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居酒屋 一度きり

その居酒屋には、人生のうちで、一度きりしか行くことができない、店主の方針らしい、だから、そのお店には、常連、と呼ばれる類の者たちは、ひとりとして存在しない、みな、そのお店に入るのは、初めてで、そして、その初めてが、最後となる

けれど、そのお店の店主というのが、あいにく、記憶というものを、少しも持ちあわせていなくって、前に来たことのあるお客でも、まったく覚えていないから、初めて来るお客として扱う、ここにいるお客も、あそこにいるお客も、お店の中にいるお客は、表向き、初めての来店であるにもかかわらず、ほとんどが常連さんなのだ

そうやって、今日も、何度目かの、最初で最後の来店、を、みな、心から楽しんでいるのだった

そういったことを、ウチのねこが、お話してくれた

ねこのお話が、真実かは分からない
かと言って、確かめることを
わたしは、しないんだろう

まあ、広い世の中
そういうお店が
ひとつくらいあっても
不思議ではないのかな

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