見ながら食べる。
オムライスを作った日はオムレツ回、
焼きそばを作った日は焼きそば回という風に、
食べる物に合わせて見ると、なんだか良かった。
今日は何を作ろうかと仕事の合間にも、
ついつい考えてしまう日々の私である。