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言葉とともに迷う日記 2024.12.30
朝の仕事: 本の執筆を再開する
アラームが鳴る前に目が覚める。Duolingo(英語版)でスペイン語、3分くらい。5時、起き出して、体重を測り、着替えて、ミルク溶け出すティーバッグを淹れる。クラッシック音楽を静かにかけて、多言語エッセイ『ふつうのマルチリンガル』の第7章のスケッチを始める。ここ6週間、執筆を休んでいたので、ゆっくり。執筆ログ用のノートを開き、「朝起きて、えらいね」と書き、ネコの絵を添える。この本は400枚(16万字)で依頼されたものの、学術書でない本を書き下ろすのは初めてなので無理かもと思い、300枚(12万字)を目標に、1ヶ月1章(6000字)のペースで書いている。2ヶ月書いたら1ヶ月休む。つぎの休みは3月、とまだ何も書いていないのに思っているうちに、7章のアウトラインが降ってきてマル。
おさんぽ: 空を流れていく雲に
7時になったので執筆を切り上げて、朝ごはん。昨夕、Xで流れてきて衝動的にスーパーに走り、仕込んだメニュー(サーモンのお刺身の胡麻油・醤油・ブラックペッパー漬け)を冷蔵庫から取り出し食べ、レトルトのコーンスープを飲む。『マイノリティリポート』、『東京芸術祭ファーム2024ラボ公開レクチャー』を落ち着きなくスイッチしながら流しつつ、軽くメイクし、今日の分の薬(抗うつ剤、漢方薬、ビタミン剤、睡眠薬、抗精神病薬)をセットしておく。8時少し前、おさんぽに出る。摂食障害はいま寛解していると思うけれど、「太ってはいけない」「運動しなくてはいけない」という強迫から完全には自由になれない。そのことについては悩まないようにし、ご近所の大きな池をぐるっと回る。青空に雲が流れていく。
研究室で: 図書館にない言葉を
8時45分ごろ、研究室に到着。購入した図書の事務処理をし、恩師からのクリスマス・レターに返事を書く。2月にミニ研究会(教授会の前に30分)で報告するので、「図書館に入らない言葉で聞く」という題目を思い浮かべ、手書きでアイディアをスケッチする。同僚は全員が日本語+英語+もう一言語以上を使う研究者なのだけど、「もう一言語」はたいてい図書館に入っているようなまあまあ主要な言語(中国語、アラビア語、タイ語、ペルシア語、サンスクリット語など)だ。それにたいして、わたしの「もう一言語」はセブアノ語/ビサヤ語で、ほぼ話し言葉としてしか使われない民俗語である。つまり、標準化された語学書や文献を通じて学ぶことは難しく、生きている人びとと交流して学ぶしかない言語である。
おさんぽ: 韓国海苔とコーヒー
ミニ研究会の準備は1日2時間で4日ほどかけるつもりだったのに、1時間でスライド10枚、ドラフトができてしまった。はりきりすぎないほうが、想像力も創造力も発揮されやすいというのは、経験上、わかっている。「えらいね」とネコを添えて書き、自分をほめる。何語であれしゃべるのが苦手なわたしは、読み上げ原稿を作るのが常なのだけれど、今回は作らないことにする。いわば身内の研究会だし、この数年間、抑うつ状態がひどく、研究者失格だと悩んできたことをそのまま正直に共有してみよう。11時、おさんぽ。スーパーで韓国海苔とバナナを買う。自宅にもどって無糖ヨーグルトにカカオニブ、玄米粉、はちみつ、白胡麻を混ぜて食べる。30日なのに営業しているカフェで、バナナブレッドとドリップコーヒー。
カフェで: ひとりでほっとする
カフェではバリスタさんとすこしおしゃべり。「マニラでの親族大集合(50人〜70人くらい)に加われない、人がいっぱいいるのに慣れていないから緊張する」と言うと、バリスタさんも彼女さんに「年末年始一緒にどう、親族25人くらいと誘われて、慣れてないから無理と断った」と言う。年末年始をひとりですごす寂しさと気楽さをシェアできて、こころがなごむ。フィリピン人のパートナーが亡くなったいま、もともと内気で臆病なわたしはどこに居場所を得たらいいかわからないし、ルーティーンや食事(体型維持)へのこだわりもあるので、これでいい。その点、子ども(20代前半、オランダ留学中)は赤ちゃんのときからフィリピンの親族になじんでいるので、山のようにいるイトコたちと楽しく過ごしているようで何より。
研究室で: お正月の読書タイム
しんと静まり返った職場で、そうか、いまは年末年始の休暇よねと思い、ルーティーンで机に向かうのはそのままとして、読む本をガチ仕事(リスト化されている)ではなくフリーにしてみる。『語学はやり直せる!』(黒田龍之助著、角川書店、2008年)を読み、ひざを打ちまくる。どの章もすさまじく面白いけれど、とくに「第6章 たとえば英語学習をやめてみる」がとても楽しくて好き。やめるといっても一時的なことで、英語以外の外国語を一定期間学んだあとに、英語学習を見直すという話で、まさにわたし自身がたどり続けている道のように思う。それから、『傷の声:絡まった糸をほどこうとした人の物語』(斎藤塔子著、医学書院、2024年)の続きを読む。著者はこの世にいない。その記憶を分有したい。
おうちで: カレーと百年の孤独
17時前、帰宅して、無水カレー(トマト、玉ねぎ、人参、茄子、しめじ、ささみ)を作る。材料を切って入れて蓋をしたら、フライパンが仕事をしてくれる。スパークリングワインとモッツアレラチーズ(はちみつ、ブラックペッパー、オリーブオイル)、ダークチョコレート・マカデミアナッツを2粒。ふわふわしながら、KUNILABOブックトークシリーズ 岩川ありさ『物語とトラウマ:クィア・フェミニズムの可能性』(青土社)を視聴する。お風呂に入り、短いお祈りをし、お洗濯し、小掃除し、カレー(ごはんなし)を食べながら、Netflixで『百年の孤独』を音声・スペイン語、字幕・英語で観る。どんどん観たいけれど、のめりこまないよう1日1話。リラックスするために、Sweet Magnoliasを流す。米語に癒される。20時半、夜の常薬を服用、21時半寝室へ。ネコになる夢を見られますように。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。