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こどもの世界とおとなの世界

先日、娘が初めて夫のオフィスを訪れる機会があった。

少し前から夫の仕事(というか、日中どこに行っているのか)に興味を示すようになり、「おしごとのところはどこなの?」「いってみたい、中にはいってみたい」という事をずっと言っていた娘。

IKEAに行くついでに夫に仕事で必要なもののお遣いを頼まれたので、娘を誘ってオフィスに届けに行くことにした。

娘に「行く?」と聞くと、「いくー!!!」と即答。「たのしみ〜」と遠足にでもいくような様子で、幼稚園で作ったバレンタインの制作物も持っていくとルンルンしている。

が、駐車場からオフィスのある階へ行くエレベーターの中から彼女の顔はガチガチに固まり、明らかに緊張の面持ち。オフィスに入って顔見知りのスタッフがよく来たね〜、お菓子あげる〜、とワラワラ集まってくれた時も、私や夫の足に隠れて一言も喋ろうとはしない。

これは、完全に場所見知りだ。いつもの娘の爆弾テンションを知っているスタッフに「娘ちゃん今日はどうしたの〜全然喋らないじゃん〜」と言われれば言われるほど顔は固まり、口は固く結ばれたまま。こりゃもうアカンな。

帰りの車の中、ほっとしたのか弾丸で喋りだす娘。

「あのさあのさ、おしごとのところにはプロフェ(先生)はいないの?」
「そうだね、会社にはいないんだよ。」
「そっか〜、コレヒオ(幼稚園)にはプロフェいるけど、おしごとのとこにはいないのか!!◯◯ちゃんのコレヒオとはちがうんだね〜!」「じゃあさ、おしごとのところでは、じぶんのやりたいことができるんだね!」

なるほど。どうやら娘は、父親の会社の内部でも、自分の幼稚園と似たようなことが繰り広げられていると思っていた模様。

娘が思う「おしごとのところ」は大人版幼稚園であり、時間ごとに活動が区切られ、先生によってそれらが取り仕切られている場所、だったのだろう。けれどいざ行ってみると、なんだか全く様子が違う。みんなで同じ活動をしている、という雰囲気でもない。先生らしき、みなの前に立ってリーダーシップをとる人もいない。かなりのカルチャーショックだったのだろう。

娘の幼稚園では、様々な活動のことを「Trabajar=働く」と言い、「Jugar=遊ぶ」とは明確に区別をつけて子どもたちに意識づけている。もちろん大人が会社で働くことも「Trabajar」と言うので、その点でも娘の中に、自分と父親のやっていることは同じ、というような認識があったのかもしれない。

自分が生きているこどもの世界と、親が生きているおとなの世界。ちょっと違うんだとわかり、彼女の世界が少し開けた瞬間を目の当たりにして、心が震えた。

それにしても、「おしごとのところでは、じぶんのやりたいことができる」発言にもちょっと驚いた。幼稚園では自分のやりたいことは出来ないと思っていたのか…!

楽しい!友だちに早く会いたい!などと言って毎日喜び勇んで通っているので、そんな風に思っているとは知らなかった。

やりたい事が出来るわけじゃないけど、そこでの生活は楽しい。そんな気持ちが娘に芽生え、彼女の社会が広がっていることもまた嬉しい。

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