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文章づくりはデザインの感覚で


歌は語るように。語りは歌うように。
ならば「文章はデザインするように」かもしれません。

最近noteを読み歩いて様々な文章に触れ、あらためて「文章づくりはデザインの感覚」に似ていると感じました。

私は、執筆を生業としているせいか「文章の書き方教えて」と言われることがありますが、私の方法が一概にいいとは限らず、文章にテクニックの"正解"はないと思っています。
世の中にデザインは無数にあって絶対的な正解がないように、文章にも個性があって、好みもあって千差万別。
なので、"私なりの文章づくりプロセス"としてまとめてみます。

文章は服装と同じ

どこに行くのか、誰に会うのか、その場にどんな気分で行きたいか、場や相手に失礼や違和感はないか、自分の印象・雰囲気をどう作りたいか。
服装は、そんな自分なりのTPOで選んでいます。

服装が全てではないものの、意識・無意識で自分の気分を反映し、相手にも伝わるものは少なからずあります。

服装はコミュニケーションの手段。
相手を不快にさせず、自分自身も心地よくさせてくれるもの。
時には、自分の立場や、まといたい空気を助けてくれるツール。
何より、自分らしさの表現の一つ。

おそらく、似たり被ったりすることはあっても、今日は隣人と上から下まで全身全く同じファッションだった、なんてことはないはず。
こんなに世の中には同じ服が売られているのに(笑)。
文字どおり十人十色、それぐらい服装は無数で自由!

同じように、文章も自分なりのTPO。
誰に向けて、どんな媒体か、目的や内容、読み手に応じて、どんなテイストをまとい、語彙をチョイスするのか。
その組み合わせは十人十色、無数
です。

公では、ドレスコードに匹敵するような、一定のマナーとかルールはあるものの、たとえそれを少し逸脱していても、「相手に届く生きた文章」はあると私は思っています。
むしろ、それこそが文章の本質だと思います。

テクニックより、自分の中の「何か」「本質」を軸に

あるカメラマンの大御所も言っていました。
写真の本髄は、テクニックではなく、自分の中の「何か」だと。

文章で言えば、正しい文法、整然とした構成、隙のない語彙など、テクニックだけマネすれば「いい文章」になるわけではありません。
「いい文章」とは、相手に届いて、何か感じて、響いてもらうこと。
(答えを与えるという意味ではなく)

むしろ粗削りでも、「何を伝えたいのか」「相手にどんなことを感じてもらいたいのか」という「本質」が肝心で、それが芯にあれば、文章は生き生きすると私は思っています。

テクニックに走ると、この本質を見失ったり、埋没してしまうことがあります。「形」にとわられ過ぎて、何が言いたいのかわからない文章に…。
どんなジャンルでも、たとえビジネスでも、まずは「伝えたい本質」を軸に据えることを大切に。

■本質を見失わないために
・最初からカッコいい形にしようと思わずに、「伝えたいと思っている」ことを、とにかく思うままにバーッと書いて大雑把な輪郭に。
削ったり調整は後回し。どちらかと言えば、後から削るほうが全体が研がれて洗練化されるので、削ること前提に。
・長さも文法も順番も重複も気にせず、細かいことは後回し。
・文章にならない場合は、キーワードだけでも。

「まずは思うままに吐き出す」ことによって、「もっとも強いメッセージ」が見える化されて、それがシンプルに伝えたい「本質」だと思います。
時々、バーッと書いてみたら、言いたいことは実はコレだった、ちょっと違った、という発見もあります。

デザイン的感覚で 色合い、リズム、アクセント

「伝えたい軸」が定まったら、デザインです。
ここでいう「デザイン」は、デザイナーのようなプロのセンスでもなく、デザイン自体が目的でもありません。あくまで手段。

主役=「伝えたいこと」を際立たせ、読みやすくするための、"服装"の役割として、"デザイン的な"感覚を使って調整していきます。

■スタイルと色合い (全体の構成と雰囲気)
・全体のトーンは、暖色系(温かみ)か、寒色系(クール)か。
・構成はグラデーション系(ふんわり流れる)か、バイカラー系(カチッと理論的)か。
・濃→淡にするか、淡→濃にするか。「伝えたいこと」をどう位置付けるか

