『失想』

今夜はホテルへ行かなかった。

多分、もう誘われても行くことはない。

既婚者と知りながら、自分を不幸にしただけ。

真夜中の車も通らない道路の真ん中を歩く。

罪悪感、未練、切なさを抱えて、白線を踏む。

そんな私を月が照らす。しつこく同情される。

何時間も歩き続け、気づけば目の前が眩しい。

太陽が昇り私を照らす。しっかりしろと怒る。

涙で滲んだ街並みは、いつもよりも優しい。

まだ忘れられない。ゆっくりと消していこう。


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