「慣れ」からの脱却が鍵!?サービスのプロが見落としがちな、意外な盲点とは?〜あめつちメルマガ【vol.17】
前回の記事では、日常の喧騒を離れてゆったりと寛げる宿という特別な空間で、「五感」を通じてどのような体験ができるのか?、シーンごとにご紹介いたしました。
ただ、こちらの内容について代表の霜竹と議論したところ…
「結構、当たり前のことを伝える内容になってしまったのでは?もっと、あめつち流の情報の掘り下げ方があるはず」という反省が出てきました^^;
よく考えてみると、おもてなしのプロである宿の方々であれば容易に想像できるであろうことばかりで、新しい視点や気づきをご提供できるような内容ではなかったかもしれないと感じております。
というわけで、改めて仕切り直し!ということで、さらに深く深く、掘り下げてお届けさせていただきます。
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旅に出ると人は開放的な気持ちになって普段は発動していない感覚がスイッチオンになり、五感が非常に研ぎ澄まされた”素“の状態で様々な体験を深く味わうことができる、とお伝えしました。
さらに宿泊先は、数ある選択肢の中から「ここに泊まってみたい!」と旅行者が主体的に選ぶケースが近年は増加傾向にあるため、お客様はかなりの期待感をもって宿を訪れるであろうことが想像されます。
旅行者ニーズが、「観光地ありき」から「宿ありきで選ぶ」スタイルにシフト傾向にあることは、以前、別の記事でもお伝えしました。
では、このように宿への期待感が高まる中で、非日常の特別な時間を楽しみたいと、その宿ならではの体験やサービスを求めているお客様の目に、貴宿の姿はどう映っているでしょうか?
このような問いに対して、
等、自信をもってお答えになるお宿様もいらっしゃるかと思います。
また、「この点だけは譲れない」という宿の理念を大切に、自館のおもてなしに反映していこうと日々努力されているところも多いでしょう。
いずれの場合も、おもてなしの質を追求されているからこそで、素晴らしいことだと思います。
ただ一方で、宿側からではなくお客様側から見た場合とでは、館内の見え方が、全く違ったものになっている可能性もあるかもしれません。
スタッフが見えない部分、気づかない点を、お客様の方がむしろ敏感にキャッチしていて、冷静に判断されているケースもあるのではないか?
と、私たちは考えています。
大前提として、クオリティの高いサービスや記憶に残るおもてなしというのは、宿が提供したいこととお客様の求めていることが限りなく一致した時に実現するものであるはずです。
しかし、双方の認識が微妙にズレてしまうことは十分あり得るのでは?と思います。
ではなぜ、そのようなことが起こってしまうのでしょうか?
人はいつも身を置いている環境の日常風景に慣れてくると、外の目から映る姿が適切に捉えきれなってしまう傾向があるからです。
これは宿泊業界に限らず、「ずっと同じ組織、環境にいると、外から見た自分たちの姿が見えづらくなる」ことは誰にでもあることだからです。
事実、同じ職場で働く人同士は自館に対する認識や評価が似通ってしまうことは研究結果でも証明されています。
つまり、慣れ親しんだ環境にずっと居続けると、客観的な視点やクリアな感性をもって物事を捉えることが難しくなってくるのです。
もちろん「慣れ」は生きていくため、生存上で必要で、忙しい日々の中でルーティンを効率良くこなすためには絶対に欠かせないモードではあります。
ただその反面、慣れが過ぎると、物事を新しい視点で捉えようとする意識制御的な、いわゆる判断脳が働かなくなってしまってしまうといったデメリットもあると思います。
そしてこの「慣れ」は、およそ9割とも言われる無意識の領域において、自動的に行われています。
ここで「慣れ」から生じる出来事で館内で起こりうるシーンの具体例について、実際にあった2つのケースを例に挙げてみたいと思います。
いかがでしょうか?
Case1は、香りのおもてなしをしたいと、お客様の記憶に残るサービスを提供してゆったりと寛いでいただきたいという一心で、あるお宿が導入されたサービスです。
しかしお客様にとっては、客室に元々残っている「臭い」が気になり純粋にアロマ本来の香りを楽しめないという、残念なことが起こっていました。
良い香りは「匂い」になりますが、日常の生活臭や、知らず知らずのうちにお部屋に染みついたニオイは、気になる「臭い」となってしまいます。
嗅覚は脳にダイレクトに直結するため、五感の中でも人が最も敏感に反応しやすいもの代表格です。
しかし一方では、日常の臭いには「慣れてしまう」性質もあると思うので、なかなか気づきにくいのですね。
Case2の場合も、お客様にとって心地よい空間で過ごしていただきたいという思いから始まっています。
そこで、宿は美的にも洗練されたモダンデザインの空間をイメージして依頼されたようですが、結果的に「使いにくい」というお客様からのお声が増えてしまったそう…。
これは、デザイン面を優先して考えて施工会社に一任してしまったために起ったケースと言えるでしょう。
もし着工前に、本当のお客様視点で考え抜かれていたとしたら、デザイン面だけでなく、同時に「使い勝手」も両立した形の、適切な依頼ができていたのではないでしょうか。
これらはあくまでも一例となりますが、いつも慣れ親しんだ環境に身を置いていると、ご紹介した2つのケースのように身内では客観的に判断しがたい、「盲点」が、どうしても出てきてしまうものだと思います。
だからこそ、普段から宿側の視点だけでなく、お客様から見た宿のありのままの姿を知るために、お客様からのお声をフラットに集められるような顧客志向型のチームであり続けることを意識したり、信頼できるプロに相談するなどして、常に客観的な視点を外から取り入れる努力をすることが大事なではないでしょうか。
これは前回の記事で触れたように、宿を五感を通じた極上の体験ができる空間としてプロデュースされる上でも、絶対に欠かせない視点だと思います。
お客様の五感を刺激するようなサービスを提供するためには、まずは
「自身と組織が常にお客様の方向を向いていること」
が非常に重要です。
慣れ親しんだ環境を客観的かつ、ありのままに見つめることは勇気のいることかもしれませんが、この「慣れ」からの脱却こそ、五感を刺激するような顧客体験をつくるための第一歩だと思います。
ぜひ、顧客目線を反映させてよりクオリティの高いサービスに繋げるため、「慣れと戦う」気持ちで、改革にチャレンジしていただきたいと思います。
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