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Photo by
chari_lele
短編小説『配信』
「まだまだいけるかな?」
高橋が笑う。スマホのカメラが僕たちを映し、コメントが次々と流れていく。
『まだやってんのかw』
『はやく落ちろ』
『通報しました』
ただの配信だった。ただの悪ふざけだと思われていた。
最初は小石を落とした。次に木の枝。
「これ、いける?」
高橋が自分のリュックを橋の欄干に乗せた。
「いけるんじゃね?」
コメントが盛り上がる。
『おいおいwww』
『やっちまえ』
『草』
リュックが落ちる。バシャンッと音が響く。中の教科書が流れていく。高橋が笑う。
「もうどうでもいいや、マジ」
僕は笑えなかった。
「次、何やる?」
風が吹いた。冷たい風だった。
コメント欄に新しい文字が流れる。
『期待させんなよ』
高橋がスマホを持つ手を止める。僕も、動けなかった。
コメントが続く。
『え、しょぼw』
『おもんな。所詮高校生』
『もう飽きた』
高橋がスマホを持ったまま、黙る。僕は何かを言おうとした。
そのとき、高橋が柵に手をかけた。
スマホを道に置き、僕らが画面に映るように固定した。
僕は、声をかけられなかった。
配信のコメントが流れ続ける。
『まさかwww』
『やるなら早くしろよ』
『烏滸がましい。いらない』
高橋が笑った。
僕たちは、落ちた