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行政の人たちこそブランドマネジメントを

民間企業に勤めるビジネスパーソンはもちろんですが、私は行政の職員こそブランドマネジメントを学ぶべき、意識すべき、実践すべきだと考えています。そのココロは? 今回はそんなお話をします。
(ちなみにこの記事は、岐阜県のダム際(バナー画像のところ)で綴ってアップしました。 #ダム際ワーキング の成果です)

1.行政がらみの「残念な」エピソード

私の知人の身に起こった、行政がらみの残念な出来事を3つ共有します。

まずは、ある地方都市の企業の経営者(社長)が遭遇したエピソードから。

事業継承後、漏れていたある届出をしたら、反省文がないということで担当が受理してくれず、2度目の出直し。提出に市役所まで呼び出されただけで、既に相当のペナルティなのに、さらに出直してこんな形式的な文面添付するコトで、誰がハッピーになるんだろう…(怒)

続いて、これまたある地方都市の住民(個人)のエピソード。

転居に伴い、諸々の手続きをしに市役所に。市役所の異なる部署に、3つも4つも同じような書類に、同じことを手書きで提出させられた。そっちで連携して処理してくれないですかね? 中には、「転居前の地域の役所から書類を取得してくれ」のようなものも。役所同士で連携して欲しい(同業者でしょ)。いちいち本人を介させて出頭させるのなんなの? なんのためのIT?なんのためのマイナンバー? めんどくさくて転居とりやめにしようかと思った。

最後に、企業に勤める担当者がある地方都市の県庁で体験したエピソードを。

県が関係人口創出のために「ワーケーション」に力を入れていれている。ワーケーションの提案をしようとしたら、7部署もハシゴする羽目に。すべての部署と個別に合意形成しないと話が進まないらしい。
この県、ほんとうにワーケーション盛り上げる気あるの?

2.間接業務は地域のファンを遠ざける

いずれも、事務作業や調整業務などのいわゆる間接業務(直接価値を生み出さない仕事やタスク)が価値創造のためのHPとMP(体力と気力)と相手の時間を奪っているゆゆしき事例です。

私は、間接業務を悪く言うつもりは毛頭ありません

間接業務は必要ですし、誰かがやらなければ世の中は回りません。

ただ、もはや役割を終えた間接業務、仕事のための仕事のようないわゆる「仕事ごっこ」「ブルシットジョブ」ITでスリム化または代替できる間接業務を温存し続けたり、よもやそのためのコストを相手(地域の経営者、住民、地域外の関係者など)に転嫁するのは不健全です。

「仕事ごっこ」「ブルシットジョブ」については、以下の書籍も参考になさってください。

▼書籍『仕事ごっこ~その“あたりまえ”,いまどき必要ですか?』

無駄な間接業務の多い組織や地域は、その組織や地域と関わり続けたい人/新たに関わり続けたい人を悪気なく遠ざけます

すなわち、関係人口を減らすことになります

当然ですよね。だって、めんどくさいんだもの

日本全国、数多の自治体が「関係人口増」を謡ってさまざまな施策を打っています
どんなに知事や市区町村長が旗を振っても、産業課や地域創生課や観光課の担当者が移住・多拠点居住・企業誘致・創業支援・ワーケーションなどの施策を頑張っても、考え方が古くて視野狭窄な部局や担当者の行動一つですべて台無し

どんなにキレイごとを言われても、

「この地域では起業したくない」
「この地域には越して来たくない」

「だったら、事務手続きがラクな他の地域に移転しよう」
「間接業務の少ない都市で新しいコトを始めよう」

こうなって当然です。

これが間接業務が地域のファンを遠ざける(つまり関係人口を減らす)構図です。

事務作業や行政手続きのような間接業務の多くは、対価が支払われません

それを仕事とする行政職員の方々にはその時間給与が支払われますが、相手(住民や経営者など)にとってはタダ働きです。

住民がその行政手続きのために有給休暇をとって、経営者が忙しい中貴重な時間を割いてわざわざ役所に出向いているのです。交通費も自腹。

これ、ものすごく不健康な構造ではないですか? 「働き方改革」にも「DX」にも、そして最近はやりの「SDGs」や「well-being(ウェルビーイング)」にも反していませんか?

