【本】K-POPの本がとても面白かったのでまとめます。韓国歌謡からBTSまで。
最近のK-POPの勢いはすごいですね!私もBTSばかり聞いているのですが、どうしてこんなにK-POPってすごいの?という疑問は常に頭の中にありまして。
そしてそれを解決すべく読んだのがこちら。
K-POPの歴史が知れてとても面白かったのでまとめます。
1960~1980年代 韓国歌謡曲時代
韓国の音楽産業は欧米と日本の影響を受けて形成された。
・欧米の影響の下にある歌謡
・日本の影響を受けた「倭色歌謡」
という特徴があった。
韓国人歌手として初めて紅白歌合戦に出演を果たしたチョーヨンピル。
1987~97年代 Kっぽいものの誕生
韓国社会では民主化、開放化、国際化という大きな転換期。人々も「新しい音楽」を求めるようになり、模倣する音楽から、創出する音楽へ。
1981年~ 観る音楽へ。
1981年に開設したアメリカのケーブルテレビMTVはミュージックビデオを終日放送。MTV時代の象徴がマイケルジャクソンの「スリラー」。
この「観る音楽」が、1980年に正式なカラーテレビ放送が開始された韓国で大きな影響をもたらし、韓国歌謡から観る音楽への移行が始まる。
1987年 K-POPアイドルの原型 ビデオ型歌手の誕生
そうした流れのなかでデビューしたのが韓国初のアイドルボーイズバンドグループ、ソバンチャ
ダンスパフォーマンス、流行りのリズム、サウンド、それまでになかった音楽だった。ただし、これは日本型アイドルの模倣だった。(少年隊みたい!)当時の韓国では日本のポピュラー音楽の流入が禁止されていたため、新しいダンス音楽として人々を魅了した。
「観る音楽」としてのアメリカ型アイドルは歌唱力、パフォーマンスに高い水準が要求されていたが、日本型のアイドルは「かっこいい」「かわいい」などのビジュアルが重視されていたので、ソバンチャもそんな感じ。
しかし1990年代から日本のポピュラー音楽をより簡単に享受できる環境が整ったため、SMAPやSPEEDなどのファンが急増し日本型アイドルを模倣するアイドルの需要がなくなった。そこで、韓国ポップの関心が欧米へ移る。
1986年デビュー 韓国のマドンナ キムワンソン
アメリカ型アイドルとして企画され、デビューした女性アイドルキムワンソンが登場。
彼女は歌とダンスの数年間の徹底したトレーニングを受けてデビューをはたした。これは当時としては前例のないことだった。日本型アイドルの「かわいさ」ではなく「かっこいいお姉さん」として新たなアイドル像を生み出した。
たしかにキレのあるダンスがかっこいい!
1990年代~ 韓国ラップの登場
アメリカでは本格的なブラックミュージックの時代に。MCハマーなどラップ、ヒップホップが爆発的な人気を誇る。
韓国はアメリカ型アイドルへ方向転換をする。そこで登場したのが韓国語ラップである。
1992年、ソテジワアイドゥルがデビュー。彼らが初めて韓国の音楽に韓国語ラップを導入した。
マネジメントシステムの誕生
BOAや東方神起、SuperJuniorなどが所属するSM企画(現SMエンターテイメント)が1989年に音楽マネジメント事業を開始。
アメリカと日本の異なるマネジメント方法を下記のように選択的に受け入れた。
アメリカ:「観る音楽」時代の徹底したメディア戦略。10代の女性ファンをターゲットにした「ボーイズバンド」という概念を確立、市場を開拓。
日本:ジャニーズのマネジメント。音楽的な面ではなく、歌手とタレント、映画とテレビを横断するような活動方式などの運営。
つまりこんな感じ↓
韓国アイドルの練習生時代・・・ジャニーズっぽいシステム
けど、その音楽的内容・・・アメリカっぽい音楽
1996年 SMエンターテイメントからH.O.Tデビュー
1996年、ソテジワアイドゥルが引退し、世代交代のごとくSMエンターテインメントからH.O.T(High Five of Teenagers)がデビュー。この時代はアジア通貨危機などの経済的不況により韓国の音楽界は危機的状況であったが、H.O.Tはファンダムの獲得により韓国国内だけではなく、海外市場へも進出を果たした。
ファンダムというのは、能動的、生産的なファンのネットワーク=「集団としてのファン」であり、今のK-POPには欠かせない要素である。(BTSのA.R.M.Y、EXOのEXO-Lなど)
H.O.Tは、インターネットを用いた積極的な情報共有や、ファンクラブの会員システム、献身的なファン活動などというK-POPファンダムを築いた先駆者。
また、H.O.Tには現在のK-POPアイドルの典型的な要素がいくつも見て取れる。
・歌、ラップ、ダンス、スター性を含む総合トレーニング
・ブラックミュージックの影響を受けたサウンドと韓国語ラップ
・派手な手段パフォーマンス
・海外出身メンバーの存在
・献身的なファンダム
また、H.O.Tがデビューした1996年は、ソテジワアイドゥルの元メンバーのヤンヒョンソクがYGエンターテインメントを、90年代人気ミュージシャンだったパクジニョンがJYPエンターテインメントを立ち上げ、SM、YG、JYPという三大エンターテインメント体制が誕生した年だった。こうしてK-POPの市場が拡大していく。
2000年 BOA
この辺からは知ってる人も多いのでは?
