「わたしの樹々を切りなさい」(詩)
木こりよ
私の内の山肌が
光に飢えて 細やかに震える
だから
腕のいい木こり
私の内に繁る樹々を
切っておくれ
お前は
大きな斧を振りかぶり
固い手は握りしめ
静かに脈を打つように
長く生きた私の樹々を
安らかに横たえてくれる
木こり
お前の朝は早く
日が熟れる頃に手を止めて
必要な動きで一日をおさめる
夜は星を仰ぎ休んでくれ
山はその肩を抱くだろう
柔らかに草は足を撫でて
木こり
ああそして 仕事の終りには
私に山を返しておくれ
仕事が終われば感謝を懐へ詰めて
慎ましい足取りで降りて行くんだ
それまではお前が山を愛してくれ
やがて山肌は白く淡く
光を湛えて歌いだすだろう
季節を受け取るときのように
ささやかに音が跳ねまわり
若い色が衣を揺らして鮮やかに
私の内に鎮座する山は
木こり
ひとりの木こり
いつかまた呼ぶ日は来るよ
その分厚い瞼を憩わせて
丈夫な体を大切にしておくれ
そうして豊かを過ぎた山の招き手を待っていて
私の内側にそよぐ風の先
そのいつかは息をしている