最初に決めたスタイルに縛られる必要はなく、書きづらくなったり、伝わりにくいかも、と感じたら、後からスタイル変更はいくらでもアリです。

■メリハリとリズム (凸凹のバランス)
・同じ調子の文章で単調にしない。(同じ語尾、文末を続けない)
・長い文章の後には短文を入れ、長短、凸凹の変化をつける。
・メイン「伝えたいこと」は明瞭に短く。説明と分ける。
・強調や迫力を出したいときは、あえて同じ文末で畳みかける。3連続くらいが落ち着く。(→例「~した。~した。そして~した。」)
・一文は長くせず、体言止めをはさむなど、キレのリズムをつける。
・構成的なメリハリは、強調カテゴリーと補足や余談カテゴリーを分けて、押し引き、強弱をつけ、"集中"と"息抜き"の間合いを作る。

リズムは、呼吸や音楽的な感覚を使って、生理的に心地よいかどうか。
日本語は、俳句や短歌のように「リズム」が好きで、「五・七・五」は心地よいリズムの基本調子なのかも?

■アクセント  (ハズシの印象づけ)
・わざと唐突感を使う。話順の中で、あえて唐突に展開を飛ばし、急に話が飛んだ印象をつけ、後からつなげる。=音楽で言えば「転調」や、サビで急に曲調が変わるイメージ
・強調したいところは、韻を踏んだり、単語を羅列して畳みかける、倒置法にするなど、あえて文体に一瞬の違和感を出す。
・話し言葉や違う語調を独立させて、親近感、生々しさ、臨場感を強調。

アクセントは、教科書的なルールをハズした「遊び心」
いわば「リズムを崩す」感覚で、ハマると楽しく、読み手もノッてきます。
ただ、印象づけたい箇所、ここぞ、というポイントに絞らないと効果的にならず。多用すると、とっちらかった印象になるので、やり過ぎ注意。

■パッと見の"文字面"の印象 (判読のしやすさ)
・漢字/ひらがな/カタカナ/英文字の視覚的なバランスをとる。
パッと見で判読しやすいか、誤読しないような文字使用と配列になっているか。
・ひらがなが続くと判読しにくくなるので、続くときは語順を変える。
・内容(届けたい意味合い)と表記の印象は合致しているか。
表記によって印象は変わる。→例 頑張ろう / がんばろう / ガンバロー
・「、」や改行で、余白を作る。ただし、頻繁な改行や行アケは、内容のまとまりがなく散漫な印象になりやすい。

たまに仕事メールで「有難う御座います」が来ると、ものすごい違和感(苦笑)。(文章を書くのが苦手な人に限って、漢字だらけの傾向)
実際、読みにくく、スッと言葉が入ってきません。
漢字の多用は、かえって文章を書き慣れていないというマイナスな印象です。

読み手への想像 ウマく…は自己陶酔の危険

なんとなくデザインが整ったら最終点検です。

服装が自己演出だけでなく、相手や場において失礼や違和感がないかも大切であるように、その「文章デザイン」が内容に合っているか、読み手に違和感がないか、伝え方は自分の本意に添っているか。

文章に限らずですが、ウマく書いてやろう、ウマく歌ってやろう、とすると、過剰な自己陶酔に陥りがち。
独りよがりにならないために、読み手の立場や心境を想像しながら、客観視点で読み返して、表現を最適化していく作業は必要です。

ウマいかどうか、よりも、「自分が伝えたいこと」が、初めて読む人にも理解できるような書き方になっているか、の視点が重要。

■読み手の立場になる
・勢いよく書いたら、一晩寝かせて、翌日読んでみる。
・何度かデザインしたら、時間を置いて、まっさらな頭で確認。
・特に何度も迷走した箇所は、こねくりまわし過ぎている可能性があるので、初心に戻る感覚で。
・念入りにしたいときは、下書きテストとして第三者に読んでもらう。
・書籍のような長編原稿は、「紙」にプリントして読む。(紙で読むほうが内容が入りやすく、誤字などが発見しやすいため)

最終点検のポイントは「一度離れる」
私は、なぜか、シャワーを浴びているときに、突然、他の表現が閃いたり、修整箇所が浮かんだりします。

小心者の私は、最終点検をやり出すとキリがありません。
「生々しい勢い」も「熟成」も、どちらも文章を魅力的にさせるので、このバランスも正解はないと思います。

「今日の気分」だけでササッと選んだ服が大当たりのこともあれば、熟考してこだわったのに、なんだかチグハグになってしまうこともあるように。

私なりの「文章づくりプロセス」をまとめると、
「ウマく書こう」とかカッコつけずに、
最後は、「伝える」強い気持ち。それを助けるのがデザイン感覚。

ちゃんと最終点検したのかよ、というお声も覚悟しております!


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