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最上の贅沢 手の届かない場所

山で育った
いまはない山で育った

山がなくなったわけではない
育ったとこが
なくなった

山というか、山の奥だ
ずっと、ずっと
山の奥だ

ダムの下だ
ダムの水の下だ
たぶん
そうなんだ

家も
学校も
そのほか
いろいろと

学校の生徒は
わたし、ひとりだった
ひとりで学校に行って
ひとりで家に帰った

学校の帰り
木の実をとって
食べたりした

川で魚をとって
焼いて
食べたりもした

それが、わたしの
おやつだった

となりの家なんてない
近所なんてものもない
幼馴染も、近くの公園も
コンビニも、スーパーも
本屋さんも、おしゃれなカフェも

年に一回、車に乗せられ
遠いとこにある神社に行った
そのお祭りで
ラムネを飲むのが
最上の贅沢だった

その神社にも
もう、行くことは、できない

何もかも、みいんな
なくなってしまったから

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