営業なんてやりたくなかった僕が、営業にハマった理由
「営業かぁ。早く異動できるといいね」
新卒で自分が営業配属になったことを親に伝えたとき、泣きのスタンプと一緒に送られてきたLINEのメッセージだ。
「楽しい瞬間?ん〜どうだろうなぁ」
入社してからずっと営業をしている50歳手前の先輩にすがる思いで営業の楽しさを聞いたとき、その先輩は頭を悩ませていた。結局答えは返ってこなかった。
『営業 つらい』『営業 やめたい』『営業 向いていない』
『営業』という言葉を検索キーワードに入れると出てくるのは、ほとんどがネガティブなものだ。
わかる。
新卒で営業に配属された僕も同じ気持ちだった。
それに親が思っているように大変なこともたくさんだ。
楽しい瞬間よりもきつい瞬間のほうが多い。
やめたいと何度も思った。
そして実際に逃げ出した。
でも、なぜかまた戻ってきた。
またやめたいと思った。
でも第二新卒のカードを使い切った僕はやるしかない。
やって、やって、やり続けて。
そしていま、営業を続けたいと思っている。
この記事では僕の営業に対する気持ちの変化と、営業でなにを学んだかを書いていきたい。
「営業向いてない」と思っているあなたに向けて書いている。
逃げ出した新卒営業
新卒で某大手メーカーに入社した僕は営業に配属された。
別に希望していたわけではない。
大学院で研究をして気づいたのは、研究に向いていないということだった。
それを入社前の人事面談で伝えたところ、”研究ではない”という部分を覚えていてくださり、”営業じゃなくてマーケティングのようなことをやりたい”という部分は忘れさられ、営業に配属された。
配属されたのは、数ある部署のなかでも一番体育会系な部署。
「商談は論理よりもハート」「給料は全部飲み会」のようなマッチョイズム漂う部署で、僕の社会人人生はスタートを切った。
こんなふうに書くと、とんでもない部署と思われるかもしれないが、僕は結構好きだった。
なにが好きだったかといえば、人間関係だ。
体育会系な部署ということもあり面倒見の多い先輩が多く、出社をするとたくさんの人が話しかけてくれた。
元来話し好きの僕だったが、ブラックな研究室に配属されたことで会話がほとんどない大学院生活を過ごしていた。
それが人を大切にする部署に配属されたことで、毎日に彩りが与えられた。
だが、それはあくまで社内での話。営業は社外との仕事のほうが多い。
圧倒的に立場が上になる”お客様”との商談はうまくいかないことがほとんどで、ときには怒鳴られることもあった。
そんな状況が続くと、隣の芝がどんどん青く見えてきて。
僕は1年と数ヶ月でベンチャー企業に転職をした。
そこでは営業ではない仕事を未経験としてはじめることになる。
が、この会社もわずか1年で転職することになった。
理由は人間関係だ。
1社目で救われた人間関係について、2社目では逆に悩みの種に。
そんなストレスを見てみぬフリをしていたら、ある日出社ができなくなった。
「適応障害」と診断され、数ヶ月の休職の末、最後は退職を決断した。
(この辺の話はまたどこかで書けたら良いなぁと思います)
泣く泣く戻った営業
ここまでのキャリアを振り返ると、
となっており、採用側から見れば「こんな人採用して大丈夫か……?」となっている。
そんななか数社応募したなかで、1社目と同じ業界の某メーカーで営業採用されることになった。
正直いえば、もう営業は嫌だった。
同じ業界ということで営業の中身もある程度わかっているし、嫌な部分も見えている。ましてや営業の楽しさがわからずに1社目を退職しているのだ。
でもキャリアがぼろぼろの状態の自分に残された道は、そこでもう一度働くことしかなかった。
やるしかない……。
半ば諦めのような覚悟で、僕は営業マンとして再び働くことにした。
数字を追い続ける毎日
今思えば1社目は本当に優しかった。
毎月の数字がいかなくても、「まあしょうがないよね」で許された。
でもこの会社はそういうわけにはいかなかった。
とにかく毎日数字と向き合わされる。(これが本来の営業かもしれないが)数字が追いついていない人は、「どうして数字がいかないのか」とメールや対面で上司に詰められるのだ。
僕は詰められないで済んだか?