SMエンターテインメントの下で3年間の歌、ダンス、日本語、英語などの総合的トレーニングを受けてデビューを果たしたBOA。
日本進出のため「ローカル化方式」をとり、日本版の歌詞で歌った。これによりK-POPとJ-POPをフラットに聞くという感覚が日本人にもたらされた。
BOAは2009年、韓国人初、ビルボードアルバムチャートへのランクインを果たす。
2004年 東方神起
K-POPに「世界的」という形容詞を与えたグループ。
(私が一番好きな東方神起の曲です。)
日本で韓国人アーティスト初のドームツアーをしたり、とにかく観客動員力がすごかった。
ただ残念なことに、人気絶頂の2009年、メンバーが事務所相手に訴訟を起こす。アイドルの人権や、奴隷契約という韓国音楽業界の抱える問題が露呈した。
2003年~アップルによる音楽のデジタル化 itunes storeの誕生
スティーブジョブズがitunes storeを発表し音楽のデジタル化が加速されると、韓国はこの波にもっともはやく反応しデジタル市場に順応した。それは韓国政府が「IT強国」をかかげ情報化を進めていたからだった。
韓国音楽業界は、CDにこだわらずデジタルマーケット中心活動へ転換した。
YouTubeとK-POP
2005年、YouTubeがサービスを開始。
K-POPの完璧にそろったダンスパフォーマンス、多彩なジャンルのファッション、韓国語ラップ、歌、完成度の高いミュージックビデオは、YouTubeを通して一気に拡散された。
後のPsyの「江南スタイル」(YouTube再生回数の上限値を超えた。)のように、常に流行のサウンドを追い求め、韓国語のラップや歌と融合させた音楽が、新しいメディアで広く共有された。YouTubeとK-POPはお互いを拡張しあっていく。
また、K-POPは、アイドルデビューまでのその「過程」の発信も始めた。アイドルの選抜過程、練習過程、服装が決まる過程を配信することで、全てを商品化することに成功した。
G-DRAGON
G-DRAGONは2006年デビューのBIGBANGのリーダー。彼の歌、ダンス、ラップはもちろん、それ以外に、ファッション、ヘアスタイル、アクセサリー、態度、表情、すべてが注目を浴び、消費された。
音楽(中身)とスタイル(外形)を共に重視する世界、そこにK-POPの未来があった。彼の存在によって「憧れ」という感情がK-POPに対して向けられるようになった。
2006年 BIGBANG
YGエンターテインメントからデビューしたBIGBANGは、グローバルなトップスターを目指して育てられた。メンバー選抜からデビューまでを全て配信して人々の関心を集めた。
2007年 少女時代 ガールズグループの可能性
SMエンターテインメントから2007年にデビュー。
それまでの、かわいがられる存在から憧れられる存在へ脱却を果たしたことが大きい。
また、海外のミュージシャンとの協業という現在のK-POPの基盤を作った。
ノルウェーの作曲家が共同作曲した「I Got A Boy」
国際的スーパースター、BTS!
2013年、BigHitエンターテインメントからデビューしたBTS。
実はBigHitはそれまでK-POP界での成功が無かった。そのため当初、BTSには「中小アイドル」というニックネームがつけられていた。しかしそれが他のアイドルと差異化させる重要な要素となった。
BTSは、芸能事務所と緊密な関係性にあるマスメディアへの営業ではなく、ソーシャルメディア中心の活動、ファンに直接話しかけみせていく方法をとった。そうした活動の中では、大手事務所に所属していないという不利な条件ですら、彼らの成長過程を示す要素になった。その物語やメッセージなど、BTS独自のコンテンツがYouTubeやインターネット放送などのメディアを通じて世界に発信され、人々の共感をよんだ。
そして2020年、アメリカビルボードチャートでBTSの「Dynamite」が見事一位を獲得するのだった!
感想
こう見てみると、韓国の音楽業界は時代の流れに合わせて、どんどんそれに適応し、海外の良いものはどんどん取り入れ、さらには独自のKっぽさも創出しながら柔軟に形を進化させてきたんだなぁということが分かりました。BOAや東方神起、BIGBANGそれぞれのグループがそれぞれの役割を果たしてK-POPを進化させて、そしてそれが今日の世界的な成功にちゃんと結実してるということが本当にすごいと思いました。BTSが大手ではない事務所所属ということも初めて知り、ますます応援したくなってしまいました。
事務所との雇用契約やマネジメントの課題はあると思いますが、今後K-POPがどんなふうに進化していくのかとても楽しみです!