愛してま~す
抑揚をまとわせ
愛してま~す
と、言う人だった
その抑揚が、わたしには
やけに心地よくって
自分が言われたわけではなかったのに
愛してま~す
が、ずいぶんと、頭から離れずにいる
大学を卒業して数年後
その人は、縁もゆかりもない
遠くの土地へと行ってしまった
結局、わたしが聞けた
愛してま~す
は、あの一回きりだった
あとあと知った話なのだけれど
なんちゃらとかいうロック歌手の
まねっこらしかった
わたしは、そのロック歌手をよく知らず
けれど、知らなかったことを幸いと思った
あの人が言った
愛してま~す
は、あの人のオリジナルとして
わたしの中で、いまも生きている
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