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花相の読書紀行No.9『光秀の定理』

乱世に生きた若者たち

【光秀の定理(レンマ)】/垣根涼介
戦国の時代“主殺し”として悪名高き明智光秀と彼が唯一無二の友とした二人の男の物語。

正直なところ、明智光秀と言えば『三日天下』という言葉が真っ先に浮かび、人物として余り良いイメージは持っていなかったのですが、この本はそのイメージを根底から変えてしまいました。
ここに描かれている光秀は、人間味のある一人の若者でした。
知性と教養を身に着け兵法にも通じていた彼は、実は小心者の一面を持ち、人との争い事を嫌い、己の不甲斐なさに落ち込み、時には涙することさえ有る。そんな彼は実に努力家で、家臣思いの武将として描かれています。
若き頃の光秀と共に生きた“愚息”と“新九郎”という二人の人物設定も良かったです。
まるで戦国時代の青春グラフティー、一時代が軽快に駆け抜けてゆく…これはもうほぼ一気読み状態です。

何せうぞ くすんで 
一期は夢よ ただ狂へ

悪名をもって評価されてしまった光秀の生涯は、如何なるものであったのか?

もしも今、彼に問いかけることが出来たら“今この世界は、貴方の眼にはどんな風に見えますか?”と聴いてみたい。

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