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どうもしてないんだけど

ビールとチョコレート
そんな組み合わせがあるのかと
そのことを知ったときは
わくわくしたものだ

大人になるとそういうことをしても
誰からも文句を言われないのかあ
中学生だったレナは
そんなことを考えては
こころを、おどらせたものだ

物語が動き出すまでは
読むのが苦痛になる
動き出しちゃったら、しめたもの
さあっと読み進められる
そこに苦痛なんてもの
入りこむ余地はない

だんだんと残りが少なくなっていく
ああ、読むのが惜しい
読みたいのは、もちろんなんだけど
読んでいけば、読んでいくほど
残りが減ってしまう

なんで、そんなに、はやく読んじゃうのさ
読むぶんが減っていっちゃうじゃあないのさ

レナがそんな思いになるのなんて
年に一回あるかないか、いや
数年に一回あるかないか、だろうか

月明かりが、レナに聞いてくる

どうかしたの?

レナがこたえる

どうもしてないよ

そうなの?

と、月明かり

どうもしてないんだけど

言葉にせず、レナは、思う

どうもしてないんだけど
なんだか、不安なんだよね

そのままを、レナは
言葉にしてみた

そう……

それきり、月明かりは
しゃべってこなくなった

いきなり、不安なんて言っちゃって
困らせてしまったかな
レナは、心配になった

けれど、もう、そのときには
月明かりの姿は、どこかへと
消えてしまっていた

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