え、担当部局が違うですって? そういうタテ割りなこと言っているから、地域が活性化しないんです。過疎るんです(過疎ってしまえ)!

最近では、「書かない窓口」のような新たな取り組みも地方都市発で始まっています。こういう取り組みは素晴らしいですね。

3.間接業務をなくすことのできる行政担当者は価値が高い

そもそもその間接業務の、ひいては行政の本来価値とはなんでしょう?

関係人口を増やし(あるいは維持)つつ、その地域で暮らす人、事業を営む人、その地域にかかわる他地域の人たちが、気持ちよく生活や経済活動をおくることができるような環境を整えることではないですか?

決して、その間接業務や行政手続きを温存することや、相手に強いることではないはずです。

業務の目的や自組織の期待役割を見据え、ときにやり方をアップデートしながら本来価値を創出する。

また、本来優秀な公務員の皆さんが、事務作業などの間接業務やブルシットジョブで疲弊するのも不健全です。

それよりも、フィールドに出て住民と対話したり、他地域に出ていって外の取り組みを知ったり(越境学習)、地域内外の人たちとディスカッションして新たな試みをトライ&エラーする。

その経験を通じて、ビジネスパーソンとしても成長しますし、仕事や地域に対する愛着(すなわちエンゲージメント)も間違いなく高まるでしょう。

行政職員の皆さんには、地域のファシリテータ、もっといえばファシリーダー(ファシリテータ+リーダー)として活躍していただきたい。そのほうが行政職員の皆さんにとっても住民や関係者にとっても幸せではないでしょうか。地域の魅力も健全に向上し、地域のファンが増えます。

すなわち、地域のブランド価値(=ファンを創るチカラ)が向上します。

という訳で、間接業務をなくすことのできる(あるいは改善できる)、間接業務担当者の価値は間違いなく高いです。どこに行っても通用する、Employability(エンプロイアビリティ)の高い人材になります。

▼ファシリーダーの教科書『話が進む仕切り方』

4.越境をしよう

行政でも先進的な取り組みをしている人たちは、例外なく「外の風」に触れています。つまり、「越境」しています。

他の地域や他の業種の取り組みに触れている人だったり、他地域や民間企業を経験した人だったり。

役所やオフィスに籠り、同じ顔ぶれで、同じ仕事だけをしている人は悪気なく意識が内向きになりがちです。仕事の目的を見失いがちになります。そして、その間接業務を自己目的化させるようになる。うまくないですね。

これからの時代、「越境学習」「越境体験」を行政にも取り入れていく必要があると考えます。

越境については、以下の新刊が参考になると思います。

▼『越境学習入門~組織を強くする「冒険人材」の育て方』
石山恒貴先生と伊達洋駆さんの共著です

▼『新時代を生き抜く越境思考~組織、肩書、場所、時間から自由になって成長する

両書籍の著者の対談(オンライントークライブ)イベントもあります。

行政の皆さんこそ、越境を取り入れて魅力的な地域を創っていって欲しいと願っています。

5.まとめ

まとめます。

・行政組織/職員こそブランドマネジメントが必要
(ブランドマネジメントは広報や経営企画だけがやればいいものではない!)
間接業務のスリム化業務改善とブランドマネジメントは表裏一体
・間接業務のスリム化や業務改善が、行政組織そのものと行政職員本人たちの本来価値エンゲージメントEmployabilityを高める
・ひいては、地域のファン創出、すなわち関係人口増に寄与する

とにもかくにも、立体的なブランドマネジメント教育を行政は(も)職員の皆さんに実施して欲しいと願います。

そうでないと、どんなに地方創生や関係人口増に汗をかいてもすべて台無し、水の泡になりますし、行政職員そのものの職種の価値も上がらないですから。

ちなみに私は、以下の図(宇宙)でこれらのキーワードを立体的に解説しています。

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詳しくは、書籍『バリューサイクル・マネジメント』をお読みになるか、または『組織変革Lab』をご受講ください。

景色を変えれば、組織は変わる、地域は変わる。

景色変えていきましょう!

▼書籍『バリューサイクル・マネジメント』

▼越境学習プログラム『組織変革Lab』

▼ファシリーダーの教科書『話が進む仕切り方』

▼音声&テキストマガジン『沢渡あまねマネジメントクラブ』