12・29~1・4(日記 最後と最初に嵌めこまれた映画たち)
年末年始、
私はひたすら映画を観て、
マンガを読んで過ごしました。
たまに詩を書いて、
noteに詩を打ち込んで、
家族の顔をみたりもしましたが、
たいていの時間自分の部屋でひとり過ごしました。
予定していた映画は6本全て見られました。
ちょっとその感想を。
12月29日
【シンドラーのリスト】
はじまりから、あ、この映画はあまり説明がないやつだ、と気づく。
白黒なことにびっくり。
そして主人公であるシンドラーを中心としながらも、
できるかぎり丁寧にあったことを“写し取ろう”とした映像に思えました。
最初の目的から、少しずつずれていき、
シンドラーは2000人近くのユダヤの人たちの命を救うことになる、
という映画ですが、
彼の心の揺れがとても繊細に描かれていて、
ただただ胸の前に手を組んで見ていました。
もともとの物怖じしない性格に、
人間としての魅力と、
それを倍々にしていける見せ方を考えつくした結果の雰囲気、
ぎりぎりのところでなんとか渡り切ったその綱の先、
綱の上に居た時、
シンドラーの目線はけして人種、宗教で変わりはしなかったところが一番うつくしい彼の姿だったと感じました。
救えなかった命を、
誰もが抱えながら生きたのでしょう。
少し長い映画ですが、
見ている間時間を感じさせないつくりになっていました。
そしてラストに白黒だった意味を知りました。
途中までまったく涙が出ず、
私って冷たい人間だなと思っていましたが、
半分を過ぎてからは静かに涙が落ち続けていきました。
赤い服の女の子が、ベッドの下に潜り込んだときの表情が刺したのだと思います。
12月30日
【スワロウテイル】
本当は『シェイプオブウォーター』を見る予定でしたが、
配信になく、、、
配信っていつでもやってるわけじゃないんだと勉強になりました。
借りてくるとか、レンタルも考えましたが、
いや、無料配信だけで賄いたい!
という変な意地が貫かれ、
代わりに観る映画を探したところ、
今回唯一の邦画になりました。
岩井俊二監督の作品は、このあたりの初期のものはあまり見ていなくて、
見ていないけれど名前は有名な一作、
いつかは見ようと思っている映画だったこれにしました。
私、たしか小説は読んだはずなのですが、
内容を気持ちいいくらい全く覚えていないのでした。
最初に驚いたのが、言葉です。
英語に、中国語?
日本語は殆ど出てこず、
世界観もどこか終末のよう。
娼婦の娘のアゲハと、娼婦だけど歌のうまいグリコ、
彼女の恋人の便利屋?何でも屋?の男が、
ひょんなことから手にした偽札の製造方法。
そこで資金をつくり、
スラムから街へと移り住み、
そこで開いたライブハウス?で歌っていたグリコがスカウトされ、
みんなが幸せになれると思っていたのですが、
というお話。
名前がいいなと思いました。
この映画のなかの現実が、私の現実にどこまで沿っているものなのか、
判断するのに私は名前が一番いいと思うのです。
グリコの居たアパートや、
便利屋をやっていた掘っ立て小屋でつくった集落のような場所、
アゲハが蝶を彫ってもらう医者の診療所。
薄汚れているのに、夢で出来ているような場所。
見ている間、ふわふわと不思議な気持ちになる映画でした。
そして大きな役割の音楽。
映画はしらなくてもこの歌は知っている。
最後の現実への石畳はこれが敷いてくれたように思いました。
12月31日
【ベニスに死す】
これが私一番楽しみにしていた映画だったのですが、
、、、
合わなかったです。
もう時間の流れがしっかり二時間ありました。
たぶん壮年の男性の切実な恋に燃える表情とか、
芸術というものに身を窶していく自身の自己に飲み込まれていく男
の哀れさとか、
見方によっては文学性が高いと言えるのかもしれないけれど、
どうしても「いや、怖いよ」と思ってしまって、
内心もう少年のほうが意味深に見つめてきたり、
微笑んでみたり、振り返ったりっていうことのどれもが、
もしかしたら主人公の妄想なんじゃ、、、と考えてしまう。
