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月の引力が君を見せるなら 僕は奪われないようにこうして気を引く
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証拠品が足りないわけじゃない、と君は裁くけど。不安そうな顔。
殺人未遂で立たされてる僕の現状だけが君の証人。

独りでいくら擦っても
冷房の茂る真夜中には叶わない
から
でも、帰って欲しくない
から
でも............

430kmから聞こえる寝息を電波が届けてくれる
それだけは、感謝しなくてはならない
神とか仏とかに

髪が結いたとき、あぁすっかり
男とか女とか関係なくなっちまって良かったなと
つぎは人生を逸脱してみたい
猫か蛞蝓か犬か蛭にでもなって
それであの子の頭に噛み付いて
撫でてもらうンだぜ

なぁ、あんたとさ、首吊って死にたかったな
寝顔を見た時、添えた手を握れなかったのは、汚い手が目に映ったから、君の首には似合わない
それから、沈むままの船で時計にキスをして。船長は己の船で死を迎える。
なんの義務があって?
そうだね、だから思い出せるって良い事だ
本当に

どうか君の可愛い手のひらに
私よりも良い人が乗りませんように
その時は私もひとつ、落とすから
あなたの腕ごと攫わせて

きっちり畳まれている貸した服
残り物の化粧水
棚の上に置かれたドライヤー
食べ残したお菓子
食べなかったバームクーヘン
広くなったベットには
一人分だけの残暑が付いている

意喜地

発車ベルが込み上げた
昨夜の泪はきっと綺麗だった
耳をちぎって目を差し出したかった
震えている それが僕の間では純だと思っている
君の口から「殺して」と溢したろ
僕は今すぐにでもキスをして、刺してしまいたかった!
唇からの言葉も目も指先も、鈍色に着せてみたい
本当に、本当に、本当に、愛しかった。

ミジンコも宇宙もぜんぶにあの鯨の肌を思い出す
海の向こうの遠い国でも 銀河の先の星でも
脳の裏でずっと泳いでくれよ

さざめかない ろ過した音だけ 打ちひがる
痕跡だけを 指に遺す

きみ、きみ
はるうらら
へへ、うかれてる
あしたはのんだくれてやろう
あーおれはしぬのかな!
きっとしあさって車に轢かれてしぬのかな!
それじゃあ仕方ねぇや
だったらきすしてくれや
お前の手で先に殺してくれや
きみ、きみ
はるうらら
へへ、うかれてる
うかれちまってんだ

君に人魚の肉を食わせて僕は先に死ぬ

物言う花が咲いている
モモノハナ
羽衣盗んだら灰にして呑んでやる
揺蕩う首筋 三日月印
その茎 折ったら終いだ
お嬢サマ、拝借させて頂きます

沁 雪降る泥の飢え
沁 陽降る花の思た

脳 舌 小指
煎じて飲むだけじゃア……
熟れたらなンとか心配不要
賞味は万事 口付けも微笑む

溺愛

溺愛

みな等しくタンパク質の塊なのに
世間はくさい社会の匂いがするのに
あの子は甘く優しい香りがして

みな等しく皮がくっついて
世間は安い剥がれたもの纏わって
あの子はふわふわ柔らかい

みな等しく脳みそ詰まって
世間は量産された蟻の線路を歩くのに
あの子は広く海を漂う

目が合ってから息が出来なくて
酸素も届かず頭も回ってない
思考に水が入って沈んでく
でも自ら飛び込んだ海だから
後悔は微塵もない