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そこで愛が待つゆえに(後編)

今年の7月、
僕はどうしても京都に居る知人の自宅まで行かなければならない事情を回避できない状況にあった。

コロナ禍前までは年1以上で必ず訪れていた京都。
大好きな場所だし馴染みの街でもあるのだが…

以前にも書きましたが、
僕には持病があり、
2021年に病状が悪化。
2年ほど悪化状態が続き、
去年の夏頃からやっと徐々に回復し、
今年はある程度は正常時に戻ったが、持病が治ったワケではなく、
心疾患と橋本病の持病を抱えたままの生活を続けている。 


関東在住の僕は、
コロナ禍と持病の悪化から、
まる5年は遠出を控えていた。


無理をすると発作が出て再び悪化したり、最悪は死に至る可能性もある。
だから無理はできない。
しかし、
この7月の京都は絶対に行かなければならないもので…
しかも最低でも2泊でハードスケジュール。
余裕を持って3泊4日…
京都の夏は暑い!
移動も含めると心身への負担は大きく、
発作は避けられないと思われる。

しかも、
持病を発症してからの遠出は常に同行者が居たのだが、今回はひとり。


いろいろ厳しいなぁ…




意を決するも何も、
絶対に行かなければならないのだから、
覚悟を決めて予定通りに行くと決めていた。


そのことを、
ついついこの文学少女に話したのだ。


彼女はそれほど深い事情も聞かず、

「ふーん、大変そう。
京都まで行って駅で待っててあげようか?」

と言って小さく可愛らしく笑った。





冗談?




いや、
冗談には聞こえなかった。


遠出をしない彼女にとって、
一人で京都までの移動はかなりの覚悟がないとできないだろうし、
先ず、
彼女を知る人なら皆、口を揃えて言うだろう。






「あり得ない」






しかし、
あり得たのだ。
彼女は本当に京都まで来てくれた。






『これはもはや奇跡である。』






僕がかなり追い込まれていること、
本当に一人ではしんどいこと、
それでもかなりの覚悟で動くことを決意したこと、
そして何より、
僕の心身が、かなり弱っていること…
そういう様々な事情を理解し、それに見合った覚悟と行動で僕と向き合おうと思ったのだろう。
その覚悟が何を意味するのか?
僕は解っていた。。。


その上でその覚悟を受け止めることを決意したし、
実は
「こんなに素晴らしいことがあって良いものか…?」
などと、戸惑う程に歓びに満ちて居た。





やはり世界は美しい…







約束の日、
東京駅を経ったばかりの新幹線に居る僕のスマホに、
「もうすぐ大阪だよ…」
と、
LINEが来た。


本当に京都に向かってる!!!







そして、
京都駅の改札を出ると彼女はそこに居た。



バッサリ切ったばかりの黒髪ショートボブの小柄な女性が、眉を寄せて改札を出入りする人混みを睨みつけている。


とっても可愛らしく、
ただならぬオーラを放ち、
苦手な人混みの片隅で懸命に改札ね人混みを睨みつける彼女は、
神々しい程に美しく輝いていた。



純真無垢な荒野の獣の様に、実に美しい…





改札を抜け、
彼女を見付けたところで僕は立ち止まり、
彼女を見てニヤリと微笑みかけた。

それを見た彼女は、
ニコニコしながら小走りで目の前まで来て言った、


「おいでやすー」


いつも通りだ。
敢えての脱力感を纏ったユーモアセンス、
いつも通りの彼女に僕の心は一瞬で緊張から放たれた。



溶けてしまいそうだ…



本当はギュッとして首すじから彼女の二酸化炭素を吸い込み、
僕の肺から細胞へと彼女のDNAを刻み込みたかったのだが、
人混みでは流石に…ね、
そりゃそうよ。笑




さて、
先ずホテルに移動。

京都に慣れている僕と、
修学旅行以来の京都で苦手な人混みに戸惑う彼女、
おぼつかない足取り、
2人とも多めの荷物を持ったままの移動。
彼女の左手を握りタクシー乗り場へと向かった。




7月の暑い日、
そうして僕と彼女は京都で手を繋いだのだ。


(後書きへ続く)



















今回の記事は次で完結です。
読んで下さりありがとうございます。
&
完結編も宜しくお願い致します。














そこで愛が待つゆえに、
僕も彼女も京都に向かい、
手と手が繋がってひとつになれたのだ。




























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