ナツカ
ナツカは、ちょっと変わった子だ、まわりから言われるし、自分でも、なんとなく、そうなのかなあ、と感じてはいる
アイドル、と呼ばれている人たちは、うんちをしないのだと、うんちをしないからアイドルになれたのだと、ナツカは、真剣に、そう信じていた、スカウト、と呼ばれている人たちは、うんちをしない若者を、ひたすら、さがしているのだと、やはり、そう信じていた
そういったことではないのだと、アイドル、と呼ばれている人たちも、することは、しているんだ、そう知ったのは、もうすぐ高校に入学するあたりのときだった
うんこ、より、うんち、のほうが、やわらかい気がする、うんち、より、うんにょ、のほうが、もっと、やわらかい感じがする、ときとして、ナツカは、そんなことを考える
ナツカは、寝るとき、布団から足だけを出す、くるぶしあたりから出す、きちんと充電するため足を出す、足の裏で充電をする、布団から足を出しておかないと、ちゃんと充電されない、だから、布団から足を出す、寒い時期は、たいへんなんだけど、充電のためだからと、布団から足を出す、くつ下もはかず、布団から足を出す、足を出して寝ると、精神的にも、肉体的にも、いろいろ充電されるのだと、ナツカは、信じている
ナツカは、本を読むのが好き、物語が好き、物語の登場人物が、頭の中で勝手に動き出していくあの感覚が好き、それで、物語を好んで読んでいる
今度の本は、けっこう、手こずりそうかなあ、ナツカは、手にした本をながめ、思う
ナツカのその予想は、当たったのかもしれない、ああ、この本とは、感覚が合わないなあ、ナツカは、物語を読みながら、そんなことを感じた、そう感じてしまうと、なかなか、読み進んでいけない、お話が進んでくれない、相性悪いかあ、そう理解した本を読み続けるというのは、激しい苦痛をともなったりもする、ナツカは、思い切って、その本を読むのをやめにした、いつもはさせない音を立て、本を閉じる、その音と同じくらいの大きさの、ため息をついた
読みたい本が見つからないからと、ナツカは、自分で文章を書いてみることにした、書いてみるのだけど、頭に浮かぶことを、思うように文字にできない、それで、イライラして、パソコンの前から姿をくらましてしまう、戻って来たかと思うと、わきゃきゃきゃきゃきゃっ、とか、うきゃきゃきゃきゃきゃっ、とか奇声を発しながらキーボードを連打する、ナツカなりに、真面目にやっている、真面目にやればやるほど、けれど、奇声を発することになる