小さな望み
ひとりで暮らしている、けれど、部屋に帰ってきたら
ただいま
を言う
ひとり暮らしではあるのだけれど、ひとりではないから
マナモがカギを回し、扉を開ける、そこには、ちょこん、礼儀正しく座っている白ねこがいる
マナモは、その白ねこに
ただいま
を言っている
ドアを開け
ただいま
と言ったら、ちょうど、からあげをつくっているところで、わあー、と顔で言って、手を伸ばそうとする
ダメよ
とか
手、洗ったの?
と、マナモは、言われたい
白ねこが、それらしいことを言っているようなのだけど、あいにくと、マナモには、それを理解することができない、そもそも、白ねこは、からあげをつくってなんていないし
からあげだとか、とんかつだとか、八宝菜だとか、サバの味噌煮だとか、多くのことは望まない
ただいま
と言ったら
おかえり
と、マナモは、言われたい