読んだものメモ
最近読んだ本について簡単にメモ。
『空をゆく巨人』川内 有緒
アパートメントのクラウドファンディングのリターンに協力して下さった宮本さんが紹介して下さった本。(宮本さんからの贈りもの、地元いわきをご紹介して下さるというものだった)蔡國強といわきの方々との繋がり、いわき回廊美術館の成り立ちについて書かれている。現在noteで無料公開をされている。
以前、蔡國強のドキュメンタリー映画『Sky Ladder』を見たことがあってその時に何かがひっかかっていた芸術家だった。
作品や彼の名前の取り上げられ方と、画面を通じて見る彼自身との間になにか微妙な隙間があるような気がして、私が感じているそれは一体なんなんだろうな?と気になっていた。
彼の作品を見られる機会があったら行ってみよう、作品に触れていくうちにその何かが判明するかも知れない、くらいの感覚で放っておいたのだが、今回『空をゆく巨人』を読んでみてそこに小さなはしごがかけられたように感じた。
ひとりの人間として関わってゆくことになる「ひと」と、作品が届く、というかさらされる先である「ひとびと」を、どういうふうに手繰り寄せるのか、というようなこと…まだやっぱりはっきりと掴めていない。
いわきは私にとって元々縁のない土地であったが、アパートメントを一緒に立ち上げてくれた陽恵の町であったから、時々心を寄せるようなことをするようになった場所だ。
回廊美術館はいつか行ってみたいと思っていたけれど、この本を読めたことで、ますますその気持が強くなった。
『十五の夏』佐藤 優
1975年に15歳の少年がひとりで社会主義国を旅したときの記録。
著者が特別な部分もあるとは思うけれど、40年前の15歳はこんなに成熟していたのかということに驚く。高校一年の頃といえば私なんてまだ8割くらいは動物のままで、半ズボン履いてでんぐり返しとかしていた(本当)。学校の水泳大会で頑張りすぎて溺れたりしてた(本当)。
…それはともかく、今よりももっと東西の分裂が厳しかった時期に自らの目で東側の国を見、肌で社会主義を感じ、その経験を鋭くもニュートラルな視線で描いている。
少年らしい無邪気さというか素直さが垣間見える部分があったりして時々微笑んでしまうが、この行動力や自ら考えようとする意思には、感嘆するばかりだった。
『A3』森 達也
オウム真理教教祖であった麻原彰晃の裁判への疑問に迫ったルポ。
まだしっかりと感想を書くことができないのだけれど、非常に考えさせられた。
麻原氏の裁判を傍聴し、そこで感じた疑惑がまずは著者を取材に駆り立てるきっかけとなっている。
その疑惑が真相にどこまで近いのかを私は何とも判断することができない(自分の目で見て、感じていないからという理由において)、つまり、このルポの入り口であり全体を踏襲している著者の直感や疑問については何とも意見(判断?)することができない。(しかし著書の中に出てくる「事実」から、著者が疑惑を抱くのは当然のことのように感じたし、本全体を通して著者の感覚に信頼がおけるような気がしている。)
が、著者が感じている社会の偏向についての記述には頷ける部分が多かった。
私はそれが「オウム事件後」から始まったものだったという意識はなかったが、震災後7年が経った現在から思い返せば、9.11のあたりから徐々に姿をあらわにしていった世界や日本を覆うベールのような空気のようなものの異質さの一端を、言葉にされ、突きつけられたように感じる部分が多くあった。
自分がこの何年間かの世界をいかに見てきたのか、何を考えてきたのかを鋭く問われるような作品だった。
でもまだ消化できない。
noteで全文公開されているのでぜひ。
『微生物の世界』現代思想
これはとてもおもしろかった。
今発酵にとても興味があって、折しもアパートメントに発酵のことを書いて下さる方がいらしたり(カヲリグサさん)(そして、「お直しカフェ」のはしもとさんのレビューも面白かった。お直しと発酵は何か共通するものがあるなとレビューをお願いしたのだけれど)、やはり気になっているドミニク・チェンさんも同時期に発酵に興味が湧いたと対談や研究を進められたりしていて、なんだかとってもこれは発酵的なことだな、と思った。
まとめたりできない感じなのでまたいずれちょこちょここの本から思い出した時に引くかも。
他にも
『ヤクザと原発』鈴木 智彦
『夏の闇』開高 健
『宮本常一が見た日本』佐野 眞一
…を読んだ、どれもとてもおもしろかった。(疲れたのでまた今度書くかも、それか埋めてたらどんぐりから芽が出て林になっちゃうかも)
特に宮本常一に関してはもっと突き詰めて考えてみたいし、読みたい著書がまだある。
…結局、消化できていなかったり考え中だったりするものばっかり。
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