中流家庭が子どもを私立中に入れると色々大変である
子どもとは、かつての私のことである。
中流家庭出身、公立小学校時代の習い事は塾のみ。
趣味と言えるものはゲームと漫画。
中学受験しない友達と公園で遊ぶのが日課だった。
中学受験で進んだ私立中学校は、別に進学校だったり特別お金持ちが受験するような学校ではなかった。
だからこそ選んだ学校だった。
けれど、それでも公立小学校とは世界が違った。
特に付属小学校からエスカレーター式に入学してくる子どもたちは明らかにお金持ちの子どもだった。
当たり前か。
お金持ちのイメージと言えばスネ夫だけど、リアルにスネ夫タイプな子もいれば出来杉くんみたいなタイプの子もいた。
どの子も、中学から入った子とはなんとなく違う雰囲気を漂わせていたし、それは周りも本人もよく自覚していたと思う。
それで、中学に入って何より驚愕したのは周りの子たちの習い事経験の多さである。
小学校から持ち上がりの子はもちろん、中学校からの子も。
ピアノ、モダンバレエ(って何?)、バイオリン、フルート、英会話、クラリネット…
習い事の発表会、ホームパーティ、大会、コンサートや舞台の鑑賞…
英会話とピアノはまだしも他の習い事はどうやったら出会うのか、どういうきっかけで習い始めるのか謎である。
ト音記号の音符さえ読めなかったので、音楽の授業でも部活でも全くついていけず、かなり苦労した。
絶対音感がある子がいたり、コンクールで入賞している子がいたり。
壊れかけの光るキーボードで片手でメロディを弾けるのを誇りに思っていた心は崩れ去ってしまった。
また、私は中学生になって初めて英語に触れた。
最初の授業で、既に差がついている。
まだ何も習っていないのに先生が生徒をバンバン指名して身の回りのもの(ハサミとか紙とか)の名前を英語で答えさせる。
当てられた私はただ一人当然答えられず、分かりません、と言うしかなかった。
クラス中に笑われた。
何でみんな知ってるんだよ…。
(後に何とか学力自体は逆転したが、この時の「えっ!?」っていう気持ちは今でも鮮明に覚えている。)
遊びの面でも公立小学校は(メンバーに恵まれていたんだと思うけど)実に平和だった。
お互いをあだ名で呼び合い、近所の子と公園で木登りや鬼ごっこやゲーム。
たまにみんなで近場のスーパーに出かけてねりけしとかを買う。
そんな毎日だった。
しかし中学に入ってすぐ、ボス的な子(後に標的を退学させるほどの強烈ないじめっ子になる)に
「小学校でなんて呼ばれてたの?」と問われて馬鹿正直にあだ名を答えたら爆笑され、散々ネタにされた。
超ダサいあだ名だったから。
「面白がる」ではなく「馬鹿にする」笑い方に初めて出会って、物凄く衝撃を受けた。
私の反応が薄かった(笑われたことにビックリしすぎてなにも言えなかった)のが面白くなかったのか、
逆にいじめのターゲットにならなかったのは幸いだった。
ブランド品のお財布や小物を持っている子も多くて、全く話についていかれなかった。
公立小学校ではただ座って話を聞いていられればそれで優等生扱いだったのに。
あんなに楽しかったのに。
カルチャーショックに呆然とした。
中学の最初の半年ほどは小学校に戻りたい、公立校に行けばよかった、悲しい、ついていけない、と泣いていた。
あだ名を否定されたことで、アイデンティティを失ったような気持ちだった。(もっと適当に答えておけばよかったのにと思う)
そしてスタート地点から成績はのび太の部類。
恵まれた環境だったのに。
中流家庭なのに、頑張って通学させてくれていたのに。
でも、それがその時の自分には分からなかった。
受験をしない選択肢は与えられなかったけど、公立校に入れてくれればよかったとは今は思っていない。
公立校は公立校で別の懸念があっただろう。
だからこれでよかったのだと思っている。
けれど、同じく中流家庭である我が家が頑張って子どもに中学受験をさせるかと問われるとかなり躊躇う。
悲しい?経験を踏まえて提供できる学習や体験、習い事は体に鞭を打ってさせているつもりだけど、上流のそれとは比べるべくもない。
本人の意思を抑えてまではやらせていないので、中途半端でもある。
体験格差という言葉を聞くようになった。
体験の格差は今に始まったことではない。
ずっとあったことだ。
上を見てしまえばキリがない。
知らない方がいい世界もあるというか、上を見て劣等感を持ってしまう子なら上の世界に無理に入れることもないんじゃないかと思う。
上を見て頑張れる子と、下を見てより頑張れる子とどちらもいる。
学校の環境とか進学実績とか校風とかそういうところだけじゃなくて、
親の経済力とか本人の資質性格をよく見極めることが重要だと思った。
住む世界が違う、ということは普通にある。
公立中に行かせて荒れてしまうのも不安だが、私立中が荒れていないわけでもない。
行きたい場所、やりたい事、習いたいものには時間もお金も惜しまないから、公立中で何とか頑張ってくれないかなぁ、と思ってしまう駄目な親である。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?