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皇室とイギリス留学記|読書感想「赤と青のガウン」彬子女王

穏やかで、すこし茶目っ気があり、親しみやすいエッセイ。

そこに登場するのは
イギリス、オックスフォード大学の留学生活と
体を壊すほどに向き合った論文執筆の日々。

ある時は、課題の送信を忘れて出発してしまい、慌てて1度帰宅する。
またある時は、異国の地で見つけた日本食材に嬉しくなったけれど、高価で驚いてしまい、結局買えず。

そんなエピソードに
皇族としての生活や、女王陛下とのアフタヌーンティーが挟まる。

ああ、同じ学生なのだ。という親しみと、とんでもなく特別なのだという、当たり前の再確認が波のように繰り返す。
そんな一冊を、Audibleで聴いた。

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「赤と青のガウン オックスフォード留学記」
 著者:彬子女王

  • 出版社 ‏ : ‎ PHP研究所 (2015/1/17)

  • 発売日 ‏ : ‎ 2015/1/17

  • 単行本 ‏ : ‎ 374ページ

ドアを閉めた瞬間に涙がこぼれた。思えば、あれが留学生活最初で最後の「帰りたい」と思った瞬間だった。

本書は2004年から5年間、英国のオックスフォード大学に留学し、女性皇族として初めて海外で博士号を取得して帰国された彬子女王殿下の留学記。女王殿下は2012年に薨去された「ヒゲの殿下」寬仁親王の第一女子、大正天皇曾孫。

初めて側衛(そくえい)なしで街を歩いたときの感想、大学のオリエンテーリングで飛び交う英語がまったく聴き取れず部屋に逃げ帰った話、指導教授になってくれたコレッジ学長先生の猛烈なしごきに耐える毎日、そして親しくなった学友たちとの心温まる交流や、調査旅行で列車を乗り間違えた話などなど、「涙と笑い」の学究生活を正直につづられた珠玉の25編。

Amazon作品紹介より

✒海外留学、イギリス生活、オックスフォード大学、皇室、エッセイ、体験記、英語学習、博士号、日本美術、父との思い出、友人関係、大学生活、女性皇族

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皇族は、パスポートを持っていない。
日本国民ではないから、外交旅券を使う。

自国のことだけれど、いままで知らなかった。
普段は遠い皇室の生活が、次々と語られていく。

「赤と青のガウン」は、著者である彬子女王殿下が様々な苦難を乗り越え、オックスフォード大学で博士号を習得した証のガウンに袖を通すまでの日々を描いたエッセイだ。

作中で、留学する条件として「留学記を出すこと」をお父様(寬仁親王)と約束していたことが語られているけれど、その理由として挙げられた「国民への説明責任」について、少なくとも私にとっては、大きな役割を果たしてもらったと感じた。

(寬仁親王も留学記を執筆されていて「親しい方はお名前で書いたほうがいい」など細かなアドバイスをもらったお話、好きでした)

品格がありながら、親しみやすい言葉で語られる皇族としての生活は、不思議と親近感が湧き、それでいて、普段は覗くことが出来ない世界を優しく解説してくれる。

そして、驚いたけれど
この本はシンプルに

「エッセイとして、とても面白い」のだ。

読みやすく、柔らかく、明るくて。
其々のエピソードが強い。
各章に読み応えがあり、固くないのに勉強になる。

留学をすると躓きそうなポイントも沢山登場するので、海外留学を目指す方にも、ぜひ読んで欲しい一冊だ。

せっかくなので、好きなエピソードをいくつかご紹介したい。

*  *  *

・日本国内では常に側衛がついていて、彼らとは、時に愚痴まできいてもらうような家族のような間柄。

・武術には長けているけれど、英語が全く話せない側衛のために、メニューを上から全部読み上げてから、先頭に載っているサラダを注文されて「なんですと?!」と思う。

・あんなに頑張った1年間の留学は、たったの4単位にしかならないと、帰ってから知る。

・イギリスの公共交通機関が本当にあてにならない。

・厳しいことで有名な先生がレポートに残した悪筆のメモを必死で解読すると「I don't think so.」だった。

・皇族の使う旅券は、空港によって様々な対応をされる。

・先生のお手伝いのため、完成しているはずの展示会場に到着すると、そこはまだ空っぽで、開場までに必死で作り上げた。さらに、それが直近でもう一度繰り返された。

・この留学記のため、お父様はご自分が送った手紙のコピーを含め、留学中のやり取りを全て保管されていた。

*  *  *

いかがでしょうか。
エピソードだけで、なんだか面白そう!と感じていただけるのでは。

今、まさに論文を執筆中。という方は、一緒にお腹が痛くなってしまうかもしれないけれど、困難な日々も沢山の明るいエピソードにあふれている。真摯に努力を重ね、ついに博士号にたどり着いた姿が強く印象に残った。

最後になるけれど。実はこの本、話題になったことに加え、単行本は絶版になってしまっているため、Amazonでは価格が1万円を超えている。

※この単行本ではなく、冒頭の文庫版、もしくはKindle版、またはAudible版をおすすめします。

ここにきて文庫版が発売されたことを本当に嬉しく思うと共に、電子書籍やAudibleでも楽しめることに「この時代でよかった」と改めて感じるのだった。

▼こちらはKindle版

▼こちらはAudible版(現在、聴き放題は2ヶ月99円キャンペーン中)

▼Audibleについて

※Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

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