そんなわけない。地獄の日々だった。
1社目で営業職だったとはいえ、働いた期間は1年とわずか。
そんな僕が突然結果を出せるわけもなく、出社をするたびに何かしらの指摘を受けていた。
なかでも口を酸っぱくして言われたのが、「数字から逃げるな」「ロジカルに考えろ」だ。
「営業は論理よりもハート」しかしらない僕だ。
そんな僕が配属されたのはロジカル大好き部署だったので、とにかく数字、とにかくロジカルと何度も何度も指摘を受けた。
最初は本当に嫌だった。
今すぐ辞めたいと毎日思っていた。
それでも「ここで辞めたらキャリアが本当に終わる」と自分に言い聞かせて、なんとか働き続けた。
そうして1年が経った。
今の自分は「営業が楽しい」と思えるようになっている。
あんなに嫌々だったのに、不思議なものだ。
営業の面白いと思える3つの要素
「営業が面白い!」と思えたのは、もちろん結果が出てきたのも大きい。
そりゃそうだろう。
ゲームだってクリアできるから楽しいのだ。ずっと即死だったら、それはクソゲーになってしまう。
それを踏まえて、営業の面白いと思える要素を3つ紹介する。
1. スマブラであるところ
数字を追い続けて分かったことは、営業の数字はさまざまな要素が絡み合って出来ているということ。
どういうことか。
そもそも営業の数字、つまり売上は、『売上=単価×受注数』だ。
ここまではシンプル。
だがこの受注数に関して、実にいろいろな変数が含まれている。
受注数=(コミュニケーション能力)×(ロジカルシンキング)×(行動量)×(相手との関係値)×(商品力の高さ)×(相手の機嫌)……
のような感じだ。
つまり1社目で学んだハートも武器だし、現職で叩き込まれたロジカルも武器で、人によってタイプが異なる。
スマブラでいえば、マリオのようなバランス型もいれば、ドンキーのようなパワー型もいて、ソニックのようなスピード型もいる、といった感じだろうか。
それぞれの武器を活かしながら、ときには”訪問回数を増やす”という泥臭さも使いながら、数字を作っていくのが営業の面白さだと感じた。
2. 理不尽を学べる
理不尽とはなにか。
実は先述の受注数の変数に加えているのだが、相手の機嫌というものだ。
どれだけこちらの言っていることが正しかったとしても、商品力が高かったとしても、相手の機嫌1つで商談が決まらないことがある。
「そんなアホな」と思うかもしれない。
僕も最初は思っていた。
でもそういう経験が増えるにつれて、「ビジネスとはそういう理不尽なものなのかもしれない」と少しずつ思えてきた。
だって努力が全て報われるなら、もっと人々は豊かなはずだから。
相手の機嫌以外にも、時代の流れとか、政治とか、天災とか、そういう自分じゃどうしようもないものも結果に影響をするのがビジネスじゃないか。
今までもそういうことを伝えている本を読んできた気がするけど、自分自身で経験してやっと腑に落ちた気がする。
そして逆に相手が上機嫌だと、どれだけこちらがクソな提案をしても採用されることもあるのだ。
このギャンブル性もまた営業の面白さだと最近思う。
3. 成果が目にみえる
最後はシンプル。
数字に悩まされた僕だが、営業は成果が数字に出るのが面白い要素だとやっぱり思う。
相手の機嫌とか理不尽なものもあると言ったが、理不尽を込みにしても、がむしゃらにやればあるタイミングで結果が出る。
そう、数字が出るのだ。
ダイエットでも、投資でも言えるかもしれないが、分かりやすく結果が出るとやっぱり嬉しい。
その分かりやすさが営業の良さだし、面白さじゃないだろうか。
営業なんて嫌いだったはずなのに。営業に向いているかもわからない。
でも、面白い。
この面白さをもう少し深くまで理解したいと、今は思う。