そしてより「怖いよ!少年逃げて!」って思ってしまって、
変な方向にどきどきしました。
映像は美しかったし、
少年も本当に音楽のように美しかったけれど、
ああ、こんなにも造形が整っていることで人生が狂ってしまうこともあるんだな、とかなしくなりました。
ちょっと『風と木の詩』のジルベール思い出しました。
ドキュメンタリ―の方は見られていないけれど、
きっと見ようと思います。
1月1日
【ファイト・クラブ】
いきなり年代が若くなりました。
冴えないとまでは言わないけれど、
規律やふつうから外れることができない主人公は、
不眠症に悩まされていています。
その解消法として編み出したのが、
色んな重病のひとたちの集まりに参加し、
涙を思い切り流すことで眠れるようになっていきます。
しかし、参加している会で度々会うようになった女のために彼の不眠症は再発します。
どうやら自分と同じように、彼女もまたその病気にかかっていないのに参加しているのです。
再びの不眠症で精神をぎりぎりと削る主人公は、出張の飛行機での隣の席に座った男との出会いで、日々を一変させることになります。
不運が重なった主人公は、
飛行機で会っただけの彼といっしょに暮らすようになり、
呑みにいった帰りに殴り合ったことから、
痛みによって生きる実感を得る快感にはまっていきます。
それを見ていた他の男達も参加し始め、その団体が大きくなっていくに従い、ふたりで作ったはずの『ファイト・クラブ』はその形を変容させていくのでした。
殴り合い。殴り合い。その合間に不穏な種がまかれていき、面白いのですが、ほぼ最初に種に気付いてしまって、
あ、このオチじゃなきゃいいな、、、と思っていたのですがきれいに思っていた終わりで、ちょっとどんでん返しを味わえなかったことが残念です。
でもオチが分かっていても楽しい映画でした。
ラストの“ふたり”の銃でのやり取りと、窓の外の様子が最高でした。
1月2日
【燃ゆる女の肖像】
最高でした。うつくしかった。
若い女性の画家である主人公は、
ある女性の肖像画を依頼されます。
彼女は亡くなった姉のかわりに繰り上がりで嫁にいくことになったのですが、そのことに心が追いついておらず、画家には顔を描かせないという抵抗を続けていました。
そこで母親がとったのが彼女と年の変わらない主人公に、
画家であることを隠して散歩役として顔を合わせ、描かせることにしたのですが、二人の間には、徐々に芽生えたものがあって、、、
というお話。
ドレスの布の重たさ、
砂の粒の荒さ、波の打ち寄せる浜の荒涼さ、風の強さ、
踏みしめる床の石を叩く靴音、
キャンバスを擦る筆の音、
絵の具のついた手を拭う音、
暖炉のなかで爆ぜる火の音、
美術品のような映像がつらなり、
そして悠然と語るつよい瞳が重なり合って続いていく現実が本当に胸に密度の高い感情を落としていきます。
主人公の画家、描かれるお嬢様、そして館で手伝いをしている少女の三人の関わり方が、とても素敵で、この三人のお話をもっとみたかったくらい。
そして私はこのお手伝いさんの少女が一番好きでした。
音楽の使い方も独特で、
とても印象に残る使われ方でした。
これから何度も見たいと思う一作でした。
1月4日
【パルプ・フィクション】
初タランティーノ監督。
果たして合うか、合わないのか、とどきどきしながら見ましたが、
なかなか面白く見られました。
まさに犯罪映画。
群像劇といってもいいのかな?
ファミレスの男女、マフィアの組員の二人組、彼らの友人の薬を売っている夫婦、マフィアの魅力的な妻、マフィアのボスにおいたをしてしまった若者たち、全盛を過ぎたボクサーと、その恋人、ボクサーの大切にしてある金の時計、そして神さまの存在と奇跡の顕現。
あ、ここに辿りつくのか!
というラスト。
ファイトクラブのおかげで痛そう描写には耐性ができていて、
気持ちが落ちたりはせず。
これは意味があるのか?と考えながらみるべきなのか、
ぼんやりと見ていていいのか、
観終わってみても正直よく分からない気がします。
以上、
私の年末年始に見た映画でした。